第19話 初心者ダンジョン攻略6
僕たちは1時間ほど休憩を取ってから5階層の探索を開始した。
「うーん、ナイトやアーチャーが出てくるようになったけど、上の階層の時とあんまり変わってない気がする。みんな瞬殺だし」
「そうですね。勇者様たちのステータスはレベル1でもこの世界の住人よりもともと高いですからね。初心者ダンジョンとよばれる、初心者ダンジョンと呼ばれる1~10階層までの魔物では相手になりませんそれでもここを選んだ理由は、勇者様たちに安全に魔物とダンジョンになれてもらうという目的があります」
「そうだよね。私たちの世界には魔物なんていなかったし、戦争なんてない平和な国だったからね、ステータスが高いからと言っていきなり強い魔物とは戦えないわ」
フローラの言う通り、平和な世界から来た僕たちが魔物やダンジョンになれて、知識を増やすことが今回の目的だったんだろうね。魔物でも僕たちからしてみれば生き物を殺すことに変わりないから、いきなり殺せと言われてもためらう人がほとんどだろう。
「おっと敵が来たみたいだよ。数は3匹でナイト2、多分杖を持っているからメイジだと思われる個体が1だね」
「メイジが出てくるのは初めてじゃない?」
「そうね、せっかく魔法を使える魔物が出てきたんだから今まで使えなかった〈魔道書〉を試してみたいわ」
「そういえば、一度も使ったことなかったね。ここで僕も試しておいたほうがいいかな?」
『私は、それがいいと思いますよ。ぶっつけ本番で使うより事前に試しておいたほうが安心ですから』
「了解」
ソフィーからのアドバイスもあり、ナイトの相手を鈴華たちに任せて僕と那月はギフトを試してみることにした。
「まずは、私から試すわね」
そう言って那月は前に出た。
【名称】魔道書
【スキル種別】固有技能
【分類】干渉系
【タイプ】アクティブ
【詳細】このギフトを発動している間、視認した魔法・魔術を瞬時に解析・理解を行い、魔道書に記憶する。記憶した魔術はこの魔道書を媒体とすることで詠唱、媒体を必要とせずに瞬時に使用することが出来る。また、記憶した魔法は自身がその魔法の属性に対して適性を持つ場合のみ、自身の魔法として習得することが出来る。ただし、この魔導書を使用できるのはギフトの所有者のみであり、他の者に見せたとしても読み解くことが出来ず使用できない。この魔導書に記憶された魔法又は魔術を複数組み合わせることで新たな属性と魔法・魔術を創り出すことが可能。ただし、0から新たな魔法・魔術を創り出すことはできない。
このスキルには魔力量増加、魔力回復速度上昇、魔法合成等複数のスキルが統合されている。
「〈魔道書〉発動」
那月がグリモワールを発動させると目の前に1冊の純白な本が現れた。
「あれが那月のグリモワールなのか。純白で輝いていて綺麗だね」
僕がそう感想を述べていると、ゴブリンメイジがさっそく魔法を使ったようだ。
「あれは、ファイアボールか?でも、那月って火魔法のレベルが3だからファイアボールはもう使えると思うんだけどどうなるのかな?」
『魔道書のギフトは、自分が使用した魔法を記憶することはできないみたいですよ』
「なるほど、自分以外の相手が使用した物じゃないといけないのか」
僕がソフィーの説明に納得していると、那月の魔道書が輝いていることに気が付いた。よく見ると瞳に魔法陣が浮かび上がり光っている。今解析しているのだろう。しかし、それも数秒で終わってしまった。
魔法はゴブリンが発動してから数秒で消えてしまった。
「ふぅ~、これが魔道書の効果なのね。初めてだから少し疲れたけど魔法の名称や効果を簡単に理解できたわ。それに、魔道書を開いてみるとさっき解析したファイアボールに関する知識が記載されている」
「へぇ、そんなに早く解析できるんだね。うーん、確かに僕にはその文字が読めないよ」
「やっぱしそうなのね。それよりこのギフト記憶した物をコレクションのように確認できるんだけど、記憶した数が一定数を超えるとボーナスがもらえるみたいよ」
「なんか、ゲームとかにある図鑑とかのコレクション機能みたいだね。さて、向こうはもう魔法を発動しようとしてるし今度は僕の番だね」
「頑張るのよ」
「ありがとう」
そう言って僕は、前に出て〈魔導書〉を発動した。
「〈魔導書〉発動」
【名称】魔導書
【スキル種別】固有技能
【分類】干渉系
【タイプ】アクティブ
