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伏見城は三日で落とすのよ!(壱)

いよいよ、関ヶ原のキャンペーンモードが始まりました。新キャラの長束英美里さんが初登場です。ぽや~とした普通のなんですが、なぜか、この戦場に駆り出され・・・ドタバタをやってくれそうです。

大丈夫か?西軍。

 わたし、長束英美里なつかえみり。突然ですが、わたし、今、戦場にいます。城攻めだそうです。わたしの目の前に展開する光景は!


(ゲームなのに、何?これ?本物?)


 ちょっと知らないうちに…ゲームがここまで進化していたなんて…。まるで3Dの現実世界のように広がる風景とリアルな登場人物。触る感覚まで超リアル。3Dゴーグルというオプション機器を頭に装着するとバーチャルリアリティの世界に自分が飛び込んでしまいます。


 わたしの目の前に広がるのは戦国時代。先ほどの会議によると、伏見城ってお城をみんなで攻めるみたい。わたしは長束正家なつかまさいえという人物で、1500人のお侍さんを引き入る大名らしいです。苗字が同じなのと、どうやらこの大名様、算術が得意だったそう。まるで、わたしそっくり。私も暗算日本一に輝いたことがあるのです。


まあ、そんなことはどうでもよいのですが、わたしは安国寺先生と城の松の丸という場所を攻めることになりました。でも、どうしたらよいか分かりません。


「英美里、鉄砲隊というのはどうやって動かすのですか?」


安国寺先生が私に聞きます。わたしはペラペラとマニュアルをめくって、


「えーっと、先生、自軍の範囲指定をして、鉄砲隊を選択。打つ方向を決めて、Aボタンです!」

「Aボタンってどれ?」


 安国寺先生のボケぶりには驚かされるけれど、東大を出て司法試験に一発で受かった人ですから、こんな庶民のお遊びなど見たこともなかったでしょう。斯く言うわたしも、まったくの初心者です。そんな初心者のわたしがこの現場にいる理由は…。


 昨日、昼過ぎに安国寺先生が弁護士事務所に帰ってきました。今は、顧問をしている毛利屋が乗っ取られるかもしれないということで、連日、夜遅くまで働いているので少々、お疲れ気味のようです。わたしは今春、高校を卒業してこの安国寺弁護士事務所の就職したばかり。まだ、半年たってません。仕事は先生のアシスタントということですが、いわゆる雑用です。


(お茶出し、お掃除、書類の整理エトセトラ…)


本当は高校で習得した簿記と日本一に輝いたことのあるそろばんと暗記で経理の仕事ができれば良かったのだけど、この就職難の時代。働き口があるだけで儲けもんです。


それで、安国寺先生が、椅子にすわるやいなや、


「誰か?戦国ばとる2ってゲーム知ってる人いる?」


とお聞きになりました。みんなシーンとしています。


(事務所には私を含めて、五人の事務員がいます。)


「英美里ちゃんはどう?」


 わたしはドキッとしました。どうやら、先生の顔を見る限り、とても困っているようです。わたしはそれが、「ゲーム」であることは知っていました。なぜなら、高校生の弟がやっているのを見たことがあったからです。


「は、はい、先生。知っています」

「ほ、本当!」


 先生の顔がパッと輝きました。わたしは何だかうれしくなりました。入社して五ヶ月。やっと先生の役に立つことができそうです。


「はい!弟がそのゲームをやっていて…」


 正直、弟がやっているだけと言えばよかったのに、つい、調子に乗って


「わたしもやったことがあります!」


なんて言ってしまいました。まあ、いざとなったら弟に聞けばいいや!ぐらいに思っていたのですが、このゲームで安国寺先生の顧問をしている毛利屋が乗っ取られるかもしれないなんて、わたしは夢にも思わなかったです。


で、わたしは先生と一緒に戦場に行くことになったのです。先生も私もレベル1の超初心者。先生が言うに、顧問をしている会社の社長と若様がこのゲームに参加しているので心配で参加しているとのこと。でも、その先生が初心者では、まったく足でまといです。


