《天与》確認
「やった、成功だ」
誰かの声が聞こえて、目を開けるとそこには見たことのない世界がひろがっていた。
俺たちは円形の祭壇のようなところの上に立っていて、そこにはさっき教室に現れた模様と同じものが描かれていた。
前を向くと、黒のローブを着て額に汗を浮かべた男性と、その他同じような格好の人が10人ほどいた。
「どうしてこうなった?」
これは俺の声だ。このパターンは知っている。暇なときは常に小説を読んでいたからな。これは、異世界転移だ。それも意図的に行われているところから見て、勇者召喚とかのあたりだろう。
「勇者様方。どうか我らに力をお貸しください!」
ほら、正解。
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今、俺たちは先程の黒ローブ男に連れられて国王のところへ向かっている。詳しい話は国王からしてもらうそうだ。
数分ほどして、きらびやかな扉の前についた。
「国王陛下、勇者様方をお連れしました。」
「ご苦労、入れ」
その声の直後、扉が開き中へ入るよう促された。
「君たちが勇者か」
「あの、勇者とはどういうことでしょうか」
田畑先生だ。全員の心の声を代弁した質問である。
「神託によって勇者召喚を行い君たちは魔王を倒すためにこの世界に召喚された。」
その後は諸々の説明が続いたため、要約すると
・この世界はバースという。
・この世界には人国、獣人国、魔国があり、人国以外は一つずつ国があり、人国には今いるバードッグ王国とテリック女王国がある。
・召喚された勇者は、《天与》と呼ばれる強力なスキルを持っている。
・魔王は世界の理の一部に干渉する力を持っており、それを使ってこの世界を統一しようとしている。
というわけだ。だが、なんかどうもうさんくさい。というか嘘っぽい。これは信用してはいけないタイプの人だ。
「帰ることはできるのでしょうか。」
これも田畑先生だ。責任感の強い先生だから、こういったことは気になるのだろう。
「残念ながら、それはわからない。」
「おい!どういうことだよ。勝手に呼び出しておいて。」
桐山だ。でもその通りだろう。こっちは勝手に呼び出されているからな。その声をきっかけにいたるところから反論の声が聞こえてきた。そのとき
「みんな!聞いてくれ!この王様が俺たちを呼び出したのは危機的状況だからだ。俺はそんな困っている人達を見捨てられない。みんなでバードッグ王国の人達を救いたい。手伝ってほしい。」
この声は天城翔太だ。正義感が強く、行動力もあるためクラスのリーダーなわけだが、一度行動すると回りが見えなくなるため俺は関わりづらい。そもそも関わる理由もないが・・・。
「そ、そうだな。天城が言うならやってやろうじゃねえか」
「そうね、天城君がやるなら私たちもやらないと」
と、鶴の一声で全員が賛成した。
「では、今から君たちの《天与》を調べたい。本能的に使えるはずだ。ひとりずつ我の前で使って見せてくれ。」
俺は列の一番後ろにならび、順番を待った。一人一人変わった《天与》を持っているが。そのなかでもやはり天城のものはすごかった。スキルネームは《逆境》敵のレベルと自分のレベルの差や自分の蓄積ダメージに応じてステータスに倍率がかかるというものだ。これこそ勇者にふさわしいと王が感激していた。
ここでステータスについて説明しておこう。《天与》確認の時に魔法をかけてもらったあと〔ステータス〕と念じると視界の中にいくつかの項目が表示される
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名前 年齢 Lv
職業 称号
HP 体力、0になると死ぬ
MP 魔法、スキルなどを使うのに必要
シールド 物理ダメージ軽減
レジスト 魔法ダメージ軽減
スピード 速さの数値
耐性 状態異常耐性
スキル
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といった感じだ。《天与》と同時に確認するらしい。ちなみにさっきの天城の場合
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天城翔太 17歳 Lv1
勇者 ーーー
HP 200/200
MP 150/150
シールド 300
レジスト 300
スピード 250
耐性 400
スキル 《逆境》
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となる。これは俺たちのなかでも高いほうでこの世界の人のLv30に等しいぐらいらしい。
と色々考えていると俺の番が回ってきた。しかし、俺は自分の《天与》の使い方がいまいちわからない。なぜなら・・・。
「君の《天与》はなんだね?」
「《想像》です」