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兄め!

 私の兄は高校三年生だ。私の兄の部屋はとても混雑している。天井までの高さがある本棚をぎっしりと埋める漫画本に、床にはアニメのDVDやアニメのヒロインのフィギュアが、足の踏み場を見つけるのが困難なほどに散乱している。そして部屋のBGMは、テレビから流れてくるアニメヒロインの萌えるような声だ。そう、兄は世間でいうところの、アニメオタクである。兄め!

 もともと兄は、好きなことに集中すると周りが見えなくなる性質で、複数のことを同時に出来ないのだ。そのかわり、一度興味をもったものには、異常なまでに執着する。今の兄にとって、それがアニメである。

 兄は奥手で、人と会話するのが苦手だ。というより、まわりの人間にあまり関心が持てないのだ。常に自分が、まわりからどう思われているのかが気になっているようで、まわりの人間そのものに気を配る余裕はないらしい。兄め!

 しかしそんな兄にも、かつては彼女がいた。告白してきたのは彼女の方らしい。兄よりひとつ下の後輩で、私と同級生だった。ひとつ屋根の下で暮らしている私には、正直兄のどこを好きになれたのか理解できなかったが、確かにまわりから見れば、ルックスも悪くないし、おとなしくて優しい人なのだろう。しかしその交際は、わずか三ヶ月で幕を下ろした。原因は、ロックバンドで例えるなら『音楽の方向性の違い』というのか、兄と彼女の会話のズレや趣味や考え方の違い、心が通じ合わない等、さまざまな不満が彼女に募ったらしい。彼女に振られたあと、兄はこう言っていた。

「三次元の人間は思い通りにならないし、醜いね。反吐がでる」

 兄め!

 彼女に振られたショックで、兄には三次元の人間に対する恐怖心が植え付けられ、人間不信に陥った。そして兄は完全に二次元の女にしか興味を持てなくなってしまった。高校も不登校になり、両親や、妹である私ともあまり口を利かなくなった。兄は完全に心を閉ざしてしまった。


 ある日、兄が外にアニメヒロインのフィギュアを買いに行った時のこと。信号無視した車が、横断歩道を渡っていた兄をはねた。幸い兄の命に別状はなかったが、入院を余儀なくされた。

 入院生活の間、兄は病院のロビーでフィギュアで遊んでいた。すると、五歳か六歳くらいの女の子が、兄が持っていたフィギュアに興味を示し、目を輝かせて兄に話しかけてきた。

 無邪気に笑う女の子に、兄は持っていたフィギュアをプレゼントした。女の子は大喜びで、それをきっかけに兄になついたそうだ。

 その後も兄は、自宅の部屋にあったフィギュアを私にもってこさせて、それを女の子にプレゼントした。はしゃぎながら笑うその女の子に、兄から笑みがこぼれた。


 退院後、兄の部屋からはフィギュアもDVDも無くなっていた。高校にも行くようになり、どういうわけか兄は保育士を目指すようになった。兄め!

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