第11話 街の散策 前編
今回は長くなってしまったので2つにわけることにしました。
イーダンに着いた翌日
僕たちは宿の外に集まっていた。
「さっそく今日からダンジョンに潜っていく予定なのだが、俺たちは人数が異常に多い。よって、3つにグループを分けて1日ずつずらしてダンジョンに入ることにした」
「今日は一組目が入るわけだけど、残りの二組は暇になってしまうわ。だから、その時間は自由とします。ただし、街の外へは勝手に出ないようにしてください。お金はこちらが用意してありますので心配いりません」
「それだと、一組目は自由時間がもらえないじゃないですか?」
「早く攻略することが出来れば全員攻略が終わるまで自由時間となります。また、全員の攻略が終わっても最終日に1日自由時間を取ります」
アリーシャさんの説明にみんな納得したようだ。
「さて、今から何組目かを発表する。一組目は光輝の勇者パーティ、水瀬パーティ・・・」
1組目から順番に発表された。俺たちはどうやら3組目のようだ。
それとアルフレッドさんは勇者パーティにフローラを入れようと思っていたみたいだけど彼女にお願いされ、僕たちのパーティに入ることになった。
「以上が今回のグループとする。それじゃあ、一組目は今から出発するぞ」
一組目はアルフレッドさんについてダンジョンへ向かった。
「今日は、今から自由となります。2組は明日、今日と同じくらいに集合してください。三組目は明後日に今日と同じ時間んで集合となります。では解散」
アリーシャさんの声で自由行動が開始した。
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僕たちはいったん宿の僕の部屋に戻ってきた。
「さて、今日を合わせて2日ほどあるんだけどこの後すぐに冒険者ギルドに登録しに行かないかい?冒険者登録しておけば後々役に立つと思うんだ」
「私たちは問題ないわ」
鈴華と那月はOKのようだ
「私も大丈夫ですよ」
「わ、私も問題ありません」
次いで五十嵐さんと愛川さんも問題ないようだ。
僕はフローラのほうを向いた。
「私も問題ありませんよ」
意外なことにフローラもOKのようだ。
僕はてっきりこの国の王女だから断られると思っていたんだけどどうやら問題ないらしい。
「じゃあまずは冒険者ギルドに行こうか」
僕たちは宿の人に冒険者ギルドの場所を聞いてから向かった。
冒険者ギルドは宿から出て少し離れたところにあった。
外見を見てみると2階建ての建物に剣と盾のマークがついて大きく冒険者ギルドと書いてあった。
「ここが冒険者ギルドですか。想像していたのと違うね」
扉をくぐってギルドの中に入った。それから空いている受付を探しそこへ向かった。
受付へ向かう途中、周りを見回してみたけど左側に酒場があり受付の右側に掲示板みたいなのがある。
酒場には冒険者らしき人たちが朝からお酒を飲んで騒いでいた。
「冒険者ギルドイーダン市部へようこそ!!クエストの依頼ですか?」
「いえ、私たちは冒険者の登録に来ました」
できるだけ丁寧な言葉遣いで登録することを伝えた。
「それでは、こちらに必要事項を記入してください」
そう言って受付嬢に紙を渡された。
記入するのは名前と年齢と種族、あと書ける人は出身地を書くだけのようだ。
僕たちはすぐに書き終わった。
僕たちは名前の記入欄に下の名前だけを記入した。
「ありがとうございます。次はステータスの確認を行いますのでステータスカードを出してください」
・・・な、なんだとぉ!!
まさかステータスカードの提示が必要だとは予想外だったよ。
これは、マズいよ。称号欄なんて特にヤバい。
「ああ、済みません。名前、年齢、種族、職業、レベルと能力値を見せていただければ結構ですよ。
スキルはその人の生命線となりますし、称号も人それぞれに事情がありますからね」
なんて僕が考えていると、受付嬢が回答してくれた。
「わかりました。みんなもいいね?」
「「はい」」
僕たちはスキルと称号のみ非表示の状態にしてカードを提示した。
「まず、鈴華さんですね。種族は人族で職業が精霊魔導士・・・・は!?精霊魔導士!?」
「お姉さん、もう少し声のトーンを落としましょう」
「あ、はい済みません」
謝りながら鈴華のカードを返してくれた。
「次は那月さんですね。種族は皆さん同じですから職業は賢者・・・ん?賢者!?」
「お姉さん、また声が大きくなっていますよ。一度落ち着いて深呼吸しましょうね?」
僕がそう声をかけると、お姉さんはスー、ハーと深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
「そ、それでは次ですね。もう何が来ても驚きませんよ。颯さんは職業・・・け、剣豪ですね。つ、次は雪乃さんで職業は・・・ハハ、舞姫ですか」
そういって受付嬢は頬を引きつらせてぶつぶつと何かをつぶやいている。
「あと2人ですね。ではフローラさん・・・フローラ?どこかで聞いたことがあるような・・・は!? フローラ王ムグゥ!?」
受付嬢がフローラのことを大声で叫びそうだったから急いで口を塞いだ。
