第四話:M…P?
オルフレン村を後にした私は、ケペナの森を歩いた。
やはり、ここは昨日と同じくプレイヤーが昨日程ではないが沢山いて、モンスターは出て来ないと踏んでいたのだが、なんやかんやで計十匹程モンスターと戦っていた。
「……いつ見ても多いな……これじゃあ、昨日モンスターが見当たんないのも頷けるよ…」
嘆きながら森を見渡すと、それはまるで癒しをくれるかのように、優しく揺れ、心に安らぎを与えた。
確か、アティクタでは、六つの大陸が存在し、それぞれに色んな気候があるから、季節を楽しむのにはもってこいだとか。
そんな感じにぼーっとしていると、可愛らしい聞いた事のある鳴き声が聞こえた。
黒狼だ。
そう言えば昨日、戦って気づいたことがある。モンスターには属性等の表示がされておらず、ノーマル系かと思っていたら、電撃系の攻撃を仕掛けて来たのだ。
けれど、雷。土には弱い。
「岩石!」
即座に詠唱し、攻撃した。が、
「キウ!」
と鳴き、身震いするだけで、消滅はしない。まぁ、あちらのレベルは3。こっちは1。一撃で仕留めることは出来ない。ましてや私が今使っているのは、初級中の初級。
「岩石!」
しかし、やはり弱点は弱点。二発目で黒狼はポリゴンとなって消滅した。
「……なんか…呆気ない…。」
確かに先程のモンスターのレベルもレベルだが、やはり呆気ない。
「単体じゃなくて群れがいいな…経験値も手に入るし。」
そう言いながら、森を抜けた。
すると、そこには広々とした草原があった。
オスタルト草原
森と同じモンスターが出るが、ポップ数は倍だとか。
モンスターとの遭遇を期待しながら周りを見渡す。
と、十メートルぐらい離れた所に鴨の子供の姿が見れた。しかし、通常の鴨と違い、少しカラフルだ。名前を見ると、子鴨と書かれていた。レベルは3だった。
「ダゥ!」
どうやら、私を見つけたらしく、近づいて来た。が、
「ダフッ!」
近づく前に、攻撃を仕掛けて来た。刃のような形に集合した風。
「げぇ…風属性か…」
ヒョイっと攻撃を躱わし、後ろに下がり、こちらも攻撃を開始。
「電撃!」
しかし、風属性の弱点が何なのかわからないので、風以外の属性でやっていた。
子鴨はそれを諸に受け、体を揺らすも、私目掛けて突進した。
「っと!危ない危ない。」
無論、まだまだモンスターのレベルも低いので、躱わす。
「氷塊!」
即座に攻撃、相手のHPバーを見る。
あと、三割っ!
「岩石!」
勢い良く出た約二十センチの岩石が子鴨に当たり、HPバーは0に。そして、消滅。
「あ~。今のは疲れるわ~…」
肩をコキコキ鳴らしながら、出て来たウインドウを見る。
「……あれ?」
ウインドウに獲得経験値が出て来た、瞬間、人口ボイスが頭の中に響いた。
『レベルが2に上がりました。』
と。
すると、何やら色々と上がっていたのだが、見ることが叶わなかった。
いきなりの突風により、吹き飛ばされたのだ。
「いだっ!?」
勢い良く吹っ飛ばされ、地面に転がった。
「……誰だよ!?って……鶏?」
素早く起き上がり、突風が来た方向を見ると、2匹の緑色の鶏がいた。森の中でも戦った相手だ。モンスターの上には風鶏、レベル4と書いてある。そして、二匹の鶏は挑発しているかの如く、変な躍りをしていた。
「っ!!」
私はその躍りが癪に障り、今まで使っていた魔法の一ランク上の魔法を詠唱した。
「地水凍れ!…あれ?」
しかし、魔法は発動しなかった。
「……なん…で?」
ウインドウを即座に開き、見てわかった。
「……氷結。」
その瞬間、二匹の風鶏の足元が凍り、慌てふためく。
「……はぁ…まさか最後のも言わないといけないとか、萎えるんだけど。…火の玉よ散れ!散弾!」
モンスターの上に沢山の火の玉が降り注ぎ、二匹のHPバーが容赦なく無くなった。
土埃が消え、ウインドウを見ると、獲得経験値が表示されていた。そして、『レベルアップまで後32』と書いてあった。
「やれやれ。ハイリンに早く行くか。」
少し駆け足でオレンジ色の空の下を走った。
「お?あれがハイリンかな?」
二十分掛けて漸く集落らしき影が見え始めた。
「にしても広いな~」
風鶏の戦闘からモンスターに何匹か遭遇し、時間節約のために駆け足でいたが、もう空は暗い。
「なんか…夜にしか出てこないモンスターとか出てきそう…」
ブルっと身震いし、腕を擦る。
すると、目の前に光った何かが落ちた。
「グァアア!」
黒狼よりでかいモンスターの爪だった。
「へ?……ひっ!?い、いやぁぁ!?」
お化けが出たかのように驚き、叫び、後退。
バクバクいっている心臓を落ち着かせ、モンスターを見た。
刃狼レベル6
「っつ!地水散れ氷結!」
黒狼に似ている事から、雷属性だとわかった途端、氷結を発動。
刃狼の動きを止め、連続で詠唱した。
「岩石!岩石!岩石!岩石!岩石!」
弱点を突いたおかげで刃狼のHPは一割を切った。
「グァ!」
しかし、そこで氷結が破られ、刃狼が物凄いスピードで突進して来た。
「ひっ!岩石!」
しかし、何も出てこなかった。
「え?」
その瞬間、刃狼が目の前にいた。
まるで、時間が遅くなったかのようにゆっくりと刃狼が口を開け、目の前が明るくなった。
その瞬間、私の右上にあったHPと表示されている緑色のバーが一気に0になった。
そして、下にはMPと書かれていて、少しだけ残っていた青いバーの上に1と表示されていた。
……マジックポイントか!
そして全てが真っ黒になり、無機質な声が響く。
『蘇生ポイントに移動します。なお、レベル20に達していないので、死亡罰則はありません。』
そして、少し前までいたオルフレン村に戻っていた。