第10話 イーダンへ出発と道中
翌日、目が覚めるとやはり3人はベッドの中にいた。
僕はため息をつくと、彼女たちを起こさないようにベッドから出て洗面所に向かった。
彼女たちのこの行動についてはもう諦めることにした。何回注意しても治らなかったのだ。
ちなみに、鈴華たちも諦めている。
洗面所は部屋を出て少し進んで曲がったところにある。
時間が速いためか誰とも会うことなく部屋に戻ってきた。
その後朝食の時間になるまで本を読むことにした、。
朝食後僕たちは訓練所へ集まっている。
「今日からの訓練はパーティごとで行ってもらう。模擬戦をするもよし、連携の練習をするもよしで話し合って決めてくれ」
アルフレッドさんの指示でそれぞれが動き出した。
「悠璃、どうする?」
「今日はそれぞれスキルを鍛えようと思う。みんないいかな?」
「「はい」」
全員が返事をしてくれたので今日はスキルの訓練を行うことになった。
「まず、那月は各魔法と魔力操作の訓練を、鈴華は弓術の訓練をしてほしい」
「了解」
2人はさっそく訓練を始めた。
「次に五十嵐さんは魔力操作の訓練を行ってください」
「刀術を鍛えなくてもいいの?」
「はい、五十嵐さんには〈空歩〉のスキルを習得してもらいたいのです」
五十嵐さんに空歩について説明した。
「確かに、それは役立つね」
そう言って五十嵐さんも魔力操作の練習を始めた。
「最後は愛川さんですが、舞踏の訓練をします。短剣を2本装備した状態で舞を行ってください」
「は、はい」
愛川さんも短剣を2本手にもって舞を始めた。
それぞれに指示を出し終わったから、僕も自分の訓練を始めることにした。
「まずは、体内で魔力を循環させながら剣術の鍛錬をしよう」
僕は魔力操作を行い体内で魔力を循環させながら、素振りと剣術の型の練習を行った。
「ふっ、ふっ、はぁ!」
素振りと一通り型が終わったら今度は、刀術の訓練を魔力操作を使いながら行った。
それから、アルフレッドさんが終了を宣言するまでそれぞれ訓練を続けた。
午前の訓練の後は昼食を食べて魔法の訓練と座学の勉強になった。
魔法の訓練はいつもと同じだった。
すべて終わり、夕食を食べた後はすぐ解散となった。
僕は魔力操作の訓練をしてから統廃合を使用し、魔力を空にしてかベッドで眠った。
♦
パーティでの訓練になってから2日目、3日目も1日目と同じメニューで訓練を行った。
途中五十嵐さんが魔力操作のスキルを習得したため、空歩の訓練に移ってもらった。
4日目からは模擬戦を行うようにした。やはり、訓練だけじゃなく模擬戦も行うと技術が身に付くからね。
そしてダンジョン前の訓練最終日は連携の訓練を行った。1度は練習しておかないと実際ダンジョンに行ったとき上手くできるかわからないかね。
「さて、明日から我々が攻略する予定のダンジョン近くにある街、イーデンへ向かうことになる。移動は馬車で行い到着は明日の夕方となるだろう」
ここ王都からイーデンまで半日ほどかかるが今回は初めての馬車での移動のため少しゆっくりと進むようだ。
今回ダンジョンに向かうのは300人ほどとなっている。残りは王城にお留守番だ。
今回の居残り組は、魔物と戦うのが怖かったりする人たちだ。嫌がっているのに無理やり連れて行っても無駄な犠牲を出すだけだと判断した騎士団長が国王に進言し、希望者は居残りできるようになった。
「ダンジョン攻略の詳しい説明は明日、イーデンについてから行うこととする。今日の午後からの魔法訓練と座学の授業は休みとなる。その代わり、今日の残り半日は体をしっかり休めるように。以上解散」
アルフレッドさん言葉で僕たちの訓練は終了した。
僕たちも明日のために各自が部屋でゆったりと過ごすことになった。
みんなと分かれて部屋に戻ってくると神器3人娘が人化した。
「さて、この後は暇になったし統廃合の訓練を行うかな」
そう言って僕は那月に土魔法で用意してもらった石を複数取り出した。
「マスター、休まなくていいのですか?」
「そうだねぇ、休みたいけど統廃合のレベルがもうすぐ上がるような気がするんだよね」
僕は2つの石を並べて統廃合を発動した。
魔法陣が現れ並べた2つの石が輝きながら混ざり合った。
光が収まると目の前には先ほどより少しサイズが大きくなった石があった。
「ふぅ~成功だね。やっぱりただの石だとあまり魔力を消費しないようだ」
残り魔力量を確認すると5減っていた。
やはり統合する物によって消費魔力が変わるようだ。
残り魔力が無くなるまで続け、無くなったら瞑想を行って魔力を回復することを寝るまで続けた。
〔ギフト〈統廃合〉のレベルが上がりました。技能統合が解放されます〕
「よし!レベルが上がった。解放されたのは技能統合っていうのか」
僕は鑑定眼を発動させた。
【名称】統廃合
【詳細】Lv2 技能統合
