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席替え*honey  作者: 春隣 豆吉
席替え*honey
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後夜祭と中庭のベンチ

 島崎くんと手をつないだまま到着したのは中庭だった。

「あの、校庭に行かないの?」

「うん、人が多いから北条さんとはぐれちゃうかもしれないし。それに校庭に集合は強制じゃないしね」

 うちの学校の後夜祭は、校庭で生徒会主催の表彰などが行われるので、たいていの生徒は校庭に集合する。ただ、強制ではないので基本的に学校から外に出なければどこにいても自由だ。

 だから美術部みたいにさっさと片づけを済ませたい人たちは、今頃教室や部室を片付けていることが多い。

 昨年までは、ちなちゃんの片づけを手伝いながら(といっても、椅子を片付けたりとかだけど)美術室で校庭で打ち上げられる花火を見ていたっけ。島崎くんはどこで花火をみていたのかな。


 いつもなら誰かいる中庭はとても静かで、校庭から流れてくる軽快な音楽や生徒会長の話す声や皆のざわめきがはっきりと聞こえてくる。

 私たちはお気に入りのベンチに並んで座ったけど、手はつないだまま・・・もう、はぐれたりしないのに。手を離してって言ってもいいかな。

「島崎くん、あの手を離しても・・・」

「やだ。もう少しだけ」

 島崎くんがちょっと拗ねた顔をして「やだ」って言うなんて。落ち着いてると思っていたけど、意外と子供っぽいかも。

「島崎くん、子供みたい」

「子供っぽい俺はいや?」

「ううん、嫌じゃない。なんかかわいいかも」

「かわいいって男に言うこと?かわいいのは北条さんのほうだよ」

「えっ・・・・わ、わたし?」

「うん、北条さんはかわいい」

 かわいいなんて、面と向かって男の子から言われたことない・・・すごく恥ずかしいよ。両手で顔を押さえたいけど、私の右手は島崎くんの手のなか。

「し、島崎くん、面と向かって言われるとすごく恥ずかしいんですけど」

「俺は北条さんが好きだから。きっとこれからもかわいいとか言うし、慣れておいたほうがいいよ?」

「は・・・・?」

 今、なにかすごいことをさらっと言われたような気がする。島崎くんが私のことを好きだって言わなかった?

「あ、あの島崎くん。今、あの、わ、わたしのことを・・・」

「うん、俺は北条さんが好きだよ。北条さんは俺のことをどう思ってるのか教えてくれない?」

「わ、私は島崎くんのことを・・・・」

 そのとき、パーンと大きい音が鳴り響いた。空を見上げると大輪の花が咲き周囲が少しだけ明るくなる。校庭のほうから“おお~”とざわめく声と大きな拍手が聞こえる。

「・・・まったく、肝心なところで邪魔してくれるよ」

 島崎くんがぼそりとつぶやく。その様子はやっぱり放送部の王子様じゃなくて、ちょっと拗ねた男の子だ。

 落ち着き払ったいつもの島崎くんも、こんな子供みたいな島崎くんも、私はどっちも好きだから。少しだけ・・・いつもされている仕返しをしてもいいかな。

 私は島崎くんの耳元に内緒話をするように口を寄せた。それに気づいた島崎くんが驚いた顔をした。


「あのね、私も島崎くんのこと、いつの間にか好きになってたよ」

 すると島崎くんは空いている右手でなぜか口元をおさえて・・・固まってる?!

「島崎くん、どうしたの?!」

「・・・北条さん、とても嬉しいけど耳元は不意打ちだよ・・・」

「いつも私の耳元で島崎くんが言うから、仕返しだよ」

 私がふふっと笑うと、島崎くんも「やられた」と言って笑う。そして改めて、私のほうを見てとても真剣な顔をした。

「北条さん、俺とつきあってくれますか」

「はい。よろしくお願いします」

 ここでまた花火が上がった。

「今度はいいタイミングで上がったな」

 島崎くんがとても嬉しそうに言い、私たちは顔を見合わせて笑いあった。

読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


これで「席替え*honey」は完結です。

活動報告で記載したように、ちなちゃんを書くかどうかで迷っていたのですが、

やはりここはベタな展開らしく、2人のハッピーエンドで閉めたいと思います。


お気に入り登録していただいた方、感想を書き込んでくれた方

この作品を楽しんでいただいた方全てにお礼を言いたいです。

長い間お付き合いいただいて、どうもありがとうございました。

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