第22話 初心者ダンジョン攻略 ボス戦2
遅くなって申し訳ございません
「強化します。壱ノ舞・攻力円舞、弐ノ舞・防力円舞」
雪乃はボスから離れた位置に移動し、仲間を強化するために舞のスキルを発動した。
パッシブスキル〈舞踏〉によって舞の効果は上昇した状態で悠璃達を強化した。
「おっと、これは雪乃のスキルによる強化だね。筋力と防御が上昇している感じかな」
雪乃の支援による急なステータスの上昇によって、体幹の操作に違和感を感じたがそれも一瞬のことで直ぐに現在の状態に適応した。
戦闘中にステータスを強化すると身体操作に違和感を感じることがある。これは、ステータスが急に上昇したことで力を操作する感覚がくるってしまうことによって起きる。
「まぁ、いつもニーアによる身体強化を行っているからこれくらいなら何の問題もないね」
悠璃の場合は元々のステータスが低いため強化の影響が普通より出やすかった。しかし、いつも神器であるニーアの身体強化を使用しているため全く問題にならなかった。
「本当は鑑定眼でボスのステータスを確認しておきたいんだけど、今回は無しでやってみよう」
悠璃はまだ戦闘を行いながら鑑定眼を発動させることが出来ない。そもそも、プレートでの確認と自分自身へとしか殆ど使用していないため、発動するのに集中をしなければならない。
「戦闘中でも鑑定眼を使用できるようにする。これは、今後の課題の一つだね」
悠璃は課題を一つ発見できたことに満足して、戦闘に意識を集中するよう切り替えた。
「ブモォォォォ!!」
ハイオークは手前まで接近していた颯に向かって大きな棍棒を振り下ろした。
前を走っていた颯はハイオークの振り下ろした棍棒を跳躍することで躱した。
ハイオークは相手が足場のない空中に跳躍して避けたことで、ニヤリと勝利を確信し叩きつけた勢いを利用して身動きの取れない颯に向かって棍棒を振り上げた。
「最初は私から行きますよ。空歩、縮地!!」
しかし、颯は空歩を使用することで振り上げられた棍棒を避け、もう一度空歩を使用していったん空中に静止した。そこから膝を曲げ鞘に刺した状態の刀の柄を握り抜刀術の体勢になった状態で足場を蹴って、ハイオークに向かって跳躍すると同時に縮地を発動させ高速移動した。
ハイオークは相手の普通ではありえない動きに唖然とした。
「あなたの右腕はもらいますよ。抜刀術・居合一閃!!」
空歩と縮地による高速空中移動によって、ハイオークの右腕に向かうとすれ違うと同時に刀を鞘から高速で抜き放つ抜刀術によってハイオークの右腕を切り飛ばし綺麗に着地した。
「ブヒィ?ブヒィィィ!!ブヒヒィィィィ!!
ハイオークは自分の右腕が切り飛ばされたことに気づくと、痛みで棍棒をでたらめに振り回した。
「ナイスですよ、颯。そんなでたらめに振り回していても僕には当たらないよ!!」
2種類の魔眼系スキルを手に入れたことで視力以外に動体視力も上がっていた悠璃は、ソフィーによる演算処理の補助を受けることで的確に棍棒を避けながら、ハイオークの懐に飛び込んだ。
それと同時に那月による魔法攻撃の援護と、鈴華による弓の攻撃でハイオークは片目をつぶされたことで先ほどよりも激しく棍棒を振り回した。
「ブガァァ!!ブギィィィィィィ!!」
しかし、懐に入っている悠璃に棍棒は届くことは無かった。
「僕はわざと呼べるものは持っていない。だけど、ニーアとレヴィの切れ味はすごいよ」
悠璃はそう呟くと、右手のニーアを横に一閃して右足を切りつけた。
グサッ
「ブギャァァァァ!!」
「まじですか。切り飛ばせると思ったんだけど・・・」
足を切られたことでバランスを崩したハイオークは右手を地面につけて立て直そうとしたが、颯によって切り飛ばされていたためにそのまま横転してしまった。
「今がチャンスだ!!」
