勇者の石碑
朝目覚めると、体が重かった。気持ちではなく、物理的に思いのだ。
ん?前もこんなことあったような?
予想通りだった。あかりが俺の上に乗っていた。一つ違うといえば、俺もあかりを抱き枕にしていたため向かいあった状態になっていることだな。
「顔が近い・・・。」
あかりは起きそうにない。それに手も動かせないので、体ごと動かして揺すってみた。
「・・・ん、孝介、おはよー。そして、おやすみ~。」
「寝るな。朝はちゃんとしろって言っただろ。」
「ん~、じゃあおはようのキスして。」
絶対寝ぼけてるな。まぁいいか。
「わかった。するから起きろよ。」
「え?」
そしてあかりにキスした。さすがにほっぺたにだが。あかりの力がゆるんだのでそのうちに俺はベットから這い出た。
「こ、孝介が・・・き、キス・・・した。」
ありゃりゃ。まさかあかりは言う分にはいいけど実際にされるとこうなっちゃうのかね。覚えておけば使えるかもな。
「はぁ、あかり。そんなボーッとしてないで朝飯食べに行くぞ。」
「え?あ、うん。」
(ご主人様、案外井上様のことが好きなんじゃないですか?)
ヘル!最近ヘルプよりからかってることの方が多くないか?
(私はご主人様の気持ちを読み取ることができますので、ほんとはご主人様が井上様をどう思われているのかわかるんですよ?)
そ、そうなのか。
(その答えがなにかはお教えできませんが)
くっ・・・。そういわれると気になるじゃないか。
(自分で気づくことが大切です。)
そ、そうか。
(一つだけお教えできるとすれば、昨日の夜こっそり井上様だけが起きてご主人様と恋人繋ぎしてみたり、ちょっとだけキスしてみたりとかしてたことですかね。)
・・・あかりぃぃ!
(本人には言わないであげてくださいね。私が見れることを知ったら気まずくなると思うので。)
は、はい・・・。
その後あかりが顔を洗ってから戻ってきたので、
「あかり」
「なに?」
「なんかするならこっそりするんじゃなくて、堂々とやれよ?」
「え?は、はい。」
これぐらいなら大丈夫だろ。
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朝食を食べたあとは、予定通り冒険者ギルドに向かった。
カランカラン
「おはようございます。あ!来てくださったんですね。準備はできているので早速行きましょう。」
おっ、もう行けるのか。
そのまま俺たちは受付係の人につれられて冒険者ギルドの奥に行った。
「この階段で地下室に行きます。その先に石碑があると思いますので、それを読んでみてください。」
「あなたはこないんですか?」
「勇者様のみしか入ってはいけないので」
徹底してるんだな。
階段を下りていくと言われていたとおり石碑があった。
「やっぱり日本語だな。」
そこにはこう書かれていた。
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俺は、佐藤裕太勇者の生き残りで、列記とした日本人だ。俺がバースに来たのは西暦2003年。その時の集団失踪事件の被害者の一人だ。なぜその事が分かるのかというと、それは俺の《天与》によるものなのだが、あまり詳しくは言えないが普通の《天与》ではない。
それはおいておくとして、まず2003年というのに違和感を持つだろう。今君が生きる時代がどれぐらいかはわからないが、この世界は地球の方の世界より50倍早く時がすぎる。地球の1年がバースの50年なわけだ。
そして、伝えることはもうひとつある。これが最も大切なのだが。君たちはこのバードッグ王国では魔王が世界を征服するといったことを聞かされただろう。しかし、これは嘘だ。実は魔王は俺達と同じ日本人だ。その力を使って国を守っている。バードッグ王国は勇者召喚の力を使って魔国を含めたすべてを征服しようとしてる。立場としては逆なのだ。
この石碑はその時代の真実を表すようにしてある。なので、間違うことはないはずだ。
最後にこの内容は話すべき時がくるまでバースの人には話さないでいてほしい。
この文を読んだ人に、幸あることを。
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「なんかすごい内容だったな・・・。」
「そうだね・・・。」
それから少しの間俺たちは一言もしゃべらなかった。
「話の内容がほんとだとすれば、早めに魔国にいくべきだな。」
「先ずは獣人国を通ってそのまま魔国にいくのがいいかな。」
「そうだな。とりあえず石碑も読んだしここを出るか。」
そして俺たちは石碑を後にした。
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階段を上がると、そこには受付係の女性と40代ぐらいのおじさんがいた。
「おぅ、おれはここのギルド長だ。どうだったか?石碑は読めたか?」
ギルド長か。そういやまだ会っていなかったな。
「はじめまして。横井です。こっちは、」
「井上です。」
「そうか、よろしく。」
「石碑についてですが、読むことはできました。ただ、内容については話してはいけないと書いてありましたのですいませんが言うことができません。」
「そうなのか。残念だな。まぁでも仕方ないな!気にするな!」
この町はいい人ばっかりだな。
「ありがとうございます。では、僕たちはこの辺で。」
「あぁ、何かあれば相談しろよ。」
「はい。」
そして冒険者ギルドからでた。
「なんか衝撃の事実って感じだったな。」
「うん。」
「大丈夫か?元気ないぞ?」
「なんか騙されてたんだなって。」
「そうか・・・。じゃあ気分転換にでも今後必要になるものを買いにいくか。」
「買い物!やった!」
やっぱり買い物はすきなんだな。
「良かった。元気になったな。やっぱりあかりは笑っているほうが可愛いな。」
「っ!」
「じゃあ行こうか。」
「う、うん!」