ワールドイーター
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「これは何事だ!」
「も、申し訳ありません!侵入者によって人質である次期魔王を逃がされてしまいました!」
「それと、今侵入者は世界端の石をもって逃走しています!」
「くっ、ゆ、勇者を使え!侵入者を捕らえさせろ!」
「そ、それが、勇者が突然いなくなったのです!監視兵もいなくなっていて気づくのに時間がかかってしまいました。」
「くそっ!お前らは何をやっておる。」
「「す、すいません!」」
くそ!あと少しでうまくいくというのに!
どうする!兵に追いかけさせても捕まらないだろう。でもなんとしてでも世界端の石を奪い返さなくては・・・。っ!こ、これなら、
「ふふっ、はははは!見ておれ侵入者とやらよ。お前にもう勝ち目はない!」
不適な笑いをしたまま、バードック王は部屋から出ていった。
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(ミナ!リリ!先生!今城を出た。兵に追われてはいるがすぐに撒く!ヘルの指示にしたがって合流してくれ!)
(ん!わかった。)
(了解なのじゃ。)
(横井くん、気を付けてくださいね!)
(あぁ、大丈夫だ!)
今俺とあかりは《超速》を使って城から猛スピードで逃げている。できるだけ早く兵を撒いてみんなと合流したい。
「あかり、大丈夫か?」
「なめないでよね。これでも勇者なんだから。」
「そうだったな。」
心配は無用のようだな。
いくら城の兵でも《超速》の速度にはかなわない。少しすれば兵の姿は見えなくなっていた。
「もう少ししたところでみんなを待とう。合流してから全員に《超速》をかけて一旦魔王城まで戻る。」
「うん、わかった!」
それから2分ほど走ったところで止まる。ここまで来ればそう簡単には見つからないだろう。
「ねぇ、そういやなんで《転送》を使わないの?」
「あ~、それなんだがな。転送を使うと世界端の石を持っていけないんだ。空間の歪みがどうたらこうたら、みたいな感じでな。」
「わ、私にはわかんないけど、とにかく転送させられないわけだよね。」
「そうなんだよ。」
しばらくすると遠くに3つの人影が見えた。
「旦那様ぁ!寂しかったのじゃぁ!」
「リリ!大丈夫か?」
「大丈夫なの・・・。」
「孝介様ぁ!寂しかったよぉ。」
「わ、妾が旦那様と話していたというのにぃ!」
おぃおぃ、落ち着けよ・・・。
「うぅぅ、私も横井くんに甘えたいですよぉ・・・。」
「せ、先生?なんか言ったか?」
「い、いえ!な、何でもありませんよ!元気100倍です!」
(ふふふっ、田畑さんはご主人様にあま・・・。)
「うわぁ~!それ以上はゆっちゃだめです~!」
なんか様子が変だが。とりあえずなでなでしておく。
「ひゃぅ。よ、横井くん!わ、私は先生ですよ!はぅぅ。」
「え?あ、そういやそうだったな。ちっちゃくて可愛いからつい、な。」
「か、可愛い、って・・・。」
この癖はよくないな。直すべきか。
「先生だけずるい。孝介様、私もやって!」
「はいはい、ミナもありがとな、」
撫でるついでにイヌミミも触ってやる。
「はふぅぅ。」
「わ、妾もやってほし・・・。」
「言わなくても分かってるよ。」
「むふぅぅ~。」
あ~、癒されるわぁ。疲れも吹き飛ん・・・。
「あかり。そんな悲しそうな顔するなって、ほら。」
あまりにもあかりが暗い顔をしていたので、頬に軽くだがキスをしてやった。
「っ!こ、孝介ぇ~。」
あかりは顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
「あかりだけずるいのじゃぁ!妾も!」
「みんなにやってたら時間かかるだろ。だから後でな。」
「私も、キスしてほしい。約束、ね?」
「忘れるでないぞ!約束じゃからな。」
「あぁ、ちゃんと約束だ。」
ん?また先生がもじもじしてる。こないだもあったな。
「なんだ、先生も約束するか?」
「ひぃ!わ、私は、その・・・。」
「なんだ、言いたいことがあるならちゃんと・・・。」
ドゴォォォン‼
突然、王都の方から爆音が響いてきた。全員がその方向を向くと、王都に積乱雲のような土煙が漂っている。そして、その中から・・・。
「な、なんなのあれ・・・。」
「あんなもの、見たことないのじゃ、」
そこには、同じく山のような大きさに、黒い体、そのなかでひどく目立つ赤い二つの目に、頭に生えた巨大な二本の角。あれは・・・。
「あれって、まさか・・・。」
(あれは、世界間を行き来してすべてを食い尽くすとされている、ワールドイーター、通称ベヒモスです!)
物語の大きな山場を迎えます!
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