那月、フローラは魔法で、鈴華は弓によって横転したハイオークを攻撃した。その間、雪乃は定期的に舞を発動させながら近くにいる敵を双短剣術によって倒していた。
「行くよニーア、レヴィ!!」
『了解じゃ』
『うちもかまへんよ』
「はぁぁぁ!!」
悠璃は倒れているハイオークの顔のほうへ移動すると、首に向けて左手のレヴィを振る下ろした。
「グガァァァァ!!」
「もういっちょ、せいッ!!」
悠璃はレヴィを戻すと今度はニーアを振り下ろした。
「ブギィィィ!!ブガガァァァァ!!」
「ちょっとしぶといね。でも、颯!最後はお願い!!」
「任せて!!抜刀術・飛斬!!」
颯は、悠璃の合図で鞘から刀を抜刀術の要領で、高速で抜き放ち斬撃を飛ばした。
斬撃はまっすぐ飛んでいき繋がっていた首を切り飛ばした。
「よし、ハイオークは倒した!!あとは残りをせん滅するだけだよ!!残りはあと少しだからみんな頑張ろう」
ハイオークが倒されボスを失った魔物たちはそれぞれが逃げるように動き回った。
「私の魔法を喰らいなさい。火槍!!」
すでに高速詠唱によって詠唱を終わらせていた那月は、火槍を複数生み出し一斉にゴブリンたちに飛ばした。今回はレベルの高い風魔法ではなく、威力が高く複数同時には生み出すことが出来る火槍によって敵を殲滅することにした。本来はファイアウェーブという火の波を起こす範囲攻撃魔法があるのだが那月はまだ使用することが出来なかった。
「わ、私は今回みんなを強化しただけでボスに攻撃していませんが、これくらいの敵なら私でもやれます!!」
雪乃はボスとの戦闘に参加せず、味方の強化と近づいてきた魔物のみを狩っていた。
これは悠璃が、敏捷は高いものの筋力と防御が低いため(悠璃よりは高いが)回避をミスして攻撃を受けてしまったら危ないと考えたのと、本来踊り子という職業は後衛から踊りによる仲間の強化や敵の弱体化などを行って前衛をサポートする職業である。そのため双短剣術による近接戦闘も行るるが本来の職業のようにうごいてもらったのである。
「わ、私に攻撃は当たりません。幻惑の舞!!」
雪乃は幻惑の舞を使用して幻惑による敵の撹乱を行いながら、高い敏捷性を生かして舞をしているように敵の首を的確に狩っていた。
「私は皆さんみたいにステータスは高くないですが、悠璃さんのお役に立ちたいのです。光よ、収束し、一筋の線となり敵を貫け!ホーリーレイ!!」
フローラが詠唱してホーリーレイを発動すると、目の前に光が収束し一筋の線となって丁度縦に並んでいた敵をすべて貫いた。
「私も兄さんにいいとこ見せる。遠見、集中を発動」
鈴華は遠見と集中を併用して発動し、弓に矢を3本つがえて発射した。それからすぐにまた矢を3本つがえた。
魔物はそれぞれの活躍により直ぐに殲滅された。
「みんなお疲れ様。誰一人けがはないみたいだし、どうやら全員無傷で勝利できたようだね。やっぱりみんなはすごいね」
全員、悠璃に褒められたことで嬉しそうにしていた。
ちなみに、リトルスライムの一美、二夜、三津紀は生まれたばかりでスタータスが異常に低いため3匹とも悠璃の服の中に隠れていた。
僕たちが倒した魔物から素材を剥ぎ取っていると中央に宝箱が現れた。
「そういえば、ボスを倒した後は必ず宝箱が出現するんだっけ」
座学の授業で聞いたことを悠璃は思い出していた。
「うん、もうすぐ終わりそうだね」
それから、素材の回収は殆どが魔石を取るだけだったため、思ったよりも早く終わることが出来た。
「それじゃ、この部屋を出る前にお楽しみの宝箱開封と行きましょうか。誰が開ける?」
「「悠璃さん(くん)」」
「運の高い兄さんが開けるべき」
「そうね、悠璃がいいと思うわ」
「はぁ、了解だよ」
今回も前回同様に全員の希望により悠璃が開けることとなった。
次回の更新は明日になります