不登校
僕は不登校を始めた。
理由はいくつかあった。言葉にするのは難しい。
ただ一つだけきっかけの原因になったことがある。僕は家出をした。僕はその日までサッカーのクラブに入っていた。暑い時も寒い時も厳しい監督に怒られながら、僕はサッカーをやっていた。正直そこまで好きでやっていたわけではなかった。
その日僕は父と喧嘩した。理由はサッカーを辞めたいと言ったからだ。僕はカバンに少しの食べ物と服と、お小遣いを入れて外へ出た。とっても開放感があった。
その日は夜中の2時まで歩いていた。途中で探していた親に見つかり家に帰ることになった。正直1人で旅するのは楽しいと感じた。
次の日、僕はヤケになって学校を休んでみた。それまでは休むことどなかったのだが休みたかった。
やることは無かった。ひたすら寝るだけだ。
1週間がすぎた。罪悪感が大きかった。親は学校へいけという。当たり前だ。
2週間がすぎた。もはや何も感じられない。強いて言うなら不登校生は何をいつもやっているのだろうかと疑問に思った。
3週間がすぎた。親に病院に連れてかれた。精神病院だ。よく覚えてない。先生に学校に行けないと言った。この時から僕は学校に行けなくなっていた。
4週間がすぎた。約1ヶ月。僕は学校に行こうと決意した。と言っても保健室登校なのだが。
久しぶりにカバンをしょった。制服も新品みたいに綺麗になっていた。お母さんだ。
30分かけて通学路を歩いて学校に向かう。足が重たい。
保健室に行くと先生がいた。眼鏡をかけてショートの髪のおばちゃん先生が。保健室の先生だ。優しかった。
その日から僕は教室に行かずに保健室登校を始めた。本を読んで帰る、それの繰り返し。
何日かたったある日。
「絵馬くんの仲の良かった奏太くんも来なくなってしまったよ」
先生か本を読んでいる僕に向かって突然言った。
奏太くん、僕のゆういつ仲の良かったと言える男子だ。
次の日、奏太くんも保健室に来た。特に話すことも無く、1時間本を読んで2人で帰った。帰り道、僕は久しぶりに人と話した。
「奏太くんはどうして学校に行かなかったの?」
僕は聞いた。単純に興味があった。よくサボることはあっても何日も休むこと彼はしたことがなかった。
「お前が来なくてつまんなかった」
奏太くんは言った。空を見ながら。僕の方へ振り返りもせず。
次の日。
奏太くんがたくさんの本を持ってきた。僕が家ですることがないと言っからだ。ライトノベルという小説だった。読んだことがなかったので嬉しかった。沢山あったので返すのに時間がかかると言ってから本を読み始めた。面白い異世界転生物の小説だ。僕もこんな主人公に憧れる。強くて、かっこよくて、即決できる、仲間思い。こんなふうに僕もなれるかな?
6週間がたった時、僕と奏太くんは一緒に教室に行こうと決心した。と言っても奏太くんは特に思うことがないらしい。僕はこの時から怖かった。
次の水曜日に一緒に教室に行くことになった。
「辛くなったらいつでもおいで」
保健室の先生に言われてありがとうございました、と言ってから部屋を出た。
次の日、水曜日だ。緊張した。体が重く、久しぶりに朝の七時に起きた。入念に体中を綺麗にした。髪の毛もバッチリ。今日はいつも以上に気合が入っている。何だか通学路を歩く足が軽い。
教室の前まで来た。あとはドアを開けておはようございと言うだけ、言うだけだったのに、教室のドアが開けられない。トイレに逃げた。30分くらいして、頬を叩いて気合を入れた。6週間前にこんなことになると思えば学校に行ったのにと、今更落ち込む。
ドアを開けようとする。開けられない。
怖い。
ドアに手ををおいて離す、その繰り返し。
怖い、怖かった。この日のことを僕は今でも思い出す。
怖い。
教室に入れない。
泣きそう、そう思った時
ぽんと肩を誰かに叩かれた。驚いて振り返る。
―――そこに居たのは
「はよ」
そこに居たのは、奏太くんだった。
「お、おはよ」
奏太くんはドアを軽々と開けた。凄い、と思った。ドアを開けるのにこんなに勇気がいる僕が変なのかな?
「お、おはようご………ざいま、す」
だんだんと語尾が小さな声になっていく。
「はよざまーす」
大きな声、奏太くんは凄い。
教室を見渡す。
怖い。
「お前何休んでんだよ」
「は?来んなよバカ 」
「だれ?」
そんな声が頭の中で響いた。
怖い。
目をつぶる。
怖い。
ぽん、と背中を叩かれた。まるで除霊されたように軽くなった。
――――ありがとう、奏太くん。
目を開ける。
「えまくーん、おはよー」
「久しぶりじゃん」
「大丈夫?元気?」
「おはよー」
「何休んでたんだよ(笑)ずるいぞ」
「ゲームしてた?」
「何時間寝た?記録は?」
「勉強教えてやるか?数学3点のこの俺が」
「ばか、おまえ、元気か?」
涙が出た、自分勝手に学校を休み、みんなに迷惑かけたかもしれないのに、僕は嬉しかった。
次の日、僕は自分の机に座っていた。