七夕会
毅はこなかった。
2人で海まで歩く。
ぽつり、ぽつりと降りだした雨も海につく頃にはあがり。
光が差し始める。
「天使の梯子ね。」
「うん。」
しばらくの間、2人で海に降り注ぐ光を眺めていた。
「今年の七夕会、2人だけだったね。」
カンナは何にも答えない。
しばらくして、カンナから。
「せっかくの七夕だから、鶴岡八幡宮にいかない?」
「うん。」
若宮大路を歩き始めた。
「聞いていい?」
「なに?」
「あの日、ハルの結婚のこと、既に知ってった?」
「ハルから聞いてた。会社の先輩、ニューヨークにいくことが決まっていて。ハルにプロポーズをして。ハルはその答えを急がないといけなくて。」
「やっぱり、知っていたんだ。」
「最近は、ハルと連絡をとってるの?」
「結婚式はいつだとか、ニューヨークに住むとかの連絡はもらってる。でも、あの日以来、会っていないし、相談みたいなことはない。」
「そうなんだ。」
「毅と連絡は?」
「あの日以来ないよ。なんて連絡していいかわかんないし。七夕会のお誘いが久しぶりの連絡。」
「それが、『了解です。』の一言だもんな。」
「ほんと、失礼しちゃう。そのうえ、ドタキャンだもん。」
「光は毅と連絡とってるの?」
「いいや、全く。」
僕はカンナの顔をまじまじと見たけれど、表情から心情を読み取ることはできなかった。