第4話 初の護衛依頼2
それぞれが自己紹介を終えたため現在は盗賊や魔物を警戒するのに各自集中している。
現在の隊列は馬車の右前が剣士のエリーナさん。彼女は獣人族で5感が鋭いため前で周囲の警戒している。
そして前左がルティアさんで馬車を守るように盾を左側に構えながら歩いている。
後ろには僕とアルメダさんが並んで歩いている。
僕は探知スキルをフルで発動し、限界距離まで盗賊と魔物を探知している。そしてアルメダさんは声がかかったらすぐに魔法を発動できるように準備しながら歩いている。
最後にセレナさんだけど、彼女は神官で支援と回復がメインのため馬車の荷台に乗って移動している。理由は、彼女はこのパーティで唯一回復魔法が使用できるため、僕たちの誰かがけがなどをしたときにすぐに回復してもらうために一人馬車に乗っている。また、盗賊に遭遇した場合は神官である彼女が真っ先に狙われるためそうならないための対策でもある。
「そういえば、悠璃君の黒髪って珍しいよね」
エリーナさんが唐突にそんなことを言い出した。
「確かにそう。この世界で黒髪と言えば、過去に召喚された勇者様の子孫か、つい最近召喚された勇者様たちくらいしかいない」
「あはは・・・」
この世界での黒髪ってそうだったのか。イーダンにいたときは何も言われなかったから知らなかったよ。
「そういえば、私の知り合いが話していたのですが、勇者様方の中にすごい美形で黒髪の男女2人組がいるって言ってました。女の子のほうが男の子のことを”兄さん”と呼んでいたのと、顔立ちが似ていたので兄妹じゃないかって話していました」
4人の顔が一斉にこっちを向く。
なぜ今ここで、そんなことを言い出すんだ!!
あの学校で”兄さん”という言葉を使っているのは鈴華しかいないから、セレナさんが言っていた兄妹って多分僕たちのことだよね。
うーん、さすがに勇者と一緒に召喚されたものですと、教えるわけにもいかないし、ここは心苦しいけど何とかごまかしておこう。
「いえ、僕はただの一般人ですよ」
「1ヶ月数日でCランクまで上がったルーキーを一般とは言わないと思うよ」
「あはは、そ、それに僕の御先祖様が異世界から召喚された人です」
嘘は言っていない。うちの家訓はどう考えても異世界から帰還した人しか書けないような内容だしね。それに、ソフィーが前に、鈴華からエルフの気配を感じるって話してたからな。なんでも、精霊魔導師になれたのは、ご先祖様の誰かにエルフがいて、薄くなっているがエルフの血が流れているからだそうだ。鈴華の姿と種族が人族なのは先祖返りに近い状態ではあるが、完全ではないためらしい。ちなみに僕からは感じないらしい。まぁ、兄妹だから僕にもエルフの血は流れているのだろう。だから嘘ではない。
「へぇ、そのご先祖様の名前ってなんていうのかしら?」
「浦之悠夜って名前ですよ」
ピタッ!
僕が名前を言った瞬間僕以外全員がその場で立ち止まってしまった。馬車までもが止まっている。
(あ、あれ、僕何かまずいこと言っちゃったかな?)
僕が全員が止まってしまったことにあわあわしていると、セレナさんが最初に声を出した。
「まさか、浦之悠夜って」
「2代目勇者様と同じ名前よね?」
「歴代勇者の中で最も最強と言われている方かな?」
「浦之悠夜みたいな名前は、東の離島にある国ヒノワ独特の名前。そして、浦之悠夜様というのは、ヒノワの国を創った初代天帝や帝と呼ばれている」
衝撃の事実!!まさか、ご先祖様がこの世界に召喚されていたとは思わなかった。それも勇者としてなんて。普通、ご先祖様が過去に召喚されたことのある世界に子孫の僕が召喚されるなんて思わなくないかな?まぁ、最初の職業が勇者だった理由はこれで理解したよ。
「さすが、アルメダ。よく知っているね」
「ん、興味あったから色々調べた。他にもこの世のものとは思えないほどで神をも超える美形などとも書いてあった」
”当然であろう。儂はこれでも天空神であり創造神でもあり、神々を統べる神王でもあったのだからな”
「ッ!?」
(今、頭の中に声が聞こえたような気がしたんだけど・・・。ソフィーは聞こえなかった?)
『はい、私には何も聞こえませんでしたよ』
それから少し待ってみたが、あれ以降聞こえる気配がなかったので気のせいだったのだろうといいうことで忘れることにした。
「そういえば、私も1度興味があって歴代の勇者様について調べてみたけど、なんでも2代目勇者である悠夜様は、勇者と眷属使いの職業2つを所持していたらしいわよ」
「2つの職業?」
「そんなこと過去にあったか?」
「そんな例は2代目勇者様を除いて一切ない」
どうやら僕が眷属使いの職業になったのも初代様関係あるようだ。特に浦之家の血筋が深く関係しているような気がするんだよね。また、機械があったら調べてみるのもいいかも。
「皆さん、そろそろ再出発しましょう。このままでは街に着くのが遅くなってしまいますよ」
僕が声をかけると、馬車は再び歩き出した。
それから予定よりも少し遅れたが、今日野営する予定だった広場に到着した。
そのあとは手分けして、テントや食事の用意をした。
夜の見張りはエリーナさんが一番、野営の見張りをするのが初めてということで、僕はセレナさんとペで2番、アルメダさんとルティアさんが3番目という順番になった。
「はぁ、今日はいろいろ知ることが出来てなかなか楽しかったよ」
僕はそんなことを考えながら、見張りの交代の時間になるまで眠った。