技能の統合が可能となる。統合することで新たな技能を作り出す。
ただし、無理な統合は行うことが出来ず、警告が鳴るようになっている。
「技能同士を統合して新しいスキルを作り出せるのか。まぁ、実際使ってみないとわからないけど今日はもう魔力がないし、時間も遅いから明日にでも行おうかな」
そう言って僕は目を閉じた。
♦
翌日、いつものように洗面所で顔を洗い、朝食の時間まで魔力操作の訓練をすることにした。
パーティメンバーで集まり朝食を食べたあとは王城の正門に集合となった。
「全員揃ったようだな。今回は人数が多いため1台の馬車に15人ずつ乗ってもらい20台でいく」
それぞれ振り分けられた馬車に乗っていく。
「僕たちはこの馬車だね」
そう言って僕は馬車に乗り込んだのだが、なぜか女子しかいない。
僕たちはメンバー全員一緒になったのだが、なぜか女子しかいない。
大切なことなので2回言った。
「ふぅ~、皆さん男が一人いて申し訳ないのですがイーデンに着くまでの間よろしくお願いします」
僕は微笑みながら頭を下げた。
♦
悠璃と同じ馬車になった女子たちは集まって会話をしていた。
「見ましたか、あの天使のような微笑みを」
「ええ、ばっちり見ましたわ」
「私、さっきのだけでご飯何杯もいけるわ」
「それに私たちのことを気遣ってくれる優しさ」
「「まさしく我らがエンジェルですね!!」」
みんな頬を赤く染め目をとろけさせながら悠璃を眺めていた。
「私、悠璃様にスカートを穿かせてみたいです」
「私はメイクしてドレスを着せてみたいわ」
「私はゴスロリファッションを・・・」
それぞれが女装した悠璃の姿を妄想して
「「襲われたい・・・いや、襲いたい!!」」
などと危ない想像をしている。
「ねぇ、鈴華ちゃん。あれヤバくない?」
「そうですね。兄さんの貞操の危機かもしれません」
「わ、私はそんなこと考えていましぇんよ」
「「噛んだね(わ)」」
「はぅ~」
雪乃は顔を赤くした。
「ところで、あれは何ですか?」
「颯は知らないの?彼女たちは悠璃ファンクラブの一員よ」
「なんですかそれ」
どうやら颯は知らなかったようだ。
「学校内の1,2,3年生関係なく女子生徒の半数以上が所属している悠璃のファンクラブよ。女性教師参加している人がいたわ。内容は、悠璃の情報や写真の取引など、あとは影からこっそり見てたりしたわね」
「うちの学校そんなのがあったのですか。今まで気付きませんでしたよ」
「ちなみに、雪乃ちゃんも会員でしたよね」
鈴華の言葉でさらに雪乃は顔を赤くした。
「兄さんは、うん気づいていませんね」
「いつも通りだ鈍いわね」
「ちなみにですか、兄さん女装したことありますよ。」
その言葉に3人は反応した。
「い、いつしたの?」
「どんな感じでしたか?」
「はわわ」
「とても可愛かったですね。女でなおかつ妹である私ですら鼻血がでて倒れてしまうところでした。しかもその時は罰ゲームだったので”お姉ちゃん僕寂しいよぉ~。ぎゅっーてして?”と手を組ませて瞳を潤ませ、首を傾げまがら言ってもらいました。」
3人は鈴華が話したその姿を想像して鼻を抑えながら倒れた。
「やばい、ヤバすぎるわ」
「破壊力が半端ないですね」
「あぅ~」
「「同じことを必ずさせる!!」」
この時、4人の心は1つになった。
♦
「みんなどうしたのかな?」
急に頬を染めたり鼻を抑えながら倒れるところを見て、悠璃は首を傾げた。
「まぁ、いいや。それより魔力操作のレベルが上がってきて魔力の循環もスムーズに行えるようになってきたから、次のことをやろうかな」
『マスター、それでしたら魔力を体内で循環させながら少しずつ体外へ放出する訓練をするのはどうでしょうか?』
「五十嵐さんにやってもらっていた訓練と似たものだね」
『はい、ただ五十嵐様と違いマスターは体全体からできるようにしましょう』
僕は座禅を組み両手を上に向け、目をつむり体内の魔力に意識を集中した。
体内で魔力をゆっくりと動かし循環させていく。
魔力が滑らかに循環するようになったら、右手の指先に魔力を移動させ少しずつ放出していく。
放出する量を調節できるようになったら、今度は左手の指先に魔力を移動させ放出していく。
左手もできるようになったら、魔力を循環させ体全体から少しずつ放出させる。
それから休むことなく続けたことでイーダンに着くころには魔力が無くなり、宿に行くまで大変だった。
宿についてからは、魔力の使い過ぎで疲れていたからシャワーを浴びてすぐに寝てしまった。
それにしてもイーダンに到着し、目を開けたらなぜか僕の目の前に同じ馬車に乗っていた女の子たちの顔があったときはびっくりした。どうも、集中しすぎたせいで気づかなかったようだ。
ただいつもを合わせようとすると逃げられるのに、彼女たちの顔が目の前にあったのは本当に謎だった。
次回の更新は明日になります