催涙雨
今日は、七夕。
七夕の夜は、一年に一度、天の川を渡り、彦星と織女が出会う。
「今夜は雨ね。」
「雨だと、彦星と織姫は会えないね。せっかく、一年待ったのに。」
「会えないの?」
「雨が降ると天の川の水かさが増し、織姫は橋を渡ることができないから、2人は会えないっていう話だよ。その雨は、催涙雨って、いったかな。織姫と彦星の涙。」
「そうなんだ。会えないんだ。」
カンナは遠くを見つめて言った。
「休憩しない?お洒落なカフェあるし。」
「ううん。そのまま、鶴岡八幡宮に行こうよ。七夕なんだから。」
さすがに混んでいる。
「混んでたね。」
「暑かった。」
北鎌倉へと向かう。
「なにをお祈りしたの?」
「ナイショ。」
「あ~。」
「光のマネだよ。」
会話が途切れ、しばらく無言のまま、歩く。
しばらくして。
「カンナ。」
「なに?」
「今度、天の川を観にいかないか?そして、短冊にねがいごとを書いて。」
「それって、1年後の話?」
「生まれ育った街の七夕って、8月7日なんだ。七夕祭りもあるし。」
警報音がなり、遮断機が降りる。
目の前を横須賀線が通過していく。
遮断機があがり、警報音が鳴り止んだ。
「少し考えさせて。」
再び、雨が降り始めた。