第12話 街の散策 後編
前回の後編になります
最初は昼が近いということで、昼食を食べることになった。
僕たちがフローラに案内されて入ったのは、小洒落たレストランだ。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
中に入ると、ウエイトレスさんが挨拶をしてくれる。
「6・・・いや、9人です。少し待っていてください」
そういって僕はレストランを一旦出て、建物の間の細い道に入った。
「3人とも人化してくもらえるかな」
僕がそういうと3人は人化してくれた。
「マスター、私達も食べていいのですか?」
「妾達は、食事を必要とはせず趣味で食べているようなものじゃぞ」
「うちらは神器やからね」
「気にすることはないよ。それに僕が皆と食べたいからね」
僕は3人を連れてレストランに戻った。
「済みません、もう大丈夫です」
僕がそう伝えるとウエイトレスさんは一番席数が多いところに案内してくれた。
「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
ウエイトレスさんは水を人数分用意すると戻っていった。
周りを見渡すと殆ど女性客しかいない。
店員も全員が女性でホールを担当しているウエイトレスさんたちは短いスカートで接客をしている。
「なんかここのお店、女性が多くない?」
「そうですよ、ここは女性に人気のお店ですからね。メニューも甘いものが多いです。私、前からここのお店に来てみたいと思っていたんです」
嬉しそうに話しているフローラを見ていると別にいいかなと思った。
それから、各自が好きなものを注文して食べ終わると店を出て今度は服屋を見に来た。
ちなみにレストランで食べたものは思ったよりも高くなかった。
服屋は男女両方の物を扱っている場所だった。
「いらっしゃいませぇ。あらぁ~、かわいい子がいるじゃなぁ~い」
そういって出てきたのは、フリフリの服を着て化粧をした筋肉ムキムキのマッチョだった。
目が合うとなぜか背筋がゾクッっとして悪寒が走った。
皆の方を見ると、全員怖いものを見たときのように固まっていた。
「ぼ、僕は外で待ってるからゆっくり見てるといいよ。ハハハ」
そういって僕は店を出ようとしたが「「まって」」と全員に止められてしまった。
「私たち服を見に来たのですが試着することってできますか?」
「ええ、できるわよん。試着室もあるからねぇ」
「わかりました。悠璃、私たちがあなたに似合う服を選んであげるから試着室でまってなさい」
那月たちにそう言われて僕は試着室の中で待っていることにした。
それから少しすると、みんなが大量の服をもって来た。
しかい、よく見るとなぜかほとんどが女性用の服だった。
「ね、ねえ、みんなが持ってる服なんかおかしくない?女性ものばかりのような気がするんだけど・・・」
皆が鼻息を荒くしながら服(女性用)を手にもって近づいてくるため、いやな予感がして少しずつ後ろに下がった。
しかし、すぐに壁にぶつかってしまい逃げ道がなくなった。
「み、皆落ち着いて」
僕は落ち着くように声をかけた。
「颯、鈴華は悠璃をしっかり捕まえてて。私たち3人は悠璃を着替えさせるから」
しかし、無慈悲にも那月の号令で全員が動き出してしまった。
僕は、何とかして逃げようとしたが数の暴力で捕まってしまった。
「フフフ。悠璃、私ねぇ、1度は悠璃に女装させてみたいなぁって昔からずっと思ってたのよ」
「私も悠璃さんの女装には興味がありますよ」
「わ、私も1度見てみたいかなぁ~なんて」
そういって3人が頬を上気させ鼻息を荒くしながら、服を片手に近づいてきた。
「ちょ、本当に落ち着いて!! 落ち着いてください!!」
「いやよ、せっかくのチャンスなんだから」
「い、いやぁぁぁぁぁぁ!!」
店内に悲鳴が響き渡った。
しかし、抵抗むなしく服を脱がされパンツ1枚にされ挙句、フリルのたくさんついたロリータファッションと呼ばれる服を着せられてしまった。おまけにヘッドドレスもつけられた。
「うぅ~」
なんてことだ。あまりの恥ずかしさに精神力がガリガリと削られてる気がする。
僕は瞳に涙をためて精一杯にらんだ。
「こ、これはっ!」
「か、可愛すぎるっ!」
「て、天使がおる!」
「に、兄さんヤバすぎ!」
「」
「はうぅ~」
なぜか全員が鼻血を出して倒れている。
(これは、地獄絵図過ぎる!!)
全員が幸せそうな顔で鼻血を出して倒れているのだ。傍から見れば完全に地獄絵図だろう。
そんなことを考えていると突然ファンファーレが鳴った。
〔称号女装の天才、男の娘を獲得しました〕
(ああああああああ!!)
