わたしの旗の下に集まらないといけないんだからね!(参)
さあ、美鳴を含む4人娘の素人娘(SLG素人)を鍛えてやるのだ!と張り切る主人公ですが。まだ、未登場の同級生もいますが、その子は次回かな。
不安とは、自分の主君となった石田三成こと、石田美鳴は、この高飛車な性格のせいで友達少ないんじゃないか?という不安だ。重要な役割を担う人物は、信用のおける友人がよいと進言したので、美鳴なりに考えたのであろう。
それにしても…こんな部活を立ち上げているなら、最初から言いなさい…と俺は思ったが、何だか不安が確信になってきた。
(ちょっと…待てよ…)
俺は冷静に新しく加わった人物を見た。美鳴が紹介したように、直江ちゃんは、美鳴の後輩で1年生。舞さんは先輩だから大学1年生。そして、雪之ちゃんは中学校1年生。
(この部、高等部の部なのになぜ?)
「あのさ…美鳴…ちょっと、確認するが…この部はこれで全部か?それにお前の同級生いるのか?」
「いるわ。いるけど…」
「いるけど、今、彼女は休学中だ」
舞先輩がはっきしない美鳴に代わって言う。
「てことは、その休学中の1人合わせて、この部は5人ということ?」
「いや、6人だわ」
美鳴が俺を指さす。
「え?」
「この学校は部長+5人いないと部活として認められないの。あなたが入って5人でめでたく今日から正式な部として認められました!」
パチパチ…3人が手を叩く。
「ちょっと待った!俺は男でこの学校と縁もゆかりもないぞ。そんなこと認められるはずがないだろう」
「いえ、認められるわ。部活設立規約では、アナスタシアの学生なら学年学校を超えて部活を運営できるとあるわ。学生は幼稚部から大学まで含むとあるから」
美鳴は、学校の規則集をパラパラとめくってそう言う。だが、きっと、男が混じった部活を想定していないからだろう。第一、男の俺がいつもこの部活に参加するには、女装しないといけないことになる。
(そんなのはまっぴらごめんだ。そりゃ、夜間にネットだけでゲームするより、昼の間に部活で準備や作戦を練った方がよいことは分かっているが)
戦国ばとる2のゲームでは、戦画面の他に作戦を討議する画面がある。カメラを駆使してリアル画面で話せる機能だが、セキュリティ機能に少々、不安があり、キャンペーンのような長期対戦では、しばしば、相手に作戦内容が盗聴されるといった噂があった。今回もそういう可能性は1%でも排除したい。となると定期的に会えるのがよいのだが。
「なあ、いくらなんでも毎回、俺が女装するにはリスクが大きいだろう。バレたら部活取り潰しだし。大学のカフェとか、俺の下宿とかどうだ?」
「ふん。男の考えそうなことだ。すぐ部屋に連れ込もうとする!」
赤い眼鏡ちゃんが毒づく。
(ちっ...直江ちゃんや、雪之ちゃんはともかく、君や美鳴は連れて行きたくないわ!)
と心で思ったが、美鳴が、
「それも考えたけれど、ネット環境はここが一番。キャンペーンに入るまでに、拠点を学外に構えるから、今は高等部の部室で我慢するしかないわ…というか、しなさい!」
と命令する。(ということは、俺は毎回、この格好か!?)
「いいじゃない、左近ちゃんは、女の私が見ても可愛いし...」
(おいおい、美鳴…男の俺にそれは褒め言葉にならないぞ)
「で、本題だ。この男をわざわざ危険を冒してまで、仲間にする以上、かなりの腕前なんだろうな?」
赤い眼鏡ちゃんの狩野舞が、ゲームオーバー画面を見せながら俺に言う。どうやら、キャラをメイクしてさっそくシナリオモードで対戦したらしい。兵500程度の遭遇戦を指揮したらしいが、無残にも敗北している。リプレイを見ると、ただ単に突っ込んで全滅したらしい。直江ちゃんも、雪之ちゃんも同じくだ。
(戦上手の舞兵庫の名が泣いているぞ・・・直江兼続も真田幸村も弱すぎて、相手が呆れてるじゃないか…)
美鳴だけは、結構、がんばっているようで、兵1500を率いて、小戦闘で経験値を積み重ねていた。
俺はその日は、兵の動かし方の基本と、ごく基本の戦術レクチャーをして、小戦闘のシナリオをそれぞれ、2回ずつ一緒に行った。
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その日の夜…。俺はネットで美鳴と相談していた。
「あの3人はこれから鍛えるとして、まだ人が足りないのは分かるよね」
「分かっているわ」
「ネットでは相変わらず、応募ないし、美鳴は友達少ないし…」
「悪かったわね。友達少ないって、主君に対して失礼だわ」
(はいはい…だけど、直接、関ヶ原の戦場に出る人間が不足しているのは確かだ。直江ちゃんも、雪ちゃんも重要なファクターではあるが、実際の戦場が手薄では勝利は厳しい)
「なあ、美鳴…お前の同級生には頼めないのか?」
「休学中の吉乃に?彼女、入院中だけど…具合がよければやってくれるかも。私、頼んでみるわ」
「ああ…それがいい」
「私ばかりで何だか、悔しいわ。大介の方には知り合いがいないの?も…もちろん、私のサービス抜きで味方になってくれる人」
「(サービス有りなら絶対紹介しないわ!)いるにはいるが…。勝利の可能性がないといくら何でも引き受けてはくれないぞ」
「ふん。私には友達少ないって言っていて、あなたもずいぶん少ないですわね。やっぱり、引きこもりのオタク大学生には友達がいないんじゃないの?」
(くーっ!この女!勝利の暁には犯したる!ヒイヒイ言わせたる!)
と下品な言葉が浮かぶ俺。童貞なのにヒイヒイ言わせることができるかは疑問なのだが。
「と、とにかく。今はお前や部のみんなのレベルを上げることが先決だ。決戦まで日がないのだからな」
「わかってるわよ。で、今日のショートシナリオはちょっとレベルを上げたいわ」
「大丈夫か?このシナリオ、経験値は稼げるが、敵の数が多くなって、増援もある。短時間で倒さないとやばいぞ」
「でも、あなたが守ってくれるのでしょう?」
「・・・・・・・」
俺は1時間後、死に物狂いで敵を撃破し、半死半生で勝利を美鳴にプレゼントすることになった。
「でも、あなたが守ってくれるのでしょう?」そんなこと言われたら、男は黙って火の中、水の中。美鳴ちゃん、小悪魔です。彼女の小悪魔ぶりはどんどん出てきますが、これも気を許した証拠でしょうかね。