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席替え*honey  作者: 春隣 豆吉
席替え*honey
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ちなちゃんの考察-その2

時期は「2月の帰り道」のあとくらいです。

ちなちゃん視点です。

 鈴川先生が3学期は席替えをしないと言ったときの沙和と島崎くんの顔つきは対照的だった。

 口には出さないけど、傍目にもがっかりしていることが丸分かりの沙和。

 なんだか嬉しそうな顔の島崎くん。

 そういえば鈴川先生って放送部の顧問よね。で、島崎くんは放送部の部長。でも席替えの話題なんて出るだろうか・・・島崎くんならさりげなく出しそう・・・いや、出すな。

 3学期は短いからクラス委員もくじを作るのが大変だと言ってましたよ~。なくてもいいんじゃないかなあって声もあるんですよ~とか。吹き込むことは決して不可能じゃない。

「まさか先生に働きかけたのか?」と思わず独り言を言ったら、沙和に聞こえたらしく何のことかと聞かれたけど、そこはうまくごまかした。

 そして期末試験あたりから沙和が変だ。

 もっとも、沙和が変なのは島崎くんが隣の席になってからはいつものことなんだけど。

 だけど、今回は話しかけられて動揺するのが減った矢先で、自分の手をまじまじと見ては、ときどき島崎くんのほうをちらっと見て本人と目が合いそうになると視線を外すという、なんかうっかり目に入ったらこっちが「ぬわわああ~」とくすぐったくなる。

 いったい、何があったんだろう。こっちの精神状態にもよくないから聞きだすしかないのかな。

 でも人の恋愛沙汰に首突っ込んで馬に蹴られるのは嫌いなのよね。

 どうしようかなあ・・・と思っていたら、試験が終わった日に沙和から帰りにケーキ食べに行かない?と誘われた。


 駅の近くにあるケーキ屋は1階が販売店舗で2階がカフェになっている。野菜のケーキや季節のタルトが美味しいと評判で、値段も手頃なせいか私たちみたいな女子高生も「ちょっとした贅沢」としてたまに立ち寄ることが可能な店だ。

「期末も終わったから、あとは春休みを待つだけだね~。いよいよ受験勉強も本格的にしないとね」

「そうだね。内部試験って基準が厳しいもんね」

 私も沙和も第一希望は系列大学進学だ。でも希望者全員が進学できるわけじゃなくて、内部試験と書類選考の両方で合格しないといけない。はっきり言って一般受験より厳しい。

 しばしケーキを食べることに集中していたんだけど、沙和は何事かを考えているようでケーキにあまり手をつけてない。

「沙和、季節限定のいちごのタルト食べないの?」

「ううん、食べる・・・あ、あのさ、ちなちゃん」

 どうやら私に相談したいことがあるようだ。私はケーキを食べていたフォークを置いた。

「あのさ、ちなちゃん。男子が女子と手をつなぐときって、つきあってる以外で何かあるのかな」

「は?!何をいきなり。沙和ったらいつのまにそんな甘酸っぱいシチュエーションが」

 そう思わず口にしてしまった私を責めないでほしい。

「ち、違うよ。参考に聞きたいのっ」

「いったいどんな参考よ・・・つきあってる以外で手をつなぐ・・・フォークダンスとか?中学のとき授業でやらされてさー、あれは最悪だったわよ」

 あー、今思い出してもあの体育教師がなぜにフォークダンスをやらせたのか意図がわからん。

 それにしても、男女が手をつなぐシチュエーションねえ・・・。

「・・・沙和、なにかあったんでしょ」

「うっ・・・そ、それはその」

 言葉に詰まる沙和を見て、私が連想するのはただ一人だ。島崎くん、沙和といつの間に手をつなぐシチュに持ち込んだんだ・・・やつはやっぱり「策士」だ。

 でも、いきなり手つなぎはちょっとどうなのよ。私の親友をこんなに動揺させてくれちゃって。

 しょうがない、悪役を発動させちゃおうかな。

「あとはほら、夜道が危ないからって気を遣ってくれる場合もあるんじゃない?レディファーストみたいな感じでさ」

「あ。なるほど」

「登山でも手を差し伸べたりするじゃない。手助けってことで」

「なんだー、そっか。そういうことか」

 沙和は私の答えに納得したらしく、元気よくいちごタルトを食べ始めた。


 さて、島崎くん。あなたの鈍感なお姫様は親友である私の答えに納得しちゃったよ。

 頑張って挽回してみせてよね。


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