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決戦前夜だからと言って、油断しないでね!(七)

うー織田麻里さんの話は幕間で、やはり、今回も長谷家部くんデート編。味方にするためとはいえ、主人公のプライドを捨てた涙ぐましい努力が続きます。

「そういうことで、守人さんの力が必要なの。だから、お願い。親友の美鳴ちゃんを守人さんの働きで勝たせて欲しいの」


「分かってるよ!左近ちゃん。君の主君の美鳴ちゃんも可愛いからなあ。可愛い子のためなら、僕は頑張るよ」


 イタリアンレストランのランチコースの最後のコーヒーを楽しんでいる時に、俺は長谷家部に最後のひと押しをしていた。もともと、コイツは西軍のメンバーがカワイコちゃんぞろいで、ご機嫌状態だったので去就は大丈夫だと思っていたが、先程、長谷家部のスマホに東軍への寝返りを促すメールを見せられたから焦った。




長宗我部勢の寝返りを切に願う。

もし、興味があれば、四国4カ国分の報酬

を与える用意あり。

 

東軍主催 徳川家康



 四カ国分といえば、総額で7、80万円に相当する。長谷家部の奴がお金に目がくらんで東軍になびかなくてよかったと思う。それにしても、東軍サイドはこんな露骨な報酬で東軍を組織しているのだろうか?つくづく、西軍主要メンバーが、「利」ではなく、「友情」で集まっていることに感謝したいと思った。ネット公募で集めた一般参加者なら、あっという間に寝返り続出であったかもしれない。


「でもねえ、左近ちゃん。僕も報酬の高額に目がくらむわけじゃないけど、それよりも大切な報酬の方が大事だと思っての参戦なんだ」


そう言って、長谷家部の奴、俺の手を握りやがった。


「それってどういうこと?」


「いや、その、こういう言い方は卑怯だと思うけど…西軍につく代わりに、君が、僕の彼女になるって約束して欲しいんだけど…」


(うわっ!コイツ、最低!弱みにつけこむとは!)


俺のこめかみがピクピクと動く。イヤホンから、


「大介、そんな奴、ぶちのめせ!」

と言う舞さんの声と、


「ダメです!旦那様、土佐24万石の戦力は重要です」

という瑠璃千代の声が届く。


「ふう~っ」

と俺は息を吐いた。


(みんな、プランBを発動する。サポートを頼む。どうぞ!)


 このデートであらゆる事態を想定した長谷家部の奴を確実に西軍につなぎとめるいくつかのプランのうちの一つを発動する。島大介、一世一代の演技だ。


「ヒ、ヒドイ…守人さん、ヒドイよ…」


そう言って、席を立つ。ハンカチで顔を隠していかにも泣いている振りをする。


「あっ、ま、待って!左近ちゃん!」


慌てて長谷家部が追いかける。レジでお金を慌ただしく払うまで、俺はちょっとスピードを緩める。ここで長谷家部に追いかけさせないと意味がないからだ。ワザとゆっくり駆けている俺の手を長谷家部がつかむ。


「ま、待ってよ!左近ちゃん、ごめん、そんなつもりはなかったんだ」

(そんなつもりって、そのつもりだったくせに…)


「守人さん、私は守人さんをもっと男気のある方だと思っていたのに」


 先程、走りながら差した目薬で目がウルウルして涙があふれている。


「ごめん。本当にごめん!僕は君が好きで好きでたまらないから、つい、君が僕の彼女ならいいなと思っただけで」


 長谷家部の奴、必死である。路上で人通りが多いにも関わらず、必死で弁明している。俺は奴の手を取って、すぐ近くにある公園へ向かう。こんな路上で男と痴話ゲンカしたくない。公園の木陰にたどり着くと、俺は後ろ向きのまま、長谷家部の奴に尋ねる。


「守人さん、私のどんなところが好きなんですか?」

「えっ?えっと…可愛いところ、おしとやかなところ、女の子らしいところ」


(おいおい、マジかよ!俺は男だぜ)


3mは引いたが、俺はめげず、思いっきりの笑顔で振り向き、セリフを放つ。


(こんなキモイ演技、美鳴のためと思わなければ、絶対にできないぞ!)


「私は守人さんの白馬の王子様みたいなところが好きです!」

「左近ちゃん…」


「だから、今回のゲームだけでなく、困っている私をいつも無条件で助けて」

「わ、わかった!わかったよ、左近ちゃん」


「ふふふ…そういう守人さん、100点満点です!」


100点満点です!っと、織田信奈の野望の丹羽長秀ちゃんの声で言われたら、長谷家部君じゃなくても、鼻血が出そうです。でも、左近ちゃんは男・・・。

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