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海まで
「久しぶり。」
「だね。」
「毅。都合が合わないから、これないって。」
「うん。さっき、メールきた。」
毅が本当に都合があわないからこれなかったのかはわからない。
「どこにいく?」
「そうねえ。」
「海まで歩く?」
「うん。」
若宮大路を歩き始めた。
「やっぱり、暑いね。」
「だって、夏だもん。」
空にはどんよりとした雲。
いまにも雨が降り出しそうだ。
昨年の11月の終わりのこと。
若宮大路を由比ガ浜から4人で歩いた。
冷たい雨の中、傘もささずに。
そのことを思い出していると。
カンナが振り返る。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと。」
「あの日のこと、思い出していたんでしょ。」
「うん。」
ぽつり、ぽつり、雨が降り出した。