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席替え*honey  作者: 春隣 豆吉
席替え*honey
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10月ののどあめ

 慣れることがあるのだろうかと心配していた島崎くんの朗読は、聞きほれちゃうんだけど「ほぅ」とか言って笑われることはなくなった。

 だけど個人的に話しかけられるのはいまだに緊張し、背中がぞくりとする。そして挙動不審になる私を、島崎くんは明らかに面白がっている。


 10月になると、うちの高校は文化祭一色になる。結構有名だったりするので外部からのお客様も多いし、文化部にとっては一大イベントの一つでもあるのだ。

 私が所属している合唱部も普段の部活時間以外に朝錬も始まり、結構忙しくなる。

「おはよー、沙和。」

 机でぐったりしてると、ちなちゃんが頭をなでてくれる。ちなみにちなちゃんは美術部に所属していて、文化祭に展示する作品選びに余念がない。

「おはよ、ちなちゃん」

「朝錬おつかれ~。のどのケアはしてる?」

「部長からおすすめののど飴を教えてもらったの。合唱部で絶賛流行中」

 私はそういうと、かばんからチャックのついたアルミ袋を取り出した。

「“声を出す人用のどあめ”・・・・へ~、こんなのあるんだ」

「匂いは独特で甘み少ないけど、他のより断然いいよ。さすが部長」

 そこに島崎くんがやってきて、私の机の上にあるのどあめに目をとめた。

「おはよう。北条さんもそれなめてるんだ」

「お、おはよう。島崎くんも?」

「うん。なんか他のあめと違う気がするんだ」

 このあめは島崎ボイス御用達だったのか!まさかの共通点。

「なるほどねー、放送部の王子様の“いい声”はこれのおかげでもあるわけだ」

 ちなちゃんがちゃかすように言うと、島崎くんはちょっと困ったように笑った。そういえば、ちなちゃんって島崎ボイスに耐性があるよなあ・・・その秘訣を今度聞いてみよう。

「放送当番のときに声がでないと他の部員に迷惑かかるしね」

 あ、その気持ちは分かる。私も自分のパートのメンバーに迷惑かかるの嫌で、ちょっとまずいなと思うと早めにケアしてるもん。

 なんと共通点その2。そして始業のチャイムがなり、1時間目の英語の先生が入ってきた。



 まずい、遅れちゃう!私は廊下を小走りして音楽室に向かった。

 掃除当番に思いのほか時間をとられてしまって、気がつくと部活開始の10分前。今日から全体練習に入るため、メンバーが揃わないのは非常にまずい。

 顧問の蒼山先生は普段は優しいけど時間と練習には厳しい。

 部長は某女の園の男役のようにかっこよく性格も男前で、とても素敵なソプラノボイスの持ち主。新入生歓迎会で部長の歌っている姿を見てなきゃ私は間違いなく帰宅部。

 2人とも怒るときは穏やかな口調で目が笑っていない・・・ううう、怖いよう。

 次の階段を降りれば、音楽室に通じる渡り廊下。そこからまっすぐだから・・・・・と、私は焦っていたため目の前をよく見ていなかった。

「うわ!」

「えっ?!」

 目の前には男子の制服・・・どうやら私は誰かの胸元にぶつかったらしい。

「ご、ごめんなさ・・・・」

「大丈夫?北条さん」

 その声に驚いて、すぐ離れる。またやっちゃったよ・・・・ぶつかったのは島崎くんだった。

「ご、ごめんなさい!島崎くん!!だ、大丈夫??」

 もし“放送部の王子様”にケガでもさせたら、私は明日から学校に行けません。

「俺は平気。北条さんこそ大丈夫なの?それに、そんなに急いでどうしたの」

「あ・・・合唱部の練習に遅れそうだったから」

 なんか、私ってばいつも島崎くんの前だと醜態をさらしてる気がする・・・・

「北条さん。廊下は走らないほうがいいと思うよ。それと・・・」

 島崎くんが一歩私に近づく。後ずさりしようとしたら腕をとられた。

「ししししし島崎、くん?」

 そして先月の電車の中みたいに耳元に顔が近づく。

「-ぶつかったのが俺でよかったね。でもこれからは気をつけて?」

「うわ・・・はっははい」

 そういうと、島崎くんは私の肩をぽんとたたいて、反対方向に歩いていった。島崎くんに腕つかまれた・・・・もう走る気力もない。

 私が蒼山先生と部長に、にこやかに怒られたのは言うまでもない。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


「廊下でドン」・・・ベタだよね、これ。え。違う?

いいの、一度は書きたかったシチュだから。


ところで作中で沙和と島崎くんがなめている設定の「のどあめ」とは

全然違いますが、音大と共同開発したというコンセプトののど飴が

実際に販売されているようです。ちょっと気になる。


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