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たった一人の

 ノートの知る騎士、その最高峰の近衛騎士団でさえ、魔法騎士ではなく魔剣騎士であり、一般の剣士にしても魔剣士はいるが魔法剣士と名乗る者は居ない。


 あれから5年が過ぎ15歳になったノートだが、未だに剣士と名乗っていた。


 実際は魔法剣士なのだが面倒なのでそのままである。

 そも大した理由でなく面度だからというのがノートの理由である。

 世の中に魔法剣士が存在しないのだから仕方が無い。


 流石に最低ランクの冒険者ではなくなりFランク冒険者として登録はされている。

 だがメインの仕事は未だに薬草の採取を続けているのがノートのノートたるところだ。多分にミラ姉さんの影響を受けているようではあるが。

 もっとも採取内容がより森の内部へと移り、希少な薬品の原料を探し出してくるので更に重宝されているのではあるが……


 町の人達のお陰で完全な人間不信とまではならなかったものの、未だにパーティを組まずソロとしてやっているのを回りの大人達はゆっくりと見守っていた。いつかノートもPTの一つも組むだろうと。

 そんな中で最も積極的にパーティーを組みなさいと言ってくれるのは姉代わりのミラであったりするので、周りの男共はノートといつでもパーティーを組むぞと言ってくれていたりするのはご愛嬌だろう。


 ノートが未だ一人でやっている理由が別にあると知らないからなのだが、それは致し方ない。

 インベントリや物質鑑定眼、オリジナルの魔法、おいそれと喋れない内容もあるのだ。


 心配してくれる大人たちの為にもと思い、ノートはこれまでの5年間をインベントリに代わる空間魔法理論の完成に全力を注いでいた。

 自分しか使えないから問題になるのであって、誰もが『所謂アイテムバック』を使えれば誤魔化しもできるからだ。


 実は既に先月、晴れて完成した魔法理論によって製品化する事ができる様になったのだが、販売するかどうかが問題だった。


 いざ完成となって考えたのが販売されたらどうなるかである。


 理論の前に考えろと言われても、出来てはじめて思い立ったのだから仕方がなかった。

 考えれば考えるほどに厄介な代物だった。

 なにせ物流の変化だけに事は留まらない。軍事や経済の全てに関わるのだ。

 身の危険すらありえる。


 ノートの下した決断は数量を限定し、さらに『遺跡からの発掘品』として偽装工作と、自分の正体を隠しての別の都市での販売だった。

 万組合やこの町の商人や工業組合は信用できる人ばかりだが、その秘密を狙う者が出る可能性を考え、町の知り合いを危険にさらす事を良しとしたくない為の措置だった。

 魔法で姿を変えて、一箇所で捌くのではなく商人等に高値で売りつけていった。

 噂が噂を呼んで遺跡発掘の依頼がそこらかしこで発生したのを知ったときに後悔はしたが反省はしなかった。

 高値で売り捌くのと、容量を小さくした事で軍事利用などの阻止と波及を止めた代わりに得たのは、とてもではないが一生で使えないだろう金額の富だった。


 働きたくないで御座る! とやれば一生働かないで済むだけの財ではあったが、面倒なので町への投資を偽名で行いつつ、運営する商会を立ち上げて売り上げの一部を孤児院設立や万組合の保険組合設立に回すなど陰で活動を行った。



 こうして何とか2年後、一流ならば持っていても変じゃないアイテムバックが流通した。

 漸くノートは仲間を得ても問題は魔法だけという状況になった。


 その間にミラが剣士と結婚したりと色々あったのだが未だにカウンターにミラはいた。


「もう遺跡に行けるほどの冒険者にノートがなったなんて感慨深いわ」


 懐かしむようにミラがいうのも仕方が無いかもしれない。

 普通の冒険者は15歳ぐらいからの活動が普通であり10歳から活動してたノートが特殊なのだ。

 とはいっても未だにソロの冒険者でクラスはB級、そこそこの実績はあれども大規模討伐や高位ランクの魔獣などの討伐は臨時パーティーでしか組んでいなかった。



 今日も今日とて山の麓への依頼を受けて街道を進んでいた。


「1キロ先で山賊が馬車を襲ってるわ、護衛も数人しか残ってないわよ」


 とノートに語り掛けたのは相棒になったシルフィと呼んでいる契約精霊で、風だからシルフィだろうという安直なネーミングだった。

 まあ本人が大層気に入っているらしいので問題はないのだろう。


 パーティーの前に風の精霊とはどうなんだ? と突っ込みが入りそうだが、シルフィのお陰でノートはBランクになれたといっていい。

 特に今回のように遠く離れた変事や周囲の異常についてシルフィが知らせてくれる情報には大変助かっていた。


「シルフィ補助を頼む」

「まかせて!」


 補助魔法を常に自分で使うよりも精霊に頼んだほうが効率的に使える。その分自分の肉体強化に集中できるからだ。


「見えた! 助太刀する」

「おお! 頼む」

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