第5話 眷属使いとスキル確認
「う、うーん・・・ここは?」
「目覚められましたね。ここは、貴方の部屋です」
そう声をかけてくれたのはフローラ王女だった。
「「兄さん(悠璃)!!」」
鈴華と那月が泣きながら抱きついてきた。
どうやらすごく心配かけたらしい。
2人には本当に申し訳ないことをした。
周りを見回してみると見覚えのある3人の女性がいた。
どうやらあれは夢ではなかったらしい。
「悠璃さん、申し訳ございませんでした!」
フローラ王女が突然謝り出した。
「どうしたんですか?」
「勝手に召喚したのにお父様が外れだという理由で殺そうとしてしまいました」
謁見の間で国王が僕を殺そうとしたことを誤っているようだ
「それは、王女が謝ることではないですよ。それに国王に歯向かってまで僕を回復させてくれたじゃないですか」
「ですが・・・」
「それに、僕の方が感謝したいですよ。だから謝らないでください。命を救ってくれてありがとうございます」
僕は頭を下げてお礼を言った。
「分かりました」
王女は笑って受け取ってくれた。
王女の笑ったところ初めて見たな。ずっと暗い顔してたからなぁ。
「2人も心配かけてごめんね」
「兄さんが無事ならいいんです」
「そうね。無事で良かったわ」
2人もそう言って泣き止んで笑ってくれた。
「ところで王女様に聞きたいことがあるのですがいいですか?」
「悠璃さん、私のことはフローラとお呼びください」
「え?でも・・・」
「フローラとお呼びください」
「いや、それは」
「フローラとお呼びください!!」
「は、はい!!フ、フローラ」
王女様の迫力に圧されてつい返事をしてしまった。
「はい!それで、聞きたいことというのはどうして殺されかけたのかですか?」
「はい、この世界には来たばかりですから、理由がわからないんです」
僕はさっき召喚され、この世界に来たばかりなのだ。だから、歴史とかも何も知らないんだよね。
「悠璃さんが殺されかけた理由は職業の眷属使いです」
それからフローラが理由を教えてくれた。
眷属使いとは、テイマー系の中で最もレアで珍しい職業で、過去にこの職業だったものは数人だけだったという。現在も僕以外には確認されていないらしい。
この職業は、眷属を増やすことで自身と眷属を強化して戦うらしい。これだけ聞くとめちゃくちゃ強いように思うけど実際は意思があるもので魔物ならテイムすることが必要、人種なら互いの合意と自身より弱い者のみという制約がつく。
〈テイム〉のスキルは自身の職業に対応したもののみ使役できる。 またテイムするには自分とテイムした魔物のみで戦って自分が主だと認めさせる必要がある。
例えばビーストテイマーなら獣系のみ。
インセクトテイマーなら虫系のみ。
レアなものでドラゴンテイマーなら竜系のみ。
様々な種類に分かれていて、この全てをまとめて魔物使いって言うんだ。
テイマー系の職業は他の職業と比べてレベルが上がりにくく、ステータスが低くなっている。それでもしっかりと装備を揃えて低位の魔物から従えて強化していけば、勝つことが出来る。
しかし、眷属使いだけは別なのだ。テイマー系の職業は他職よりもステータスが低いのに、眷属使いだけはさらに低くなっている。
「確かに、テイムできる種族に制限がないのはいいけど、ステータスが低すぎるよね」
「だからって、いきなり殺す必要は無いのですが・・・」
「いつか国王には謝らせるとして、理由はわかりました」
あの爺は絶対許さんからな・・・
「といっても主様の職業は今までのものとは違っているんじゃがな」
「どういうこと?」
僕がそんなことを考えていると、突然ニーアがそんなことを言ってきた。
「マスターの職業はギフト〈色欲〉と勇者の称号によって本来の眷属使いとは、名前は同じですが能力が少し違うものになっています。ちなみに〈色欲〉は大罪系と呼ばれるもので、ギフトの中でも元徳系と並ぶ最上級スキルです。他のギフトと違い大罪、元徳合わせて14人しか同時に存在することが出来ません。所持者が死亡した場合にのみ新たな所持者が現れます」
地球の七大罪と七元徳と同じなのかな?
