最下位との出会い
僕、田中は今凄く困っている事がある。
それはー
異世界と現実世界の最強戦士宮本くんが今朝死んでしまったからだ。
現実世界と異世界が合体して3年間、僕はずっと宮本くんと旅をしていた…
洞窟、孤島、草原、海岸、色々な場所に行って、色々なアイテムを宮本くんと一緒に探して、時には難関なダンジョンへ飛び込み、
ボス戦で一緒に戦ったりもした。
いや
僕は戦ったりしなかった。
ずっと宮本くんの背中に隠れ、決着がつくまで宮本くんに甘え、戦わないでいた。
そのくせ、経験値をちゃっかりもらい、時には僕にレアアイテムがくることもあった
全ては宮本くんのおかげ。
宮本くんがいなかったら僕は今頃、こんなレア装備をまとってはいないだろう。
今は僕も一人前になり、宮本くんと一緒に戦っていたクエストより少しランクの低いダンジョンで、一人で戦うことができるようになった。
そして今僕は難易度362のペドル海岸にいる。
雑魚モンスター達のレベルが100をこしてしまう海岸で、ここに来るプレイヤーは皆無だと言える。
そんなダンジョンのモンスターでさえ、俺は何の努力なしに倒してしまう。
「これも全て宮本くんのおかげ…か」
自虐的に聞こえてしまうが、全て事実だ。
このダンジョンに入って1時間が経過した。
そろそろボスエリアに到着してもおかしくない距離まであるいたので、僕はそこらへんの
石の上に乗っかり回復薬でHPを満タンにした。
この異世界において、ボスが現れるタイミングをいかに見破るかが、アマチュアとプロの差になっているのが事実だ。
まぁ、僕は全て宮本くんにコツを教えてもらい、努力してここまで見極める事ができるようになった。
その時だったー
僕がモンスターを討伐していた方角から足音が聞こえた。
ここまでこれる人間は、世界ランキングで言うと1位から約40000位のプレイヤーだろう。
まぁ、40000位と言ってもプレイヤーはこの世に生きる70億人なので、上位のプレイヤーだと言えるだろう。
今からやってくるプレイヤーは一体どんやつなんだろうか。
興味がわいたが、その分緊張もした。
ザクザクと足音が近づいてくる。
次の瞬間僕はその人物の姿を目撃し、驚愕した。
最初に目にしたのは赤いマントのような布だった。次にプラスチックのような、通常デザインの鉄の鎧に、腰には市販な包丁のような小太刀。
そんな駆け出し以下の装備を身につけたボブカットの少女が、ゆっくりと歩いてくる。
「な、なんだあれは…おもちゃの兵隊さんか……?」
「誰がおもちゃですかぁあぁあぁあ!!」
距離はかなりあったがどうやら俺の独り言が聞こえてしまったらしく、その少女は市販の包丁(仮)を突き出し、走ってきた。
「うぉおぁあ!!」
という悲鳴とともに、彼女は僕の装備めがけて包丁で物理攻撃をしかけてきた。
「あ……」
予想通り、壊れたのは僕の装備ではなく、市販の包丁(仮)であった。
「まぁ…こうなるわな」
「こ、これでは……ボス戦に挑めないじゃないですか!」
「いや、お前そのままボス戦挑んでたら死んでたぞ……むしろ感謝しろよ……」
「せっかくこ個まで来たのに……」
「俺が全モンスターを討伐したからお前はここまで来れたんだろうが……」
まぁ、僕も勇者宮本くんのおかげでここまでこれたんだけどな…
「あ、そういえばお前、プレイヤーランクいくつなんだよ。そんなへぼい装備でここのダンジョンに乗り込むやからはいないぜ。縛りプレイでもしてるのかよ」
「へ、へぼいとは何ですか!!あれは私なりに考えて装備したオリジナルの装備なんですよ!?」
どうやらこいつは別次元の人間らしい。俺は一瞬でそう理解した。
けど剣の振るい方や、あの殺気、それに身のこなし方……どれをとっても最上級のレベルだった。
もしかしたらプレイヤーランクはそこそこ高いのでは?
「あ、言い忘れてましたけど、私のプレイヤーランクは70億11万4234位の、三沢まりりんです」
「……………へ?」
こうして1位は最下位と出会うのであった。