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P.D.A. -Passing Dimension Assistant-  作者: ハイド
第四章
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 やがて目を覚ますと、タイマはいつの間にか、見たことのない部屋の大きな座席に深く腰掛けていた。丁寧にシートベルトでしっかりと縛り付けられている。

 寝ている間に何が起こったのだ、と不安になって見回すと、近くの席に《チルドレン》が五、六人、それに加えてアルカとイサも同じ格好でいるのが目に入った。そうか、宇宙ステーションのカタパルトで見た宇宙船のどれかの中か、と納得する。安心してほっと一息ついたところに、後ろからリューとナギサが近づいてきた。宇宙ステーションに残るという前日の言葉通り、二人とも宇宙船の席に着く様子はない。

 リューはタイマの隣に立つと、「ようやく起きたみたいだな」と呟くやいなや、いきなり頭に拳骨を落としてきた。

「いってぇ! 俺が何をしたっていうんだ」

「何をしたかは自分の心に聞いてみるがいい。にしても、たいしたタマだな。覗き見をした場所でそのまま眠るような奴はそうそういないぞ」

「まあまあ」ナギサが後ろからリューをなだめる。「聞かれても構わないような話しかしていないのだから、いいではありませんか」

 その言葉を聞いたリューはショックを受けたような顔をして、それから唐突にタイマの頭に二発目の拳骨が炸裂した。

「ひでえ。俺が動けないからって。そんなに恨みを買っていたのか」

 リューはしばらく、呆れた顔でタイマを眺めていたが、その後でコホン、と咳払いをした。

「まあそのことについてはさておき。着いてからどうするかについては、俺が何でもかんでも指示するより、おまえに全てを任せた方がうまくいくだろう。わざわざ言わなくても大丈夫だろうが、諦めるなよ。確かにPDAコーポレーションは巨大なDゲートという殻にこもっているが、きっと俺たちの意思が伝わらないわけではない。計画の中止が発表されるまで、いつまでも訴え続けるんだ。困ったことがあればいつでも俺の配下を頼れ。頑張れよ」

 リューは手を差し出してきたので、タイマはさっきの拳骨が嘘のような真剣さに戸惑いながらも、その手を取った。昔からずっと変わらない、ごつごつとした無骨な手だ。

 握手が終わると、リューは一歩下がった。続いてナギサが近づいてくる。

「ごめんなさいね。展望室の外で寝ていて、二人とも起きる様子がなかったものですから、《チルドレン》に頼んでここに運ばせてもらいました。もう準備も他の方々への挨拶も全て済みましたから、この後すぐに出発となります。この宇宙ステーションのカタパルトは、座標を設定することで地球上のどこに対してでも宇宙船を射出することができるのです」

 それからナギサはいったん言葉を切って、深々と頭を下げた。

「せっかくの機会ですから、ここで言わせていただきます。今まで、こんな私と仲良くしてくださって、ありがとうございました。言葉では言い尽くせないほど感謝しているのですよ」

 それからナギサは踵を返し、そのまま出て行った。リューもそれに続こうとしたのだが、途中で引き返してきた。その顔は明らかにほころんでいる。

「ついでに朗報だ。どうやらデイタはPネットの中で生きていたようだぞ。Dゲートを利用して現実世界に出たと少し前に連絡が入った。おまえのPDAにも合流の提案が入ってるんじゃないか? 後で調べてみることだな」

 タイマは目を丸くした。それだけ言い残して去っていくリューの腕を掴んで引き留めようとしたが、シートベルトのせいで届かない。

「おい、ちょっと待て。今のはどういうことだ。待てったら」

 しかし、タイマの呼びかけもむなしく、リューは足を止めることなく後ろのハッチから外へ出ていった。しばらくしてハッチは外から閉められ、《チルドレン》の一人が操縦席にPDAをセットし、何か操作を始めた。

 しばらくして、ガタン、と一瞬船体が揺れた。そして次の瞬間、船室をぐるりと囲むディスプレイには星空と地球が映し出され始めた。操縦席に座っていた《チルドレン》の一人が、拡声アプリを使って説明を開始した。

「現在、当船は地球の上空、約四百キロメートルの地点を飛行中です。当船はこのまま落下し、大気圏突入後エンジンを使用して着陸位置の微調整を行った後、北緯35.637、東経139.804、旧ナギサ邸へと着陸します。到着予定時刻は、六月七日午前八時十七分となっています」

 タイマはあっけにとられて窓の外を眺めた。宇宙空間だからか距離感がいまいちつかめないが、外には銀白色でドーナツの形をした宇宙ステーションが見える。地球に向かって伸びるエレベータの軌道が、蜘蛛の糸のようにちらちらと光を反射しているのもわかった。

「本当に、もう飛んでいるんだな」

 半ば放心状態でそう呟く。それからタイマは急に我に返り、リューにかけられた言葉を思い返して、PDAのメールアプリを起動した。

 現実世界から、Pネット内から、知人から、他人からを問わず、何万通ものメールが届いていた。だが、タイマが有象無象のメールをわざわざ気に留めることはなかった。その視線はおびただしい数のメールのうち、ただ一通だけに注がれていた。それは紛れもなく、タイマの親友デイタからのメールだった。

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