月から始まる晩餐会
それは突然だった。
「「えぇ、あなた達には今夜の晩餐会の参加して欲しいの」」
晩飯を終え、床につきケータイを使ってだらだらしていた時。
いきなり耳鳴りと共に、女神の声が鮮明に聞こえ始めたのだ。
こっちの声も聞こえるらしいので、電話のようなものらしい。
「それは俺も行かなきゃいけないのか? 正直俺はだるいんだが」
生まれてこの方パーティや、高級レストラン? に行ったことがない。
そこに出て、恥を掻かない自信はなかった。
「マナーなんて気にしなくてもいいわ。何か言われたら私が言ってあげるもの」
なんと頼もしい言葉。現世でベソを書いていた頃が懐かしい。
「記憶を捏造しないでよ。全く」
呆れたように彼女は呟いた。普通に心を読むな。
そして、一つ息を吸い。
「あなたは、禁忌止める決意をしてくれたのよね?」
と質問を投げかけてきた。
互いに声を発さなくなる。沈黙が二人の聴覚に共有される。
しかし、そう長くない時間の末
「……あぁ」
と、返した。
「その言葉が聞けて、良かったわ。詳しくは明日の夜に説明するわね」
「あ、服装とか大丈夫なのか?」
「あぁ、大丈夫。私がやっとくわ」
一体何を……?
そんな疑問をよそに、時間は経っていった。
次の日の18時55分。
部屋の真ん中で立っていた。
こうしてれば勝手に転送すると言っていた。が、遅い。
早くしてほしい。何も無い状態で立っているのは普通に馬鹿っぽい。
そうしていると、めまいのようなものに襲われた。
ついにきたか。
足に力が入らなくなり、バランスがもつれ床に倒れこむ。
が、感覚は無かった。
「ごめん。遅くなったわね」
目を開くと、地球があった。
正確には、地球から見た月のように地球があった。
「綺麗だな……」
「そうね。月の庭から見える最高の景色よ」
声の方を見ると、女神がにんまりと笑いながら佇んでいた。
周りを見ると、まるでファンタジー小説などに出てきそうなバカでかい宮殿。
所々に配置された、見たことのない料理の数々。
すげぇ……と、感嘆の声が漏れる。
「おぉ! これが女神さんの言ってた庭ってやつですか!」
そんな気分は一瞬で害される。なんだこの聞き覚えのある声。
「お、兄弟。お前も呼ばれたんだな」
そこには、お気楽な笑顔を浮かべた荒野の姿があった。
勘弁してくれ。
「女神、なんでこいつがいるんだよ」
「なんでって、ボディーガードは人数が多いほうがいいじゃない」
そういいながら、近くの料理をはむっと、頬張る女神。
「ボディガード?」
そんな話は聞いていない。まぁ、確かに何かあるんだろうと思いはしたが。
「って言っても、そんな大層なことは無いわ。私の面子を守るためによんだようなもんだし」
そして、彼女は両手を広げ
「パーティは人が多いほうがいいでしょ? あなた達も食べなさい!」
そうして、月でのパーティは始まった。
すいません。かなり遅くなりました。