【詳細】このギフトを発動している間、視認した魔法・魔術行うを瞬時に記憶し順次解析・理解を行う。記憶した魔術はこの魔道書を媒体とすることで詠唱、媒体を必要とせずに瞬時に使用することが出来る。また、記憶した魔法は自身または眷属がその魔法の属性に対して適性を持つ場合、対象となった者は自身の魔法として習得することが出来る。眷属に取得させる場合は魔法のページを1つのスクロールとして具現化し、使用させることで習得できる。
この魔導書に記憶された魔法又は魔術を複数組み合わせることで新たな属性と魔法・魔術を創り出すことが可能。ただし、0から新たな魔法・魔術を創り出すことはできない。
解析が完了した魔法は以降魔導書に最大99までストックすることが可能であり、眷属に習得させる場合はこのストックを消費する。ただし、ストックが0になったとしても情報は残るため、魔法・魔術を創り出すのに使用することは可能。
この魔導書に記憶する場合、自身と眷属使用した魔法・魔術を記憶することはできない。
このスキルには魔法譲渡、魔法貯蓄、魔法合成等複数のスキルが統合されている。
「僕のグリモアは、先に記憶してから時間をかけて解析・理解するようだ。まぁ、多分ソフィーと協力すれば解析速度を上げることが可能だろうね」
『はい、私が解析をサポートすることで解析速度を向上させることが可能です』
「なら、これはあんまり関係ないね」
そう言って、ゴブリンが使用したファイアボールを僕は視認した。
瞬間、ファイアボールは魔導書に吸い込まれるように消えて魔導書に表示された。
〔魔導書に魔法を記憶しまし。解析を開始します〕
頭の中にアナウンスが流れた。どうやら、1回1回教えてくれるようだ。
ゴブリンのほうを見てみると2回も自分が放った魔法が消えたために何が起きたのか理解できず戸惑っているようだ。
「よし、魔導書を試すことが出来たから止めを刺そうか」
そう言うと僕はニーアを右手で引き抜きそのままゴブリンの首を切り飛ばした。
「さて、そろそろいい時間だから戻ろうか。夕食の準備もあるからね」
僕たちは探索を切り上げてセーフティエリアに戻ることにした。
セーフティエリアに戻ってみると五条君のパーティは先にするんだみたいだけど十六夜さんのパーティはまだ残っていたようだ
「お帰りなさい、みなさん」
「ただいま、十六夜さんたちのパーティは先にするまなかったの?」
「はい、探索は明日からがいいという意見が多かったので、今日は1日休憩することにしました」
「僕たちも、今日はもう夕方だから明日から次の階層に進むことにしたよ」
「ということは、今日はここに泊まるのですか?」
「はい、僕たちのパーティも今日はここで止まることになりますね」
僕がそう言となぜか十六夜さんのパーティメンバー全員がすごくいい笑顔になった。
それから僕たちは十六夜さんたちと少し会話そしてから夕食の準備を始めた。といってもスープと黒パン、干し肉しかないんだけどね。
「悠璃様、私が食べさせてあげます!!」
「悠璃様、肩が凝っているようですし私がマッサージをいたします」
「なら私は悠璃様の脚のマッサージをします!!」
「・・・私は腕のマッサージを・・・」
などとわけのわからない状況になっていた。それにしてもなんで様を付けられているのかね?
「あのう、綾波さん、桜井さん、野上さん、神崎さん、僕は探索から帰ってきてまだ水浴びもしていないので体が汚れているし汗臭いからそんなことしなくていいですよ。それにご飯も自分で食べられますから」
「「大丈夫です!!私たちは気にしませんから!!」」
「・・・むしろいい匂い?」
「い、十六夜さん!なんとかしてくださぃ・・・」
「みんな悠璃君にご奉仕している、なら私は下のお世話を・・・」
いっても無駄だと思った僕は十六夜さんに助けを求めようとしたがなぜかぶつぶつとつぶやきながら羨ましそうにこちらを見ていた。
「えぇ、十六夜さんもですか・・・そうだ!那月、鈴華、フローラ・・・」
僕は那月たちに助けてくれるようお願いしようとしたらなぜか誰もいなかった。
「那月さんたちなら、夕食を食べ終わって水浴びをしてからすぐに眠られましたよ」
「そ、そんなぁ~」
それから僕は、十六夜さんのパーティメンバーに寝るまでお世話をされたのだった。
いや、逃げようとしたんだけど魔道具で手足を縛られていたんだよね。本当にどこから入手してきたんだろう。
次回の更新は明日になります




