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閑話 3

 一面真っ白な空間のとある一室


「はぁ~、失敗しちゃったなぁ」


 畳が敷かれた和室のような部屋で、中央に置かれたこたつに入りながらピンク色の髪をした20代前半ぐらいの一人の女性がため息を漏らしながらつぶやいた。


 部屋には中央に置かれているこたつ以外にも、テレビや冷蔵庫といった電化製品が置かれていた。


「まさか、他の神が介入してくるなんて予想もしていなかったわ」


 女性は、部屋に置いてあるテレビに映っている一人の少年の姿を見ながら、この前の出来事について思い出していた。


「それにしても、勇者召喚に介入してくるなんて誰の仕業かしら・・・。こんなことできるのは神くらいだろうけど、調べたところみんな違ったのよね」


 勇者召喚が行われた後すぐに、残っていた痕跡を使って調査したけど誰とも一致しなかった。


「だとすると、私たち以外の神がこの世界にいるということよねぇ。ただ、ここ最近は神格を得て神になった人間は一人もいないのよね。だとすると、やはり堕神の仕業としか考えられないわね」


 墜神とは、ルールを破るなどの禁忌を犯して神界を追放された、堕ちた神のことだ。ただ、堕神となったとしても、元は神のため神格は所持している。そのため、神力を使うことはできる。簡単な話が、天使が堕ちて堕天使になったようなものだと思ってくれればいい。


「うーん、情報が少なすぎて今のままじゃわからないわね。もっと詳しく調べる必要があるわね。まぁ、それとは別で、彼の勇者の力を一部だけでも残せたのはよかったわね」


 ドガーンッ!!


「た、大変です!!」

「どうしたの?」


 考え事をしていたら、勢いよくドアが開き一人の天使の女性が慌てた様子で走りこんできた。


「た、大変なんです!!勇者が!!」

「勇者?」

「帝国が勇者召喚の義を開始しました!!」

「ま、まって、それは本当なの?勇者召喚用の魔法陣は王国にしかないはずよね?」

「どうやら、王国に侵入していた帝国の密偵が、魔法陣の複写と情報を帝国に持ち帰ったようです」

「でも、それだけだと勇者召喚は行えないはずよ。だって、あれを行うには神具かそれと同等のものが必要なはずよ」

「それが、昔にエルフたちから奪った世界樹の宝珠を媒体としたようです」

「あぁ~、なるほど、そういことですか。確かにあれならば、王国のものよりも質は落ちますか勇者召喚の義を行うことは可能でしょうね。それにしても何を考えているのかしら。間を開けずに勇者召喚を2回も行うなんて、このままだと世界そのものが壊れる可能性があるわ。それだけは絶対にダメ。この世界はあの人が・・・」


 テレビに映っている一人の少年の姿に一瞬目を向けると、私は立ち上がると直ぐに部屋を出た。


「このままだとまずいから、今から勇者召喚に介入するわ」

「だ、大丈夫なのですか?前回の召喚にも介入していましたけど」

「他の神ならともかく私なら問題ないわ」


 だって私は、―――なのだから。


「一度発動してしまった勇者召喚を止めることは私にもできないわ。たとえそれが複製品だとしても。ただ。今回は正規のものではなく、帝国が独自で複製したものだもの。前回は彼自身に干渉することしかできなかったけど、今回なら召喚そのものに干渉することも可能ね」

「さすがですね」


 私は早速、神力を使い勇者召喚への干渉を開始した。


「なるほどね。王国の物を複製しているだけあって、対象世界は地球なのね。このままだと、前回よりは少ないけどそれでも結構な人数が召喚されることになるわね。なら、召喚人数を10人以内に規模を狭めて、魔素の消費量を最低限に設定しましょう。これ以上はさすがに私でも厳しいわね。せめてあの人がいてくれたら・・・って、ダメね」


 ある人のことを思い出したが頭を振って、気持ちを切り替えた。


「よし、これなら世界に与える影響を最小限にできるわ」


 解放していた神力を止めると、息を吐いた。


「はぁ~、さすがに疲れたわ。当分は神力を使いたくないわね」

「お疲れさまでした」

「ありがとう」

「いえ、これが私の仕事ですから」

「ふふ、そうね」


 やることは終わったため、部屋に戻ってこたつに入ると、再びテレビをつけた。


「それでは、私は戻ります」

「ええ、お疲れ様」


 天使の女性はそう言って部屋を出て行った。


「さてと、彼のことを皆に伝えるべきかどうか・・・。いえ、まだ伝えないほうがいいわね。あの人であるのは間違いないけど、記憶は戻っていないみたいだし。伝えるのは目覚めてからのほうがいいわね。みんなには悪いけど、当分は私だけで独り占めさせてもらおうかしらね」


 こたつの上にミカンと煎餅をを出すと、先ほどと同じ少年が移っている画面を見始めた。

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