どこ行く?
旅仲間が増えたのだが、そうなると色々と決めないといけないな。
「井上さん、とりあえず一緒に旅するんだからお互いに相手をなんて呼ぶのか決めとこうか」
いつまでも他人行儀な感じでは良くないだろう
「そうだね。じゃあ私は孝介って呼ぶね。」
「じゃあ俺は・・・」
「あかり、ね!」
「・・・わ、わかった。」
まあいいか、楽だし。
で、次が
「で、あかりは今後どこに向かいたいとかあるか?」
「ん~、とくにないかなぁ。でもこの国には居づらいから早めに国を出たいかな」
「それはそうだな。ここから向かうならもうひとつの人国のテリック女王国か、獣人国になるな。」
魔国はテリック女王と獣人国を挟んでその先にあるため、今行く必要はないだろう。
「でもテリック女王国はこの国と敵対関係にあるから、獣人国がいいと思う。獣人国は何に関しても中立的な立場だからね。」
そうなのか。なら獣人国になるかな。っ!そうか、獣人だ!獣人といえば・・・
「ど、どうしたの?急に嬉しそうな顔して」
「どうしたもなにも!獣人だぞ!ケモミミだぞ!ロマンじゃないか!」
そうだよ!日本のこの年頃の男子ほぼすべてが憧れるといっても過言ではない。
「そ、そうだね・・・。ハハ」
「そうと決まれば早く行こう!」
あぁ、いままでこれだけ興奮したことがあっただろうか・・・。
「で、獣人国はどっちだ?現在地さえわかれば地図は頭の中に入ってるけど。」
「そ、そうなんだ。えっと獣人国はね、えっと、えーっと・・・。」
「どうかしたのか?」
「そ、その悪気があったわけじゃないの。あのー、そのー・・・。」
「はっきり言え。」
「あの熊の魔物から逃げるときにスキル使ったんだけど、必死だったからさ。ここがどこかわかんないんだよね~。ハハ・・・。」
あかりの《天与》は《超速》だ。普通のスキルにも《高速》というものがあるが、これはだいたい馬ぐらい、早くても車ぐらいだ。だが、あかりの《超速》は音速単位での速度が出せる。つまり、
「ここが熊に襲われた場所からどれぐらい離れてるかも全くわからないな。こうなると方角がわかってもどうにもならないか。」
「ごめんなさい。」
「じゃあ責任とってあかりはここに残るってことで」
「っ!お、お願いします。なんでもするから許してぇぇ」
「ふふっ、冗談だよ。俺もあかりにいてもらわないと困るからね。」
「う、うぅぅ・・・。」(シクシク)
「・・・。」
(シクシク)
「わ、わかった。すまない。謝るから泣くの止めてくれ。」
「ゆるじでぐれる?」
「ゆ、許すから。そもそも怒ってないから。」
こんなに女の子にたじたじした、いやそもそも対人でたじたじしたこと事態初めてだ。なんでだろ。
「よかったよぉぉ」
よし、とりあえず泣き止んでくれた。
そんなことをしていたらいつの間にか昼になっていた。
さて、どうやって獣人国に行こうか。
前言ったとおり頭の中に地図は入っている。人国の分だけだが、他の国の方向だけは書いてあった。ただし現在地がわからないのだ。頭の中の地図に現在地が示されていればいいのだが。そんな感じの地図を想像してみる。スキルのおかげではっきり思い浮かぶ。
そのとき、一瞬のダルさとともに手元に何が出てきた。
「なんなのそれ?」
「なんだろ」
見てみるとそれは・・・。
地図だった。