第6話 初の護衛依頼4
『マスター、隠れている者たちを合わせて、敵は全部で30人です』
「了解」
僕は、襲い掛かってくる盗賊たちの剣をレヴィとニーアで受け流しながら、周りを見た。
「見える範囲にいるのが11人、なら木々に隠れているのは19人ということか」
周りの確認を終えると、エリーナさんに声をかけた。
「エリーナさん、敵盗賊の人数は全部で30人で、木々に19人隠れています!!」
「分かったわ、悠魔君。聞いたわね、敵は全部で30人よ。弓を持った奴がいるかもしてないから、しっかりと周囲を警戒するのよ。ルティアは盾でセリアとアルメダを守って!セリアは私たちに補助の魔法をかけてから、いつでも回復できるように準備、アルメダは魔法で援護して!!」
「「了解」」
エリーナさんは人数を聞くと素早く指示を出した。
(すごい、僕が人数を教えたら迷いなくすぐに指示を出した。僕もアレくらいできるようになりたい)
僕はエリーナさんの指示に、感心しながら攻撃を受けながし、鑑定眼で盗賊たちのステータスを鑑定した。
「僕よりはレベルもステータスも高いけど、今見える範囲のやつらはそこまで強くないね。ニーアの身体強化を使っているから後れを取ることは無い」
鑑定が終わったから、僕は盗賊たちを殺すために攻撃に移ることにした。
「そろそろ攻撃させてもらうよ」
そう言って僕は、右足で地面を蹴ると空中に跳躍し、魔力具現化を使用して足元に魔力の足場を作り出した。
『マスター、右下の陰から矢が飛んできます』
「了解」
僕はソフィーに返事をすると、魔力の足場を蹴る、作るを繰り返して空中を移動した。
「な、なんだと!?」
〔スキル〈軽業〉〈天歩〉を獲得しました〕
「やっぱり実践に勝る訓練はないということかな」
今まで獲得することが出来なかったスキルを簡単に獲得することが出来なので、僕は改めて実践が一番訓練になると思いなおした。
「お、お頭!!攻撃が当たりません!!」
「クッ、おいデオ、アル、イデ!!魔法で狙え!!」
「分かりやした!!風よ、刃となりて敵を切り裂け!!ウィンドカッター!!」
「火よ、矛となりて敵を刺し貫け!!ファイアーランス!!」
「土よ、矛となりて敵を刺し貫け!!アースランス!!」
お頭と呼ばれている奴が指示を出すと、僕に向かって3種類の魔法が飛んできた。
「まさか、盗賊の中に魔法が使える奴がいるとはね。グリモア!!」
僕が魔導書のスキルと発動させると、目の前に漆黒の分厚い本が一冊現れた。那月の純白の魔導書に対して僕のは漆黒の魔導書だ。
僕は魔導書を開いた状態で敵の魔法に向かって天歩を発動した。
「ちょ、ちょっと悠魔君!?」
「僕は大丈夫ですから、戦闘に集中してくださいね」
驚いて攻撃を止めたエリーナさんにそう言うと、僕はウィンドかったの手前で停止した。
「新しい魔法は有り難くもらうよ」
魔法が僕に当たる瞬間、漆黒の魔導書が輝き、3種類の魔法は全て一瞬で消えてしまった。
〔魔導書に魔法を記憶しまし。解析を開始します〕
「な、なんだと!?」
「ええええ!?」
「あれはスキル?黒い本が光ったと思ったら一瞬で魔法が本に吸収された。相殺でも消えるでもなく吸収されるのは初めて見た。しかも3種類同時」
僕が魔法の記憶を終えて下を見ると、なぜか盗賊もエリーナさんたちも全員が戦いを止めてこちらを見ていた。
「お、お頭!!魔法が効きませんよ!!」
「当たったと思った瞬間、急に消えましたよ!!」
「エリーナ、アルメダ、今がチャンスですよ」
「そ、そうね」
「風よ、切り刻め!風鎌!!」
セリアさんの声で、エリーナさんとアルメダさんは動き出し、近くにいた盗賊を攻撃した。
「グハッ!!」
「ガッ!!」
「ソフィー、隠れている敵の位置を教えて。このまま潰す」
『了解しました、マスター』
僕は、先ほど魔法を売ってきた3人と隠れている残りの16人に、天歩を利用して空中から攻撃を仕掛けた。
「うわぁぁぁ!!」
「グフッ!?」
「ガァッ!?」
僕は19人を一撃で仕留めると、そのまま盗賊のお頭に攻撃を仕掛けた。
「チッ、ウラァァ!!」
「クッ!!」
お頭のレベルやステータスは、他の盗賊たちよりも高くニーアとレヴィを交差して受け止めたが、両手におい衝撃を受けた。
「レヴィ、もう少し身体強化を強くしてくれ」
『了解じゃ』
身体強化のレベルを少し上げて何とか、お頭の攻撃をはじき返した。それからすぐに、バックステップで距離を取った。
「やっぱり、僕のステータスじゃ少し厳しいね。これ以上身体強化のレベルを上げると僕の体が持たないし、エリーナさんたちを待つほうがいいか」
エリーナさんたちの方を見てみると、殆ど倒し終わっており残り2人だけとなっていた。
「ソフィー、僕の代わりに魔法の詠唱をすることはできる?」
ソフィーが気配察知のスキルの演算と制御を僕の代わりに行うことが出来たため、魔法も同じことが可能か聞いてみた。
『マスターのレベルが20になったときに〈共有〉というスキルを獲得したため可能です』
「なら、僕は剣と刀で攻撃を仕掛けるから魔法の発動はお願いするよ」
『了解しました』
僕はソフィーが詠唱を開始したのと同時に、お頭に攻撃を仕掛けた。
「はぁぁ!!」
「ふんっ!!」
『ファイアボール!!』
僕とお頭が鍔迫り合いをしていると、僕の周囲にファイアボールが複数現れてお頭に向かって飛んで行った。
「無詠唱でしかも複数同時展開だと!?ぐあぁぁぁぁ!!」
お頭は僕と鍔迫り合いをしていたため反応が遅れて、ファイアボールを避けることが出来なかった。
『マスター!!』
「わかってる!!」
僕はファイアボールの直撃を受けて倒れているお頭の首に向かってニーアを振り下ろした。
「これが、人を殺すという感覚なのか」
『マスター大丈夫ですか?』
「うん、思ったよりも大丈夫みたいだ。ダンジョンで人型の魔物を殺したときよりも、来るものがあってきついけど耐えられないほどではないね。ただ、慣れることは出来そうにないかな」
僕は初めての人を殺すという体験に、何とも言えない気持ちになった。
(こんな思いを那月たちにさせたくないな)
僕は少しの間気持ちを落ち着かせるために、今殺した盗賊たちに黙祷を捧げた。




