サーナ様救出
ブゥゥゥン。
今俺たちは車に乗って移動している。向かっているのは、もちろんバードッグ王国だ。スキルで異空間を移動しているので見つかることもない。
今回の作戦はこうだ。
まず異空間移動を続けてサーナ様をみつける。そして、魔王城まで《転送》で送る。次に行うのが、勇者の奴隷化解除と異空間固定だ。先に世界端の石を取り返しにいかないのは、ばれる可能性が高いので先に向こうの戦力を削りたいからだ。
「この世界に異空間を扱えるのは勇者のみじゃろう。MPのきれる心配もないから、ばれることはないじゃろう。」
「そうだな。もしばれたとしても、逃げることはできる。慎重に且つ素早く行動しよう。」
「わかった。頑張る。」
「孝介となら、何でもできるから。」
「そ、そうですね!横井くんならなんでもやってのけると思います。」
ありがとな。みんな。
それから一日、車でバードッグ王国王城裏まで走り続けた。ある程度は転送で移動できるので、そこまで時間はかからなかった。
「マップによれば、サーナ様は王城地下牢にいるみたいだ。牢番もいるだろうし、注意していくぞ。」
「「「「はい!」」」」
「ここからは基本念話をつかう。ヘルは回りの人の動きを教えてくれ。」
(わかりました。)
俺がマップを使うと、集中が途切れるからな。
扉や壁もあるが、危ないところは転送を使おうと思う。
さっそく壁を転送で通り抜ける。この距離なら見えていなくても大丈夫だ。
中に入ると、そこは廊下になっていた。
(回りに人の反応はありません。ここを右に進んでください。)
(わかった。)
この調子でヘルのいうとおり進んでいく。
しばらくして、床に鉄格子のついた場所についた。その先には下りの階段がある。
(ここが地下牢の入り口です。この先に牢番が二人いるみたいです。)
(孝介、どうする?)
(異空間に固定しよう。)
(よし、私の番ですね。)
(あぁ、一人は頼む。もう一人は俺がやるよ。タイミングを合わせてな。)
転送で地下牢階段に入る。しばらく降りていくと階段の終わりが見え、牢番も見えてきた。
(寝てる。牢番なのに)
(完全にサボってるのじゃ。)
(まぁその方が都合がいい。俺は奥のやつをやるから、先生は手前のやつを頼む。)
(はい!)
それぞれ牢番の前にたつ。この距離でもばれないな。
(いくぞ、せーのっ!)
((異空間固定!))
その瞬間、二人の牢番は消えた。
魔法以外では初めてだったが大丈夫だったみたいだな。
(じゃあ先に進むぞ。)
元牢番のいた場所をあとにして、サーナ様のところへ向かう。多くの牢が並んでいるが、特に誰も入っていない。
(地下牢があるのは形だけです。バードッグ王は、気に入らないものはすぐに殺します。)
そういうことか。
(その5つ先の左の牢です。)
言われた場所に近寄ると、そこには20歳ぐらいだろうか、女性がうなだれて座っていた。服もほとんど布切れのようなものしか着ておらず、ほとんど意味をなしていない。
すぐにMP回復ポーションを取り出す。その場しのぎではあるが、魔王城でしっかり休んでご飯を食べれば大丈夫だろう。サーナ様を異空間に送り、俺たちが見えるようにする。ついでにヘルを繋げて、念話も通るようにしておく。
(サーナ、妾じゃ。リリじゃよ。)
「えぇ?私、とうとう幻覚まで・・・。」
(そんなわけないじゃろう。本物じゃ。それより念話で話すのじゃ。しゃべらなくても伝わるのじゃ。)
(こ、こうですか?そ、それより本当にリリ様なのですね。う、うぅぅ。)
(泣くでない。)
(サーナ様。まずはこのポーションを飲んでくれ。)
(あ、あなたたちは?)
(リリとともに助けに来たものだ。今からあなたを魔王城に送る。その前にまずはこのポーションで応急処置を受けてくれ。)
転送でサーナ様を牢から出して、ポーションを飲んでもらう。
(・・・はぁ。これ、すごい。一気に体力が回復する!)
(それも一時的なものだ。サーナ様の状態が良くない。魔王城でしっかり休養をしてくれ。)
(わかったわ。)
(じゃあ送るぞ。・・・じゃあこれに入ってくれ。魔王城に繋がってる。)
(ありがとう。あなたたちは?)
(俺たちはまだすることがあるからな。)
(うん。じゃあ、ほんとにありがとうね。)
そして、無事転送で魔王城に送ることができた。