表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

敵襲だ






「お久しぶりです。リプシュ・ワーテクトさん」

 われらが女神は、スカートの端を摘み騎士のような男に挨拶をする。

「あぁ、マイン・ライアードさん! 日本の中都に配属されたとか?」

 あの女神マインって言うのか。知らなかった。 

「あれが、別の神なんだな!」

 音量調整をミスったスピーカーのように叫ぶ男は荒野。

 耳を塞ぎたいが、後ろに組んだ手を崩さない。

 それが女神の命令だ。

「うるせーぞ。俺らは、女神の護衛に集中しろ」

「へーい」

 隣の男は間の抜けた返事と共に、視線を女神に戻す。

 確かに、話を聞いたときはびっくりした。

 神々の晩餐会に我々は呼び出されたのだ。

(いい? 前も言ったけど私が死んだら、あなた達も死ぬ。そして、私が死んだ場合日本の真ん中を管理する人間がいなくなる。そうなったら、意味分かるでしょ?)

 いわく、日本でも他の国でもそうだが国ごとに4、5人の女神が統治しており。

 担当した地区で、死んだ人間を異世界に送ったり、戻したりするのが仕事らしい。

 様々な異世界の中で、その人にあった生存率の高い世界に送るのが主だとか。

「禁忌……か」

 その均衡した世界を壊そうとしたのが禁忌。

 わざと人を暴走させ、いい人間が出るまで殺させる。

 一度異世界を攻略し、戻ってきた人間は女神の駒として使役できる。

 だから、いい駒いいスキルを持った人間を駒にしたい神は、そういったことをするのだ。

「あー。確かに配属されたときは大変でした。今があるのもリプシュさんのおかげですよ」

「いえいえ、マインさんの力があってここまで来たのだと思っていますよ」

 日本は5人の神で構成されている。禁忌が行われているのは本土。

 本土を担当しているのは三人。その内の一人がこの男というわけだ。

 女神に負けず劣らずの綺麗な顔立ち。 

 男だというのに腰まで伸びた白銀に、腰の低そうな態度。

 暴れるうちの女神とは大違いだ……と思ったら睨まれたのでやめておこう。

「では……そろそろ」

「あぁ、もうこんな時間なんですね。時が経つのは早いですねぇ」

「そうですね。あ、そういえばあのネックレスはどうしたんですか?」

「……? あぁ、あれですか。少し鎖が痛んでしまったので今は大切にしています」

「そうだったんですね! では……」

「はい。またお話を聞かせてくださいね」

 その言葉を皮切りに、我々はその場を離れた。




 

「ほふほふぃ、へへえな!」

「俺と話すのをやめるか、食べるのをやめるか選べ」

 この際だ。俺が息を止めてやるというのも選択肢の内か。

 口いっぱいに、肉のタレをつける荒野を横目にため息を吐く。

「せっかく、あいつがつくってくれたスーツが見る影もないな」

 さっきは気がつかなかったが、転送する際服装も変わりきっちりとしたスーツに変わっていた。

 服装の準備、というのはその話だったのだろう。

 まぁ、結局汚れた心は綺麗なスーツでは隠しきれなかったということだろう。 

「たいした事件もなさそうだなって思ってよ。暇だよなー」

「楽でいいだろ。平和がいいんだよ俺は」

「ふーん。中学生をシめてそうな顔してんのにな」

「おう、レアでいいか? それともミディアム?」

 俺が右手を向け、スキル詠唱の準備を行う。

「俺だってスキルを使うぜ!「土下座」」

 はぁ、と呟き手を下ろした。全く、紛らわしい奴だ。

 でこが擦り切れんばかりに、頭を下げている。なんと分かりやすい。猿か、こいつ。

「にしても、真ん中に飾ってあるあれ綺麗だよなぁ」

 切り替えも早いらしく、一瞬でこの庭の中央に視線をずらす。

「まぁ……な。あれが、魔力の具現化なんだろ?」

 そこには、まばゆいばかりの光を放ち続ける宝石が、水槽の中に入っていた。

 女神からは、簡単な説明は受けた。

 神々の戦いで、起きた事故。その遺産が、あの魔力の石。

 神の世界に置いてあると、危険なため地球の、人に害をもたらさない月に持ってきたらしい。

「魔力ってなんなんだろーな」

「……」

 普通の人間ならば絶対にこれない月。

 ここで息をして、歩けて、飯を食える。それらは全て、魔力によって補われている。

 戦うちからも、全て魔力というならば。 

あの宝石を手にしたときどれだけ力が手に入るか……どれだけの人を守れるか。

……物騒な考えはよすか。

「まぁーいっか。そろそろ帰れるんだろ?」

「……らしいな。女神もそう言ってたし。帰る準備でも……」

 そういって、宝石から目を離した瞬間だった。

 水槽がけたたましい音をたてて、崩壊していった。

「「っ……」」

 敵襲だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