 軍議の席では、西軍の総大将はクライアントの毛利社長。本物も人のいいオジさんって感じだけど、ゲームでもそれは変わらず。いかにもお金がかかってます!的な鎧を着ていてもあまり威厳は感じません。隣の吉川専務の方が威厳あります。


 西軍の軍事担当の副大将が、浮竹さん。ゲームでのバーチャルリアリティの姿は、ゴージャス風貌のなOLさんって感じです。でも、言葉は汚く、何だか、東宮院死ね!とか言ってます。


あと、並んだ順に感想を言うと…


小谷吉乃さん、何だか具合悪そう。


小西雪見さん、黙っているだけ。


長谷家部さん、左近ちゃんがどうの…とぶつぶつ言ってます。変な人?


島津維新さん、おじいさんみたいです。


毛利元人さん、相変わらずカルイです。


早川さん、何だか心ここにあらず…って感じです。


そして、石田美鳴さん。この人が一番謎です。


 西軍大将じゃないけれど、このゲームの言いだしっぺらしく、何だか偉そうに指示しています。それに何だかイライラしています。年はわたしと同じくらいに見えます。こんな小娘が事実上の総大将ですか?


さて、その美鳴さんが、


「まずは、東軍の伏見城を三日で落とすのよ!」


と叫びました。伏見所攻めの総大将は、浮竹さん、副大将は早川さんになりました。わたしも安国寺先生も含めて、総勢4万の大軍で攻めることになりました。


 城の中のお侍さんは、2千足らずっていうし、これはわたしや安国寺先生が戦わなくても、勝つかなあ?と思ったのですが、現にわたしは安国寺先生と長谷家部さんと伏見城の松の丸という場所を攻めています。


 攻めているっと言っても、取り囲んでボーッと見てるだけですけどね。城から鉄砲や矢を撃ってくるから、こちらも撃ち返すだけです。


「撃て!撃て!撃て!」


と安国寺先生が叫んで、安国寺隊が盛んに鉄砲隊が射撃してますが、わたしが見たところ、城の防御壁に阻まれて、全然効果がないようです。かと言って、わたしの部隊もそんなに数が多くないし、何だか怖いので適当に弓とか発射して戦うふりをすることにしました。


適当に弓隊に射撃させると、お侍さんが、


「※姫、城に向かって突撃しますか?」

(※…NPCの呼び名は変えられる。普通は「殿」なので、「姫」に変えた)


と言ってくるので、


「NO!」


と瞬時に却下します。でも、また、しばらくすると、


「姫、今です!城に向かって突撃命令を!」


と言うので、だんだん鬱陶しくなりました。


 友軍では、長谷家部さんの長宗我部勢が6千と大軍で、ベテランゲーマーでいらっしゃるので、彼に任せておけばよいと思ったのですが、この長谷家部さん、わたしが、


「わたしと安国寺先生は初心者なので、長谷家部さん、お願いします!」


と可愛く言ってあげたのに、長谷家部さんたら、


「はあ~。左近ちゃんが見てないのに、ボク戦えないよ~」


などと言って、わたしを無視します。


(コイツ!いつか首しめてやる)


 左近ちゃんって、長谷家部さんの彼女で、相当な美人さんらしいのですが、わたしだって、年下の女の子なのにヒドイです。


というわけで、時間が来ました。このゲームの戦闘開始は夜の七時~十時までって決められているので、伏見城攻めの1日目は何とか終わりそうです。


 はあ~残業代は付くって、安国寺先生は言っていたけれど、毎日これではわたしの身がもたないかもしれません。でも、ここでがんばって安国寺先生に気に入れられれば、仕事ももう少し、やりがいのあることを任せられるかもしれません。


 わたし、長束英美里なつかえみり、頑張ります。(ゲームは適当だけど)


適当に戦っている西軍各諸将。このままでは、美鳴ちゃんが・・・。

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