「眷属化っちゅうスキルがあるやろ?本来はたとえ互いに合意していても、自身より弱い者しか眷属に出来ないんや」
「しかし主様の場合は自身より弱いものという制約が無くなっておるのじゃ。そのかわり、生物上雌になるものか無性のものしか眷属にできなくなっておるのじゃ」
「つまり、生物上雄になるものは眷属に出来ないということですか」
「そうです」
3人娘が交互に話して教えてくれた。
僕との契約の際に、眷属使いの情報を少しだけ見ることが出来たらしい。
なるほど、強さが関係なくなったかわりに性別の制限がついたのか。
色欲の効果はわからないけど、名前からして相性がよく、僕的には使いやすいかもね。
「と言うわけなので、私たちを全員眷属にしてください」
「いやいや、何でそうなるのですか?」
この王女様なんか言い出したんですけど。
「マスターが寝てる間に私たちで決めたのですよ」
どうやら眠ってる間に決められたらしい。
「その前にスキルの確認だけさせてくれ」
プレートからも確認できるんだけど、鑑定眼を使ったほうが詳しく調べることができると思うんだよね。
「わかりました」
了解も取れたし、それではさっそく鑑定眼発動!!
【名称】鑑定眼
【スキル種別】固有技能
【分類】魔眼系
【タイプ】パッシブ
【詳細】鑑定の上位スキル。固有技能未満の隠蔽系スキルをすべて無効化する。
鑑定の上位版ね。
これはありがたいな。
【名称】統廃合
【スキル種別】固有技能
【分類】生産系
【タイプ】パッシブ
【詳細】物やスキルなどを統合・廃棄することができる。
レベルで新しい能力が追加されていく。
現在は統合(スキルは不可)しか使用することが出来ない
【名称】色欲
【スキル種別】固有技能
【分類】七大罪系
【タイプ】パッシブ
【詳細】生と死を司るスキル。生命に関することに特化している原罪スキル。
七美徳系の純潔と対となる。魅了などの効果やスキルが統合されている。
【名称】眷属化
【スキル種別】職業技能
【分類】契約系
【タイプ】パッシブ
【詳細】生物上で雌、無性になるものを強さに関係なく自身の眷属にすることができる。
ただし、モンスターの場合はテイム、人種の場合はお互いに合意が必要。
眷属化した際に固有技能、職業技能、技能の中からスキルを一つ選んで習得することができる。
習得するスキルはLv1からとなる。
習得したスキルは眷属が死亡した場合、消失する。
眷属化したものは主が寿命以外で死亡した場合、眷属も死亡する。
「鑑定眼はいいけどそれ以外は癖のあるスキルだなぁ」
「そうなのか?まぁしかし、眷属使いと色欲は妾と相性がいいのじゃ」
「そういえば、契約はしたけどまだ確認してなかったね。ということで確認させてもらえる?」
忘れてたけどソフィー、レヴィ、ニーアは神器だったね。
能力の確認はしておかないとね。
「私たちは構いませんよ」
「それじゃ、さっそく」
【名前】慈愛剣 トゥリフェロニーア
【ランク】SSS
【分類】神器・聖剣
【詳細】初代勇者が慈愛の女神より授けられた聖剣。
慈愛の女神が創造したため神器となっている。
条件が厳しく初代勇者ですら一部しか使用することができなかった。
所有者の成長で新たな能力を解放する。
現在は所有者のレベルが低いため能力が制限されている。
条件を満たさなければ契約することが出来ない。
契約条件を満たし、眷属使い又は武器使いの職業についている場合のみ全能力が解放される。
”愛って素晴らしいよね!! by慈愛の女神”
【効果】絶対不懐 擬人化 身体能力向上
【契約条件】勇者の所持と剣に認められる(能力制限)
条件を満たし、眷属使い又は武器使いである場合は全能力開放可
【名前】宿木剣 レーヴァテイン
【ランク】SSS
【分類】神器・魔剣
【詳細】未完成であった焔滅剣レーヴァティーンと吸樹剣ミストルテインを鍛冶神が1本の剣として鍛造し直したことで完成した剣。
元は普通の魔剣だったが鍛冶神が打ち直したことで神器となった。
2本を合わせたことで両方の能力を受け継いだ。
所有者の成長で新たな能力を解放する。
現在は所有者のレベルが低いため能力が制限されている。
【効果】絶対不壊 体力吸収 擬人化
【契約条件】神器に契約者として認められること
【名前】叡智の教本 ソフィア―
【ランク】EX
【分類】神器・魔導書
【詳細】創造神によって作られた世界の理を記した教本
現在はほぼすべての能力を封印されている
【効果】絶対不壊 擬人化 念話
【契約条件】神器に契約者として認められること ****の血を受け継ぐ者
「殆ど能力が解放されていないんだね」
「まだ契約したばかりですから」
「主が強くなればうちらも強くなるで」
所有者と一緒に成長するか。なんかかっこいいよね!
