王都追放
「《想像》?それはどんなものだね」
「はい、想像が映像のように頭の中に表示されるだけです。」
「・・・。」
そう、それだけなのだ。
「ふっ、なんだよそれ(笑)」
「なんの使い道もねーじゃん」
残念だが、俺もそう思う。
「と、とりあえずステータスを確認しよう」
専用の魔法をかけてもらったあと、〔ステータス〕と念じる、他人にも見えるように開示するが、
「・・・。」
全員の顔がこわばった。そう、俺のステータスは
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横井孝介 17歳 Lv1
異世界人 ーーー
HP 20/20
MP 30/30
シールド 10
レジスト 10
スピード 10
耐性 5
スキル 《想像》
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この世界の人間と同じだった。いや、スキルが使い物にならない分それより弱いだろう。
そのとき、急に国王が怒鳴った。
「無礼者が!きさまは勇者ではないな!そんな分際で王城に入りこみやがって!王都からつまみ出せ!」
はぁ、異世界でものけ者にされるわけですか。たぶんこれは厄介払いだろう。使い物にならないから追い出すつもりだ。
それを見ているみんなは、なぜかボーっとしている。ありゃ黒魔法とかだな。あの先生までもが反応しないのはおかしい。
というわけでおとなしく連れ出されるかと思っていたら、
「待って、なんで横井君を追放するの!そんなことするなら私も行く!」
「ダメだ。君は勇者だからね。残ってくれ。」
「嫌よ!」
井上あかりだ。気持ちは嬉しいのだが、
「井上さん、やめておけ。俺についてきてもいいことはないし、君は勇者なんだろ」
「なにいってるのよ。そんなことしたら孝介君が危険じゃない」
これ以上言っても聞かないだろうな。しかたない。
俺は連れ出そうとしている兵士を振り払って
「ついて来るなよ!」
と言って自ら城から出て行った。
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そのまま王都のそとまで出ていったが、正直どうするかの検討はついておらず近くの道沿いを歩いていた。王都を出た時にはもう夕方になっており、もうすぐ夜になってしまう。だいたい夜というのは強い魔物が現れるわけで、この世界も例外ではない。王都の出入り口の門番がそんなことを言っていた。
「さて、どうするか。」
一応人国の地図は頭の中に入っている。俺は記憶力だけは良かったため、城にあった地図を瞬時に覚えておいたのだ。それに《想像》のおかげではっきりと思い出せる。
「とりあえずとなり町まで行ってみるか。」
と軽く言ってみたものの、実はとなり町までは徒歩で5時間はかかる。余裕で夜に突入するのだ。
かといって寝るような安全なところもないためそのまま道沿いに歩いている。この先にとなり町があるはずだ。
それから4時間、なぜか一匹も魔物に出くわすことはなかった。運が良かったのかな。そのまま進んでいると、突然
「ギャァオォォゥゥ!」
と、鳴き声が聞こえた。その瞬間俺は本能的に死を感じた。右前方の山からとてつもないスピードで真っ黒い大きな熊のような魔物がこっちに向かって来ていたのだ。俺はそのまま動けず、迫る魔物の恐怖からとうとう意識を飛ばしてしまった。
最後に感じたのは、なにかにつかまれたような感触だった。