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伏見城は三日で落とすのよ!(五)

最終的勝利のために、三日で落とすと決めた伏見城。本日はその三日目ですが、昨日と同じ戦いが続いているだけ。そこにヒロイン、美鳴ちゃんが叱咤激励に美濃から移動してきます。

3日目


 伏見城は元々、秀吉が晩年をここで過ごすために築城した道楽城であり、時の行政府庁、いわゆるお役所のような城であった。よって、軍事的な防御の点では劣ると言われていた。歴史では、ここに徳川家康の幼少から家来、鳥居彦右衛門が守備し、西軍4万を10日以上も引き付け、壮絶な討ち死にをするという戦いであった。これにより、家康は天下に三河武士の強さを世間に示し、西軍の烏合の衆ぶりを知らしめたという点で、東軍の勝因の1つであると筆者は考えている。


さて、その伏見城攻防戦は3日目を迎えていた。


 宇喜多秀家(浮竹さん)を総大将に西軍各諸将、1日目と同じく攻撃を開始した。昨日とは違い、銃撃でしばし応戦したあと、石垣に取り付いて城の中へ突入しようと試みたが、守備側は、宇喜多勢(浮竹さん)と小早川勢(秋帆ちゃん)が、戦意旺盛と見て、ここに守備隊を集中しているために、たちまち、跳ね返される。両軍とも大軍であるが、大将である二人がゲーム初心者ということもあって、特に経験が重視される城攻めにうまく対処できない。


「殿、治部少丸に我が方の一部が突入しました。すぐ、増援を!」


という要請に浮竹さんが、増援部隊の編成にとまどっているうちに、敵に撃退され橋頭堡を失うなど、ちぐはぐな攻撃に終始している。


「わしに指揮権を一時くれれば、こんな城など1日で落とせるのだが!」


 維新入道の伊集院のじいさんは、一時、突入した自分の部隊に援軍を送れず、ついには撤退せざるを得なくなって、地団駄踏んで悔しがった。


 毛利と吉川軍担当の名護屋丸への攻撃と、長宗我部、長束、安国寺隊の攻める松の丸への攻撃は、銃撃戦に終始で、被害を恐れて突入することすらしない。それを見越して、守備側は、こちら方面の守りを薄くしていた。




 松の丸の城外。長宗我部隊、長束隊、安国寺隊が受け持っている部署。


あの訳が分からないうちに巻き込まれた安国寺法律事務所の新人スタッフ、長束英美里ちゃんの戦場である。


「はい、みなさん~一斉に撃ちますよ~」


わたしは長束隊のお侍さんに命令しました。数は200人。バンバン…バンと鉄砲の音。

敵からは撃ってきません。


安国寺先生の部隊も同じように撃ちます。


長宗我部隊は、完全に傍観してます。


あ~あ~何だか眠くなってきました


「英美里ちゃん、鉄砲の弾が少ないんだけど、あと、どれくらい補給があるの」


 安国寺先生から連絡がありました。こういう質問は得意です。在庫と消費量を計算し、瞬時に答えを出します。


「先生、今のままのペースで撃つと、あと1時間で尽きます」

「じゃあ、そろそろ矢の攻撃に変えるべきかしら?」


「矢の方もそんなに余裕はありません」

「じゃあ、どうすればいいの?」


「敵は撃ってこないので、このまま、見ていてもいいかと…」

「英美里ちゃん、何だか、兵士が突入しますか?とか聞いてくるのだけど」


「ああ、それはキャンセルできます。突入すると怖いのでやめた方がいいと思います」


 他の諸将が聞いたら、怒りそうな会話を続ける私たち。でも、土台無理です。こんな戦いでゲーム初体験の女性二人でどうすりゃいいの?



 長谷家部さんの長宗我部勢もまったく動いてないし…。


 夜の9時を回って、美鳴さんが美濃から戻って来たようです。


 はあ~あと1時間か~疲れたよ~。


こっちは、朝の九時から仕事尽くめだから!



 石田美鳴は美濃から着陣すると、宇喜多秀家の本陣から戦いの様子を確認したあと、一旦戦闘を中止させて、全軍の諸将を集めた。


総大将の浮竹栄子(宇喜多秀家)副将の早川秋帆(小早川秀秋)を始め、毛利元人(毛利秀元)、吉川広志(吉川広家)、伊集院教経(島津維新入道)、長谷壁守人(長宗我部盛親)、安国寺恵(安国寺恵瓊)、長束英美里(長束正家)など、主な大名が集結する。


「なんですか?この状況は?」


美鳴はみんなを見回す。ゲーム上だからあくまでもゲーム上のキャラであるそれぞれの人間に対してであるが、バーチャルリアリティの「戦国ばとる2」の機能で、直に話していると思えるくらいの緊迫感がある。


「ただ、鉄砲で撃ちかけて、適当に突っ込んで、逆襲があるとすぐ逃げ帰る。これがいくさですか!」


「だが、私たちはこのゲームは素人なので、城攻めが分からないんだ」


総大将の浮竹さんが言い訳をする。


「城攻めは被害を恐れていては、攻め落とせません。犠牲を厭わない攻撃で相手の戦意をくじくことが肝要です。それによって、かえって、こちらの被害も少なくなる」


美鳴は細かい指示は不必要だと感じていた。もちろん、戦術上の指示は自分も経験不足で分からないから、できないのであるが、この戦いに限っては全軍が一体となって戦うことで、解決できると思ったのだ。


「そうは思いませんか?島津維新入道様?」


美鳴はこの場の年長者で、もっともレベルが高いプレーヤーであろう島津維新入道に問いかけた。

(キャラのレベルは低いが、プレーヤーレベルは高い)


「そうだな。この大軍でこの状況は我々の恥だな…」


そう言って、維新入道は立ち上がった。


「島津様どこへ?」


総大将の浮竹さんが尋ねる。


「我が軍は800だが、島津ここにあり!という戦いを見せてやるわ!」


そう維新入道は叫んだ。自分自身、兵力が少ないことを理由に、消極的であったことを恥じたのだ。


さあ、時間はあと1時間を切っている・・・。関ヶ原のキャンペーンモードは、夜7時開始で10時終了です。そういうルールなのです。

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