僕は嫌な称号の獲得に心の中で絶唱して項垂れた。
「はぁ、最悪だよ。まぁとりあえず着替えて外で待ってるから」
そういって僕は元着ていた服に着替えて、店の外に移動した。
しかし、悠璃は気づいていなかった。ソフィーが能力でさっきの姿を保存していたのを。
後日、ソフィーが能力で作成した写真がファンクラブに流されクラブ内で戦争が起きたのは悠璃の知るところではない。
それから、少し待つと全員服屋から出てきた。
フローラが手に袋を持っているところを見ると、服を購入したのだろう。
そのあとは道具屋を見たり屋台で、串を買って食べたりして時間をつぶした。
夕食は宿で食べることになり、宿についたころにはちょうど夕食の時間だった。
僕たちは夕食を食べ終わった後は解散にして各自が自分たちの部屋に戻っていった。
ちなみに宿の部屋は1パーティで2~3部屋ずつ取ってある。
部屋分けは僕が一人、鈴華と那月、五十嵐さんと愛川さんで分けることになった。
フローラは別でへやを取ってあるらしい。
僕が部屋に入ると3人は人化を使って人の姿になった。
「あー、大変な目にあったよ全く」
「じゃが、主様可愛かったぞ」
「そうですね。確かに女装させると似合うかもとは思っていましたがあそこまで才能があるとは思いませんでしたね」
「いや~、ほんまにすごかったやんね」
「褒められてもうれしくないよ・・・」
僕はそういってベットの上で寝転がった。
「はぁ、終わったことを気にしても仕方がないね。それそれよりもせっかくレベルが上がった統廃合を使ってみようか」
僕はステータスカードではなくあえて鑑定眼でステータスを表示した。
【名前】霧崎悠璃
【レベル】1
【年齢】17
【職業】眷属使い
体力 36/36(+3)
魔力 115/115(+5)
筋力 12(+1)
防御 12(+1)
敏捷 12(+1)
器用 13(+2)
知力 14(+2)
運 303(+3)
魅力 510(+10)
【固有技能】〈色欲〉〈鑑定眼〉〈統廃合Lv2〉〈精霊眼〉〈魔導書〉〈時空間魔法Lv1〉
【職業技能】〈テイム〉〈眷属化〉〈眷属能力閲覧〉
【技能】〈剣術Lv2〉〈刀術Lv2〉NEW〈二刀流Lv1〉〈魔力操作Lv3〉NEW〈魔力具現化Lv1〉〈速読Lv2〉
【称号】異世界人 眷属使い *****勇者 浦之家の血筋 神器の契約者 女装の天才 男の娘
ステータスは少し上がり、スキルも〈二刀流〉と〈魔力具現化〉を習得していた。
「さて、ステータスを表示した状態で統廃合を使ったほうがわかりやすいよね。今回は〈剣術〉と〈刀術〉に技能統合を使うことにしよう」
「それが一番無難ですね」
ソフィーからもOKが出たのでさっそく使ってみることにした。
「統廃合発動!対象スキルは〈剣術Lv2〉と〈刀術Lv2〉」
スキルを発動させ2つを選択したら、魔力が吸われる感覚があった。
〔ギフト〈統廃合〉により〈剣術Lv2〉と〈刀術Lv2〉が統合されました。スキル〈刀剣術Lv3〉を獲得しました〕
頭にファンファーレが響き統合が成功したことを確認した。
「へぇ~、レベル2を二つ合わせるとレベル3になるのか。これは要確認だね」
「主様、どんなスキルになったのじゃ?」
ニーアに聞かれて僕は、〈刀剣術〉を鑑定した。
【名称】刀剣術
【スキル種別】技能
【分類】武術系
【タイプ】アクティブ
【詳細】剣術と刀術が統合されたスキル。
剣と刀の扱いがうまくなる。また、剣術と刀術よりも効果が上がる。
「刀剣術で剣術と刀術の効果を合わせて少し上げたスキルだね」
「ふむ、上位スキルではなく一般的に統合スキルと呼ばれるものじゃな」
「統合スキル?」
「そうやんね。統合スキルは条件を満たすことで、複数のスキルが統合されて一つのスキルとなったものなんよ」
「本来は条件を達成することで自動で統合されるものなのですが、マスターはそれを動的に自分の意志で行うことができるんです」
このスキルも地味にチートだよね。今は物とスキルしか統合できないけど、スキルのレベルが上がればギフトも統合できるようになるのかな?できるなら、それはたのしみだね。
僕はステータスを開いて〈刀剣術〉がちゃんとあるかと、魔力消費量を確認した。
「スキルはちゃんとあるね。魔力は50減っているね。これはすべて50なのかスキルの数などで変動するのかまた確認しないといけないね」
それから僕は、布団に入り魔力操作と魔力具現化を使用して魔力を空にしてから眠りについた。
次回の更新は明日になります。