「それでは確認も終わりましたし、眷属化してもらいましょう!」
「やっぱりするのかぁ」
忘れてくれてるとよかったんだけどな。
「鈴華と那月、それにソフィー達3人はわかるけどフローラとはまだあったばかりだよね?」
それが疑問だったのだ。今日会ったばかりなのになぜ、僕の眷属になりたいのかがわからない。
「それは・・・・」
なぜか顔を赤くしてうつむいてしまった。
「鈍感・・・」
「ん?」
今なんかディスられたような気がするんだけど気のせいだよね?
「はぁ~、乙女には色々とあるのよ。それくらい察しなさいよ」
「察しろと言われてもわからないからなぁ」
女性ってよくわからないよね。
「ともかく、フローラも眷属にすること!!いいわね?」
「う、うん、わかったよ」
まぁ、フローラがいいなら別にいいか。
僕自身も強くなれるし。
僕は深く考えることをやめた。
「じゃあ、眷属化を始めるよ。まずは誰からにする?」
「兄さん、私からやりたい」
最初は鈴華から行うらしい。
「じゃあ、始めるよ」
我が魔力を贄に紡ぐ
礎は万物の理
秩序と混沌は表裏一体の理
天秤により運命は善悪に分岐する
なれば獅子の女帝は過ちを犯さず
告げよう
汝の身は我が者に、我が命運は汝が為に
制約に従い、我を主と認めるならば応えよ
汝の誓いを今此処に
我は眷属を統べる王と成る者
汝を我が眷属に
サーヴァンツ!
詠唱を終えた瞬間僕と鈴華を囲むように魔法陣が現れて鈴華の中に消えたいった。
〔個体名:浦之鈴華の眷属化を確認しました。獲得するスキルを選んでください〕
声が聞こえた瞬間目の前に透明な画面が現れ鈴華のスキルが表示された。
「なるほどね。こんな風に表示されるのか」
精霊の愛と迷ったけど精霊眼を取ることにした。
〔精霊眼を習得しました〕
早速習得できたの確認して見ることにした。
「精霊眼」
スキルを発動した瞬間周りにいろんな色の光が飛んでいた。
「ヘぇ〜、これが精霊なんだね。まさか、本当に習得できるなんて・・・」
これはすごいね。
「「え?」」
「ん?」
なんてことを考えてると、神器の三人娘とフローラが驚いた顔でこっちを見ていた。
「のう、主様や。今、精霊眼て言わなかったかのぅ?」
「うん、習得できたからね。鈴華を眷属にしたら、鈴華の習得しているスキルを一つ習得できるみたいだったから精霊眼を選んだよ」
「「えぇ!?」」
「みんな驚いてどうしたのよ?」
那月や鈴華もわからないらしい。
「普通は眷属化した時に習得できるのは技能のみなんですよ。固有技能や職業技能を選ぶことはできないんです」
「え?でも普通に選べたけど・・・」
「だから驚いているんです!!」
どうやら、普通じゃ無いらしい。
「もしかして、ニーアたちが言ってた勇者の称号の影響じゃない?」
「そうかも知れません。そもそも、勇者になるものは1回の召喚で1人だけなんですよ。」
「でも、僕は称号を持ってるね」
うーん、なんでだろうね。
「もしかしてですけど、マスターは元々勇者を与えられるはずだったのが、何かの原因でもう一人の方に移ってしまったのではないでしょうか?」
うーん、原因ね。
「まぁ、心当たりはあるんだよね」
「そうなのですか?」
「うん、僕の称号に浦之家の血筋ってのがあるんだ。これが原因かも知れないと思って」
「血筋ですか?」
「うん、よくわからないけど多分これが原因だと思う。大叔母様も男児が受け継ぐ浦之家の血は特殊だって言ってたし」
「なるほどなのじゃ。まぁ、わからないことを考えても仕方ないのじゃな」
「そうだね、また今度調べればいいからこの話は終わりでいいね。次に行こうか」
「次は私ね」
2番目は那月が行うらしい。
「じゃあ、始めるよ」
さっきと同じように詠唱を行った。
詠唱を終えると鈴華の時と同じように魔法陣が現れて消えたいった。
〔個体名:柊那月の眷属化を確認しました。獲得するスキルを選んでください〕
透明な画面が現れて、習得できるスキルが表示される。
魔導の才もいいと思うけど僕は魔導書を選択することにした。
〔魔導書を習得しました〕
「あ...れ..?」
頭の中にアナウンスが流れた瞬間、僕の意識は途絶えた。
次回の更新は明日になります。