おだまり!アイドルは無敵なのよ!(幕間)
長谷家部君のデート編ばかりでは、ちょっと人気が落ちそうなので(PVの総数が伸び悩ない~)ちょっと、ここで幕間的にアイドル、織田麻里さんに登場してもらいました。サブタイトルも、美鳴ちゃんのセリフではなく、おひい様(織田麻里様)のものになっております。
「麻里ちゃん、あのCMのお話、ボツになったわ」
「そう」
テレビ局へ向かうタクシーの中で、マネージャー(女性)から決まりかけたCMの話がダメになったことを聞いた織田麻里は、そう返事をした。別に最近は超忙しく、好きなゲームもできないくらいだったから、麻里としてはラッキーではあったが、事務所としては大ダメージであろう。
最近、戦国ガールズ全体ではなく、自分の単独だと急に仕事がキャンセルされることが多い。
これでCMが二本、ボツになった。映画の話もオーディションでほぼ決まりであったのに、何故かスポンサー企業の横槍で、別の人間になってしまった。
「麻里ちゃん、どうもあの戦国ばとる2に参戦表明してからよ。どうやら、あの噂は本当かもしれないわ」
マネージャーがそうシステム手帳を開いてそう言う。実はある筋から、麻里の参加するゲームが、会社の買収を巡るドロドロの抗争を代弁しているのだということを聞いたのだ。相手方は、悪名高き東宮院ファンドで、西軍に味方を表明した織田麻里のことを不快に思って、こういう圧力をかけてきているのだという話だ。
「ふん。大きな会社かどうか知らないけれど、そういう卑怯な手を使う奴らの思い通りにはさせないわ!」
「だけど、社長もそんなゲームから手を引けって…」
「おだまり!」
女性マネージャーはその言葉の迫力にビクッと体を硬直させた。この娘は、ブームになってすぐ消えるようなアイドルではないと常常思っていた。人間的に光るものがある。将来に渡って大物になる風格が感じられるのだ。頭もいいし、人の何倍も努力をする。そして、年齢に合わない揺るぎない決断力。
「そのなんちゃらという会社が圧力をかけたって、私には通じない。私はこの地位を商業的な売り込みで築いたわけじゃないわ。私を支えるのはファンよ」
こういうセリフをよくタレントは言うが、織田麻里の場合は、駅前でライブをやりながら、今の地位を築いた。完全なる自分の力であり、浮気をしない固定ファン層が分厚い。スポンサーやテレビ局などの思惑とは関係なく、絶大な人気があるのだ。
「麻里ちゃん。そうよね。今更、ゲーム止めるなんて言えないわよね」
もはや、ネットゲーム上の盛り上がりは、二日後の決戦に向けて最高潮であり、織田麻里の参戦は不可欠要素でもあった。
「まあ、見てなさいって。私にちょっかい出しても、結局は私の力を借りないといけないのよ。そのCMだって、私の代わりにアイツでしょ?」
「あのシャンプーのCMね。若手有望株のミルンちゃんよ」
「はいはい、あの枕営業のミルンね!」
「しーっ!麻里ちゃん、そんなこと口外してはダメ」
「ふん。あの子がスポンサーのジジイと寝ようが、プロデューサーとよろしくやろうと勝手だけど、CMは実力よ。結果は物が売れたかどうか。見ているといいわ」
織田麻里は、仕事の合間に参加する今回のゲームを楽しみにしていた。そんな大人の世界のドロドロした戦いなら、それに巻き込まれた石田美鳴という少女と、島左近という性別は不明だが、このゲームではカリスマと言われるプレーヤーと一緒に、そういう悪どい奴らに天誅を加えてやると思ったのだ。
さすが、根がしっかりしたアイドルは違う。一発屋では終わらないのです。ゲームでも彼女の存在は美鳴ちゃんを救うはずです!?