勇者のおかげ
ちょっと長めです。
日もだいぶ傾いてきたな。
「そろそろ宿探さないとな。」
「ギルドで聞くの忘れてた。」
せっかくならギルドでオススメを聞いておけばよかったな。
「マップで宿とか探せないの?」
え?あ、その手があったか。
「やってみるか。」
マップでペック村を拡大して・・・。お!あったあった。
「一つしかないみたいだが、あったぞ。」
「やった!久しぶりにちゃんと寝られるね。」
そういや最近は洞窟だったからな。ベットはあったけど。ん?ベット?・・・。っ!
「あー!」
「わっ!ど、どうしたの?」
「ベットだよ。ベット!洞窟で使ったやつ。置いたまま放置しちゃったんだよ。」
「そういやそうだったね。でもべつに大丈夫じゃないの?」
「でも何かしら問題にはなりかねないよ。あんなベットはこの世界には存在しないんだから。」
この世界のベットは貴族が使うぐらいで、それに素材も木なのだが、俺が作ったものは木と鉄を使ったものなんだ。
「そ、それはヤバいかもね。」
「どうしようか・・・。」
う~ん。よ、よし。こうなったら、
「やってやろうじゃねぇか。」
「こ、孝介?どうしたの?」
俺は一つの方法を思い付いた。それに今後必要にもなるだろう。
《想像》スキルをフル活用して、あるものを思い浮かべる。
「よし!できた。」
「なにができたの?」
「聞いて驚け!別座標転送&異空間収納機能付きポケット。名付けて《よじげ・・・・・・」
「却下!」
「お、おぅ。逆に言われた。」
「ダメに決まってるじゃん。」
「そ、そうか。ならとりあえずマジックバックにしとくか。」
「そうしよ。」
くっ!言い切る前に却下された。
「性能としては名前のとおり、他の場所にあるものをバックから取り出せるのと、容量の制限なし異空間にものを収納できるって訳だ」
同じようなものがもとの世界のアニメとかにあったから想像しやすかったな。
「じゃあさっそくやってみよう。」
「でも、ベットが通るような大きさじゃないし、それにベットってなかなか重いよ?」
「まぁ見てなって」
先ずはマジックバックを開いて、取り出したいものを想像すると、
バックの前に淡い光が現れ、それがベットになった。
「あれ、取り出すって言ってたのに手で引っ張り出すわけじゃないんだね。」
「あぁ、転送する場合も収納する場合もその物をいったん粒子に分解してからもとに戻すんだ。その仲介となるのがこのマジックバックだから大きさ、重さは関係ないんだ。」
「そ、そうなんだ。」
「今後大きな魔物とかは持ち運べないからこれに入れられるし、作っておいて損はないと思ったからな。」
あとはベットを異空間収納しておく。
「じゃあ宿に行くか。」
「うん!」
あかりがちょっと嬉しそうなのはなんでだろ?
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ペック村唯一の宿《勇者の宿》についた。町の名物にあやかってるんだろうな。
「すいません。二名で二泊したいのですが、部屋空いてますか。」
「申し訳ありません。ただいま近くに出た大型の魔物討伐のために多くのパーティーがこの宿に泊まられていまして。一人部屋が一つ空いているだけなのですが。」
「はい!じゃあそこに泊まります!」
「おい、あかり。何かってに」
「わかりました。手配しますね。」
はぁ、あかりが勝ち誇ったような顔してるな。
(相手してあげるって言ってたんですから、いい機会じゃないですか。)
ヘルぅ~。やっぱりヘル進化してるよな。もうヘルプというよりは一人の人って感じになってきてないか?
(言ったことは守らないといけませんよ?)
はいはい。ちゃんとやりますよ。
「孝介、早く行こ!」
はぁ・・・。
部屋に着いた。見た目は普通の部屋だな。だが、一つだけ変わったところがあって、
「ねぇねぇ、この宿お風呂があるよ!」
そう、お風呂があるのだ。というのも、前の勇者がこの文化を教えたらしい。勇者が日本人である可能性が高まったな。
「最近入れてなかったからな。せっかくだし入るか。」
「うん!じゃあ先入ってきていいよ。私が後で入るから。」
「そうか。なら先にはいらせてもらおうかな。」
一瞬あかりがニヤっとした気もするが・・・。ま、大丈夫だろ。それよりお風呂だ。
お風呂は一部屋に一個ずつついているため、静かに入れる。体を流してからお風呂につかる。
「あー、気持ちいいなぁ。」
久しぶりに入ったこともあり想像以上に気持ちよかった。それからしばらく湯船に浸かっていると、
「入りますね」
「え?」
あかりがタオルを巻いた状態で入ってきた。
「おい、あかり。後で入るって言ってただろ!」
「うん。後でとは言ったけど、孝介が上がったあととは言ってないよ?」
うっ、屁理屈だ。そのまま、あかりは体を流してからお風呂に入ってきた。
「あかりが入るなら俺はもうあがるからな。」
「なにを言ってるの。まだ5分もたってないんだからちゃんと浸からないと。」
といいながら腕をつかんで引き戻された。
「おい、俺タオル巻いてないんだから。恥ずかしいだろ。」
「なら条件を同じにするために私もタオルをはずすね。」
「それはやめろ!」
と言ったが聞かずにタオルを外そうとしたので、慌ててタオルを押さえつけた。
「きゃっ、お風呂で体に触るなんて。孝介、私のこと好・・・。」
「断じて違う!」
「うぅぅ。そこまで言わなくてもいいじゃん。」
「違うものは違うんだから仕方ないだろ」
はぁ、冷静に考えればこうなることは分かったはずなのだが。お風呂に浮かれすぎていたな。
「とにかく俺は上がるぞ。」
「あっ、待って!」
なんかよけい疲れたような気がする・・・。
しばらくしてあかりも上がってきた。
「そろそろ晩ごはん食べに行くぞ。」
「むぅぅ。」
「おい、あかり」
「んーー!」
はぁ・・・。
「わかったよ。明日一緒に入ってやるから。」
「ほんと!やった!」
結局こうなるのか。
「じゃあ晩ごはん食べに行こ!」
「あぁ。」
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うまかったな。まぁそりゃそうか。この晩ごはんも勇者が伝えたものだからな。前の勇者様様だな。
「そろそろ寝ないとな。明日も早いし。」
「そうだね。じゃあ一緒に寝よ。」
「あぁ、わかったよ。」
まぁヘルに言われたしな。
「えっ?ほんと!」
「自分で言っといてなに驚いてるんだ?嫌だったか?」
「そ、そんなわけないじゃん!てっきり却下だって言われると思ってたから・・・。」
そうなのか。
「で、寝ないのか?」
「寝るよ!」
そのまままた一人用ベットに二人で寝た。あかりがちょっとくっついてきた。さっき断られなかったのにまだ驚いてるのかな。
せっかくなのでこっちから抱きついてやると、
「ひぅっ。」
意味のわからない声を発していたが、ちょっとしたらあかりも顔を埋めてきた。ちょっと可愛いな。直接は言わないが。
そのまま俺たちは眠りについた。