ちなちゃんの考察
「2学期は時間切れ」あたりを、ちなちゃん目線で。
同じクラスの島崎くんは「放送部の王子様」という冗談のような別名の持ち主だ。普通なら腹かかえて王子?ありえね~って笑っちゃうレベルなんだけど、彼の場合は「あ、なるほどね」というところに落ち着いてしまうのがすごい。
というのも、島崎くんの声は“いい声”なのだ。確かにあの落ち着いた声は一種のヒーリング効果というか、なんとなく静かに聞きたくなる。まさに適材適所。
見た目はクラスの男子よりちょっと落ち着いたたたずまい。そして本人の“いい声”に見合う雰囲気なものだから「放送部の王子様」はクラスのなかでも独特な人、と言う位置づけになっている。
この島崎くんのことが苦手なのが、私の親友である北条沙和だ。どうして苦手なのかは本人も分からないらしいけど、島崎くんだけは避けている。
もっとも島崎くんと接点がないからしょうがないよねえ・・・・と思っていたら。
夏休み明けの席替えで、沙和は島崎くんの隣の席を引き当てたのだ。ため息をつく沙和を、私も近くの席だからって励ましたけど、その反面ちょっと面白がってもいた。もしかしたら、何か楽しいことになりそうな予感がする。
近くの席になって気がついた。どうやら沙和は島崎くんの声に緊張してしまうらしいと。そして、その反応を島崎くんが楽しんでいるということを。
沙和は島崎くんと普通に話すことができなくて、話しかけられれば短い返事をしてるみたいだけど、たいていは私を巻き込む。
それは全然いいんだけどさ・・・・沙和、あんたは気づいてないかもしれないけど王子様の視線は私のことを「邪魔」って言ってるよ?
それを無視して会話に参加している自分・・・すごく悪役ちっくなんですけど。でも私、悪役って嫌いじゃないのよね~。やっぱり王子様より親友が大事だし。
そして2学期も終わりの日。沙和とお昼を食べてちょっとぶらぶらして帰る約束をしていたのに、顧問の先生から呼び出しが入った。
沙和に教室で待ってもらって職員室へ行くと、顧問の先生から文化祭用に描いた作品を年明けの展示会に出さないかという話をされた。
そっかー、来年早々に展示会あったんだっけ。新作描こうと思ってたけど文化祭用のも気に入ってたからそっちでもいっか。でも新作も描きたいな~・・・なんて話をしていたら思ったより長くなってしまった。
慌てて教室に戻って「ごっめーんっ!!沙和!!」と扉を開けたら・・・・そこには沙和と島崎くん。沙和は私のほうを見てるから気づかないみたいだけど、王子様、にこやかだけどなんだか怖いです!!
私はとっさに「やばい!!」と感じてとっさに下を向いて息を整えるフリをすることにした。
「ちなちゃんが扉を開けたときに島崎くんが“時間切れ”って言ったの。なんだったんだろ、あれ」
「・・・は?“時間切れ”?」
沙和が合唱部の副部長になったのを島崎くんが“なるほど”と言ったらしく、理由を聞こうと思ったら私が扉を開けたため、島崎くんが小さい声で言ったらしい。
「“なるほど”なんて言われたら気になるでしょう?だから私、その理由を聞きたくて」
「・・・・ん?それって、もしかして沙和から島崎くんから聞いたの?」
「そうだよ。そしたら島崎くん一瞬驚いてたよ。なんでだろうね」
パスタ屋でお昼を食べているときに沙和の話を聞いて私はパスタを吹きそうになった。
そりゃ驚くだろうさ。今まで自分から話しかけて会話が成立してた相手から、質問なんてされたら。島崎くんちょっと嬉しかったのかも・・・ということは、私は会話の邪魔をしたってやつですか。私、下向いて正解!!
ううーん、もしかして・・・島崎くんって沙和の反応楽しんでるうちに気持ちに変化が起こったのか。沙和のうろたえ具合は申し訳ないけど、あれは見ていて相当楽しい。
「あーあ、3学期の席替えで席離れるといいのに~。常に緊張してなきゃいけないなんて嫌だよお」
うなだれる沙和には悪いけど、島崎くんなら裏工作してでも隣の席になりそうな気がするよ。クラス委員、確か島崎くんと仲良しさんだしね。
だけど王子様も多少の苦労は必要よね?
読了ありがとうございました。
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視点を変えて主人公の親友:ちなちゃん(フルネームは村上千那)目線を
思いついたので更新してみました。
島崎くんのキャラがなんか自分がイメージしたのと
違う路線になってる。
廊下ですれちがうときにピースする感じにしたかったんですよ。
(某ゲームの主題歌ちっくに)
島崎くん、ピースじゃなくて耳元で囁きそうだ(汗)。
本当に小説は書き始めるとどうなるか分からない・・・それって私だけ?