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虎穴に入らずんば虎子を得ずって言うじゃない?(弐)

西軍に肩入れし過ぎたアギトに魔の手が迫る・・・。おいおい、歴史小説なのに、ポルシェカレラとメルセデスSのカーチェイスかよ!っとツッコミを入れられそうです。すいません。決戦前の露払いです。

 アギトは停車した白いポルシェのオープンカーから、カフェを監視していた。見るだけでなく、テーブルの下に貼り付けた盗聴器によって、話も聞いていた。おそらく、今回のゲームでキーパーソンとなる早川秋帆と石田美鳴の話の様子を聞いていたのだ。これは、是清に命じられてではなく、彼独自の行動であった。だが、彼の目に意外な光景が映し出された。


(あれは?黒田メイサ。なぜ、彼女が?)


 慌てて席を立った美鳴に代わって、アギトも知っている人物が、秋帆に接触してきたのだ。メイサが単独で動くはずがなく、接触相手の早川秋帆の工作は自分が担当していたことを総合すると、答えは1つしかない。


「本多アギト、動くな!」


 このクソ暑いのに全身黒スーツに黒サングラスと黒ずくめの男が、いつの間にか運転席側に立っていて、自分の頭にピストルを突きつけた。


(是清のボディガードか。ということは、俺の行動がバレたようだな)


 メイサが早川秋帆と接触していることと、今の状況を考えれば、東宮院是清が自分の裏切りを知って、消しにかかったという結論になる。アギトは両手をゆっくりと上げていく。


「お前は解任だそうだ。この裏切り者め」

「で、俺を海にでも沈めるか?」


「ふん。そんな危ないことすぐにはしないさ。ゲームが終わるまではな」


(なるほどね。ゲームが終わるまで監禁し、終わってほとぼりが冷めたら、ドラム缶に入れられて海か山に…ってコースか。ついでに俺のIDとパスワードを使って、美鳴をミスリードするっていうこともやるだろう。あの東宮院という男、抜け目がない)


「アギト、車を降りろ!」

「はいはい、降りますんで、撃たないでくださいよ」


 そう言って、アギトは手をゆっくり下ろし、運転席左ドアを思いっきり開いた。ポルシェの分厚く重いドアに激しく当たって、黒スーツの男が車道に転倒する。すぐさま、アギトは車のギヤをローに入れて発進させる。


「待て!」


と男が叫ぶが、アギトのポルシェ911カレラ4GTSカブリオレは、時速100km到達までわずか4秒強というモンスターマシンだ。あっという間にその場を走り去る。だが、


「ちっ!しつこい、野郎だな!」


 黒スーツの男は仲間と一緒に行動していたようだ。すぐ後ろに停車していたメルセデスSに乗って追いかけてくる。アギトは左ミラーで追いすがってくる黒塗りベンツを確認すると、すぐ高速道路へとステアリングを切る。ETCバーを吹き飛ばし、高速道路の本道へとポルシェを走らせる。


「そんなベンツじゃあ、このカレラ4には追いつけないぜ!」


ギヤを3速、4と上げ、6速に入れてスピード表示が200km/hに達するのを見て、アギトはベンツを振り切ったとバックミラーを見る。だが、信じられない光景が…。


黒いメルセデスSはアギトのポルシェにぴったりくっついていたのだ。


「こいつら、普通のSクラスじゃないな」


そうS63AMG。メルセデスベンツが誇る最強マシンだ。


グオオオオオオオッツ…すさまじい、エンジン音でポルシェが逃げる。それをぴったりとついていくメルセデス。


「簡単には振り切れないか、やっぱり」


 アギトはポルシェのスピードメーターを見る。すでにスピードメーターは260km/hに達している。米粒のように見えた車はあっという間に目の前に来るので、パッシングで避けさせる暇もない。隙間を縫って交わしていくのだが、メルセデスもそれにぴったりとついていく。


「仕方がない!捨てるか」


 アギトは決心した。日本の高速道路の規格はスピード無制限に対応していない。となると、やはり、時速300km近くで走るには限界があった。これまではアギトのスーパーテクニックでカーブもクリアしていたが、タイヤも煙を上げて限界に達しつつある。次のカーブで曲がりきれない。なら、いっそのことメルセデスを道連れだ。


カーブの先は海だ。アギトは一気にアクセルを踏む。バンパーをなぎ払い、海へと突っ込んだ。


「馬鹿な!奴は死ぬ気か~」


 メルセデスS63AMGを操縦する黒スーツ男は、ハンドルを慌てて切ったが、オーバースピードなので回避は絶望であった。アギトのポルシェが開いた海への道にスピンしながら進むしかなかった。


ポルシェカレラ4、1700万円、メルセデスS63AMG、2500万円。海の藻屑となる。

もったいねえ・・・。

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