次の行き先
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー場所は飛んで、ここは魔国の魔王城。一人の少女が叫んでいた。
「フリック!フリックはどこじゃ!」
「はい。魔王様。どうかされたのですか?」
「魔王と呼ぶでない。妾は女じゃ!」
「で、ですが・・・。しきたりですので。」
彼女は魔王だ。つまり転移者だ。見た目はただの少女だが、魔王なのだ。
「しきたりしきたりと、もっと楽しくアバウトにでけんのか。」
「そ、それは・・・。そ、それよりなんのご用でしょうか。」
「そんな堅苦しくせんでもよいと言うのに・・・。で、話じゃったな。実は昨晩、偵察魔法に反応があった。」
「それは本当ですか?」
彼女の《天与》は《転送》。物や人を他の場所に飛ばすことができるのだが、その本質に気づいており、空間に干渉できる。偵察魔法は空間を繋げることで離れた場所を見たり聞いたりできるというものだ。
「あぁ、ほんとうじゃ。実は獣人国に魔獣のドラゴンを相手に勝った男がいるのじゃが、そいつの使う魔法に少し普通と違うものを感じてのぉ。もしかすると妾と同じ転移者かもしれん。」
「ではその者を連れてくればよいのですね?」
「いや、まだはっきりしたものではないからの。もう少し確認するからいつでも行けるよう準備しておいてくれないかの?」
「はっ!」
「だからそんなに堅苦しくするなと言っておるのに・・・。(ボソボソ)」
フリックが出ていったあと、
「もうすぐ妾の夫となる者と会えるかもしれんの。ふふっ。」
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「はぁっくしょん!」
「孝介大丈夫?風邪?」
「大丈夫?孝介様」
「あぁ大丈夫だ。」
(誰かが噂しているのかもですね。)
そんなことはないだろ。
俺たちはミナの実家を後にし、冒険者ギルドに向かっていた。
「孝介様、なんで冒険者ギルドなの?」
「あぁ、それなんだがまだビックベアとドラゴンの素材を換金してないだろ?腐らないように時間は止めてるんだがマジックバックの肥やしにはしたくないからな。」
「そういうことね。」
(ご主人様はほとんどお金はいらないですけどね。)
そうなんだが、まぁあるに越したことはないだろう。そうこうしているうちに冒険者ギルドについた。
「いらっしゃいませ、ってミナじゃない!どこ行ってたのよ、心配したのよ!」
そこには二十歳ぐらいの猫の獣人がいた。
「あはは、ごめんごめん。」
「ほんと良かった。で、そのひとは?」
「私の旦那様!」
「どうも、横井孝介です。」
「そうかぁ。旦那様かぁ・・・。だ、旦那様ぁ!どういうこと!?」
「そのままの意味だよ。ちなみに私は井上あかり。私が孝介の一番目の妻で、ミナは二番目の妻だよ。」
「えっ、なんなのそれ!てか、そのハーレム男何者なのよ!」
「は、ハーレム男・・・。間違ってはないから言い返せない。」
「孝介様は私の王子様なの。ドラゴンに襲われてあと少しで死んでしまうってときに颯爽と現れて悲劇のヒロインを助ける。まさしく運命の王子様!」
「そ、そうね・・・。横井さん、あなたも大変ね。」
「いえいえ、ミナは優しくていい子だし、それに可愛くて。毎日イヌミミとシッポを触って癒してもらってます。ほんと可愛くて可愛くて・・・。」
「妻が妻なら夫も夫、ですか。」
「もぅ、孝介。」
「井上さんのほうはまともな人なのかな。良かった。(ボソっ)」
「ミナばっかりずるいよぉ!私も可愛いよね!ね!」
「そんなの当たり前じゃないか。あかりもとっても可愛いよ。」
「・・・。まぁそうなるよね。」
(ご主人様。早く本題に移らないと、彼女が引いてますよ?)
あ、あぁ。俺としたことが舞い上がってしまったな。いや、いつもか・・・。
「で、では、今日来た理由なんですけど、」
「は、はい!」
「素材の買い取りをお願いしたいのですが」
「わかりました。ではこっちに来てください。」
ここでは受付の人が買い取りもしてくれるんだな。
「では出してください。」
「わかりました。」
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「・・・な、なんですかこれはぁぁ‼」
「なにってビックベアとドラゴンの素材ですけど。」
「ビックベアはSランクの魔物、ドラゴンにいたっては魔獣ですよ!?うちにこんなの買い取れる金があるわけないじゃないですか!」
そ、そうなのか。
「でも売らないともったいないしなぁ。」
「なら中心都市に行くといいですよ。獣人国の地図ならありますし、この事については私が手紙を書いておくのでギルドマスターに渡してくれれば伝わると思います。」
「そうですか。ありがとうございます!」
(地図も手に入りますね!)
(あぁそうだな。)
「ではこちらの手紙を渡してくださいね。あと、地図です。」
「ありがとうございます。ではこの辺で。」
「はい。ミナも井上さんも、お幸せにね!」
「「ありがとう!」」
俺たちは冒険者ギルドを後にした。
「さて、次は、」
「中心都市だよね!」
「あぁ、そうだな。」
「中心都市。獣人の頭がいるところ。」
(獣人国は王はおらず《頭》と呼ばれる先頭に立つものがいます。しかし、王のように権力を持っていて、家系で決まるわけではなく、武力と知力に優れたものがなるように決まっています。)
そうなのか。しっかりしてるんだな。
「じゃあ、換金のためにも中心都市に行ってみるか!」
(「「はい!」」)