表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
席替え*honey  作者: 春隣 豆吉
席替え*honey
23/32

朝錬とタイミング

 ちなちゃんに言いくるめられて島崎くんを誘うはめになってしまった。

 いくら朝錬に行く時間と島崎くんの登校してくる時間がほぼ同じだとは言ったけど、どうやって切り出せばいいのかな・・・と考えていたら、もう3日が過ぎた。


「あ~、どうしよう・・・」

 はああ~、とため息をついて学校までの道を歩く。毎朝、先に歩く島崎くんを見かけると私は少し走って追いつく。そこで朝のおはようと少し雑談をするだけでちょっと幸せだから、文化祭のことが言い出せない。

「おはよう、島崎くん」

「おはよう、北条さん。今日も朝錬?」

「うん。文化祭の朝まで朝錬は続くんだ。島崎くんは勉強だよね?」

「そう。いつものとおり」

「そ、そっか・・・・」

 ここで“文化祭、時間があえば一緒に回らない?”ってどうして言えないんだろう。気持ちを自覚してなかったら、もっと気軽に言えたのかな。

 でも、ちゃんと言わなくちゃ。私はカバンを持つ手に力をこめた。


「あのさ」「あのね」

 私たちは思わず顔を見合わせた。

「・・・島崎くんから、どうぞ」

「俺は北条さんが何を言いたいのか、のほうが気になるんだけど」

 なんか、とてもきっぱりと言われてしまった。朝の勉強時間を私の用事で縮めてしまうなんて出来ないし・・・よ、よしっ。きっとこれはチャンス。

「あの、島崎くんは文化祭って誰かと回る約束をしてるの?」

「校内限定日は同じクラスのやつと回る予定だけど、一般公開日は放送部で総合受付を引き受けるんだ。北条さんは?」

「私は合唱部の発表会がある時間以外はちなちゃんと回る予定だよ。あ、あの島崎くん。一般公開日の受付は何時から担当するの?」

「俺はお昼から15時までなんだ。一番混雑する時間だから部長の俺がいいだろうってね」

 15時まで・・・確か、ちなちゃんの受付時間は15時からって言ってた・・・。

「あ、あああの島崎くん、ちなちゃんが美術部の作品展の受付を15時からするの。合唱部の発表会も15時までには終わるから・・・わ、私と一緒に回れない、かな」

 よ、よしっ!ちょっと下向いちゃったけど言えた、ちゃんと言えたよ、私!!はっ、でも島崎くんは・・・私は顔を上げて島崎くんを見ると・・・えっ?!なんか固まってない?!

 ちょっと困ったような顔、してない?もしかして、もう誰かと約束してるのかな・・・三宅さんとか。


「あの、島崎くん。無理なら・・・」

 声をかけるとハッとした様子で顔が少し赤いけど、いつもの穏やかな島崎くんに戻った。

「無理じゃない。北条さんから誘ってくれると思ってなかった。いいよ、一緒に回ろう。そうだ、後夜祭はどうするの?」

「うーん、たぶんちなちゃんのところで見るかも。美術室って花火がよく見えるんだよ。昨年もきれいだったんだ」

 後夜祭も一緒にいられたらって思ったけど、それはさすがにずうずうしい気がするから言えない。

「じゃあ今度は俺が誘うよ。北条さん、俺と一緒に後夜祭を過ごさない?」

「え。でもちなちゃんが」

「村上さん、15時から受付ってことはきっと最終受付時間まででしょう?片付けや反省会でバタバタしてるんじゃないかな。いくら親友でも部外者はちょっと入れないかもしれないよ」

 確かに昨年は美術部の皆さんの厚意で見られたのかも・・・私ってだめだなあ、昨年が大丈夫だったから、今年も大丈夫って勝手に思ってた。

「そっか・・・そうだよね。私が考えなしだった。じゃ、じゃあ・・・よ、よろしくお願いします」

「うん、こちらこそよろしくね。あ、朝錬の時間、大丈夫?」

 島崎くんに聞かれて、私は腕時計を見る。あっ!!開始10分前!!歩きながら話していたから、ちょうど校舎の入り口でよかった。ここからなら間に合う~。

「あの、島崎くん。ごめんなさい、ちょっと先に行くね」

「いいよ。練習頑張ってね。文化祭を楽しみにしてるよ」

「うんっ!!私も!!」

 私は先生がいないのをいいことに、音楽室まで廊下を走った。



<その日の男子組>

「島崎・・・お前頭でも打ったのか?」

「は?なんで」

「なんか顔がゆるい。きもち悪い」

 クラスの友人の失礼な発言なんて、無視だ無視。

 まさか、彼女から誘われるとは思わなかった。

 村上さんから話を聞いたとき、俺から誘ったほうがいいのかなと思っていた。彼女はとても恥ずかしがりやで、俺に話しかけるときはいつも緊張しているから。

 そこが可愛くて、朝はいつも話しかけられるのを待ってしまう。

「・・・やっぱお前、変。勉強のしすぎか?」

「そんなわけあるか。早起きすると気分がすがすがしいんだよ。お前もすこし早く来れば?」

 友人は俺の返答に納得いってないようだが、そんなのは気にするほどじゃない。

 俺は窓の外に視線をうつした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