「お姉さん、落ち着いてください。今の彼女は王女ではありません。いいですね?」
僕がそう聞くと受付嬢は首を縦に振ってくれた。
顔が少し赤いのは気のせいだろう。
「それに、僕の職業はみんなと違って驚くこともないと思いますよ。最弱職ですからね」
受付嬢にそう言って先を促した。
「失礼しました。では、最後は悠璃さんです。職業は眷属使い・・・ってどこが驚かないですか!? これ過去に数人しかいなかった超レア職ですよ!!私、見たの初めてです。ですが、受付嬢としてはこれで冒険者として認めるわけにはいきません」
まぁ、そうなるでしょうね。
「確かに、これで冒険者としてやっていくのが難しいと思うのは無理ないと思いますが、問題ありませんよ。既に眷属は3人いますし、僕にはこれがありますから」
そういって腰に差していた2本の刀剣を受付嬢に見せた。
「これはすごい剣ですね。確かに眷属がすでにいてこれほどの装備を持っているなら登録しても問題ないでしょう」
どうやら聖剣と魔剣であることには気づかなかったようだ。
それにしてもこの受付嬢、実は結構上の人なんじゃないか?自分の判断で決めちゃってるし。
「では、全員の登録を行います。こちらのカードに血を1滴垂らしてください」
受付嬢に言われて全員カードに血を垂らした。
カードに血が触れると、光が現れてカードの色が変わり、名前などの情報が表示された。
ちなみに名前は本名じゃなくても構わないらしい。なんでも、人によってはいろんな問題や過去を抱えているひともいるため偽名も許可されているのだとか。ちなみにスキルと称号以外を確認されるのはその人の正確な情報を確認するためと、冒険者としての適性があるかを確認するためらしい。ここで確認された情報はギルドで厳重に管理されるため国や他者に漏れることは無い。また、正確な情報を確認するのはステータスプレートの代わりに冒険者カードを身分証明書として使用できるため、ステータスプレートの情報をギルドで管理する必要があるらしい。それと、死亡したときなどにその個人を特定し、遺族などに遺産を届ける際などに使用するためでもあるらしい。
【名前】ユーリ
【年齢】17
【種族】人族
【ランク】F
「これはギルドカード言われ、ランクが上がるごとにカードの色が変わります。そして、ランクですがFからSSランクまであり最初はFランクからになります」
カードの色はランクで変わり
SS=黒
S=金
A=銀
B~C=赤
D~E=青
F=白
となっている。
ランクが高くなれば受けられる依頼の難易度も上がり様々な特典を受けることができる。
ただし、Bランクからは強制依頼が発生するようになる。また、討伐依頼を受けられるのはEランクからで、護衛依頼はDランクからとなっている。
Fランクは街中での依頼か薬草採集しか受けることができない。
「はい、登録は完了です。さっそく依頼を受けられますか?」
「いえ、今日は登録しに来ただけです。依頼は今度受けます」
「わかりました。あ、そういえば名乗っていませんでしたね。私はここのギルドの受付嬢のリザといいます。よろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いします」
改めて自己紹介をした。
「それでは僕たちは行きますね。今日はありがとうございました」
僕たちは受付嬢に挨拶をして冒険者ギルドを後にした。
♦
「さて、冒険者登録も終わったし、この後どうしようか?」
「せっかくだから街を見て回って買い物をしたいわ」
「いいですね」
「私はそれで大丈夫ですよ」
「わ、私もそれがいいと思います」
「了解、それじゃあ皆で街を見て回ろうか」
意見が一致したことで、この街を見て回ることにした。
この時の僕は気づいていなかった。女子の買い物がどれだけ長いかを、そして彼女達がやろうとしていることを・・・
♦
そのころ一組目はダンジョンの2階層を攻略していた。
「光輝君、右からゴブリンが来るよ!」
「了解! ハァァァァ!!」
光輝が聖剣を振ると、剣から斬撃が飛んだ。
「グギャギャ!!」
斬撃は2体のゴブリンをまとめて切り裂いて壁にぶつかり消えた。
「やっぱりこれくらいの魔物じゃ相手にならないな」
光輝は聖剣を腰に戻しながらつぶやいた。
「さすが光輝君、やっぱりすごいね!!」
「僕は魔王を倒さないといけないからね、これぐらい余裕だよ。それに聖剣もあるからね」
そういって光輝は腰にささっている聖剣を見た。
勇者である光輝には国王から聖剣と最上位の防具一式を貸し与えられていた。
防具一式は国宝級の装備であり、聖剣も神器である慈愛剣には及ばないが、王家の家宝の一つである。
光輝の借りている聖剣の名称は聖剣カリバーンで神器・星光剣エクスカリバーの元になっている。
能力は聖属性付与、不壊などがある。
聖剣ではあるが装備条件は存在しない。ただし、使いこなせるかは別であり相応の能力が必要である。
「それじゃあ、先へ進もうか」
光輝達は周囲を警戒しながら次の階層への階段を探しながら進んだ。
次回の更新は明日になります。