世界央の石
「勇者が奴隷化?どういうこと?」
「バードッグ王国が勇者召喚をしたことは知っておるじゃろう?実はあかりだけじゃなく旦那様とこちらの先生も同じく勇者として転移してきたのじゃ。」
「まぁ俺は勇者ではなく異世界人になってるのだがな」
「そうなんだ。」
「この奴隷化の情報は先生が伝えてくれての。今は一緒に行動しておるのじゃ。それで、奴隷化された勇者についてじゃが、奴隷の腕輪とやらで強制的に奴隷化されておるらしいのじゃ。それに、ポーションによる異常強化をされたらしく、理性を失っておるじゃろう。他に何か情報が入っておらんかの?」
「ごめんなさい。いまのところそういった情報は入ってこないかな。何だか少し前から国境警備とかを厳しくされてたんだけど、そういうことだったんだね。」
徹底的に隠しておくつもりなのか。
「世界端の石についての情報とかは入ってない?」
「あぁ、そうだったな、あかり。世界端の石ってゆうのをバードッグ王国が持っているらしいんだが、何か知らないか。」
「世界端の石・・・。情報ってわけではないんだけど、世界端の石についての論文があるわ。ちょっと待ってて。」
しばらくして、紙の束を持ってきた。
「これのことかな。」
えーと・・・。
色々と分かった。まず世界端の石は世界の端であり、世界央の石と一緒に存在する。直径は10㎝ほど。世界端の石を世界央の石から離すと、綻びが大きくなってしまい、世界端の石側から世界を構成するエネルギーが漏れだしてしまう。
ということらしい。つまり、
「バードッグ王国はこの世界を構成するエネルギーってやつを利用する方法を得たことで、勇者召喚を行えたわけか。」
「孝介様、もしそういうことならいつかエネルギーが枯渇する。」
「そのエネルギーが枯渇したとき、」
(世界は崩壊します。)
やっぱりそうなのか。
「世界の崩壊・・・。」
「先生、そう暗くなるな。つまり、俺たちがその世界端の石と世界央の石をくっつければいいわけだ。」
「ん、孝介様にできないことはない。」
「私も同感。孝介にできないことはないもん。」
「そうじゃのぉ。バードッグ王国への侵入、世界端の石を持ち出して世界央の石とくっつける。なかなか難しいじゃろうが、旦那様なら造作もないことじゃろう。」
「そ、そうですね。今の横井くんならやりかねませんね。」
・・・まぁやるつもりではいるけどさ。
「そうね。リリからそんなに信頼されてるんだもの。大丈夫だと思うわ。」
「あ、あぁ。やれるだけやるよ。それで、世界央の石ってのはどこにあるんだ?」
「正確には分からないんだけど、元々は魔国最北端にある祠に世界端の石があったとされているから、同じくそこに世界央の石もあるんじゃないかな。」
祠か。それに魔国最北端。遠いな。
「とりあえず転送で魔王城まで戻るのじゃ。その祠へ行っておくべきじゃからの。そうすれば世界端の石を手に入れてすぐ向かうことができるからの。」
「そうだな。じゃあ次の目的地は魔国最北端の祠か。」
「急がないとね。世界が崩壊なんてされたら大変だもん。」
「賛成。私も早く戻したい。」
(今の状態で漏れだすエネルギー量はそこまで多くはありませんが、早くするに越したことはないですね。)
そうだな。決断したら即行動。全然観光とかもできなかったが、まぁ仕方ないだろ。
「そ、そうですね!私もついていきます!」
「でも、先生。危ないけど大丈夫か?」
「わ、私は皆さんの担任教師ですから。手伝わなくてはいけない義務があります!」
(それに、横井くんと離れたくないですし、ですか?)
「ち、違います!違うはずです・・・。」
「せ、先生?一人で何言ってるんだ?」
まぁいいか。とにかく魔王城まで戻ることにしよう。
「じゃあ俺らは戻るんで、短い時間でしたけど、ありがとうございました。」
「うん。終わったらまた来てね!力になるよ。」
「あぁ、ありがとう。」
「リリもまた遊びに来てね!」
「分かったのじゃ。」
「じゃ、いくぞ。《転送》!」
すると俺の前に黒い穴があいた。
「え!リリだけじゃなくて君も使えるんだね。」
「旦那様は特別なのじゃ。」
そして、転送の穴に入っていく。
「では、また!」
「うん!また今度ね!」