決戦前夜だからと言って、油断しないでね!(四)
長谷家部守人体育会系の大学生、熱血好青年。但し、主人公の女装姿に一目惚れして、ヒロイン美鳴ちゃんから、マヌ○○と呼び捨てされる可哀想なキャラ。今回、主人公(俺)がコイツとデートする羽目になる展開です。こういうの苦手な方は読み飛ばしてください。(コメディと笑って読んでくれれば幸いですが)
「おおお!ついにこの日がキター!」
長谷家部守人は、8月4日を人生最高の日のスタート地点だと思った。なにしろ、今日は憧れの左近ちゃんとデートなのだ。毎日、メールで誘った甲斐があったというものだ。粘り勝ちとはこういうことをいうのであろう。こんなに簡単に女の子とデートできるなら、もっと前から勇気を振りしぼってアタックすればよかった…と過去に好きになった女の子の名前が頭によぎる。
足達弘恵ちゃん 小学校4年生時、隣の席の子
磯貝みのんちゃん 小学校6年生時、一緒に係活動した子
佐伯ラナちゃん 中学校1年生時、一目ぼれした子
大野小町ちゃん 中学校3年生時、文化祭で一緒に委員をした子
加橋みかるちゃん 高校2年生時、部活のマネージャーだった子
(苦節20年。惚れた女の子6人目にして、やっとデートまでこぎつけた!)
ボクは偉い!と長谷家部は、自分で自分のことを褒めてやりたい気持ちであった。デートは、本当はプールか海に行きたかったが、さすがに初デートで水着は恥ずかしいのか、左近ちゃんが絶対ダメ!(当たり前だが)というので、しょうがなく、映画館でのデートとなったが、長谷家部のプランは綿密に組まれていた。
まずは、待ち合わせ。駅の噴水のところに10時。そこで、花を一輪。次に映画館までエスコート。観る映画は当然、恋愛ものだ。今、話題の「ボクは君だけを愛する」これに決定だ。本当は、歴史モノの「英雄の城」が見たいのだが、自分の趣味はやめておこう。ちょっとエロいと言う「彼女は愛人18号」というラブコメディは、さすがに下心丸出しなのでやめておこうと思った。
12時40分には、映画が終わるので食事。ちょっと洒落たイタリアンを予約している。その後、カラオケに行って時間を潰し、日が暮れるのを待つ。人気のない本町公園で抱きしめてキスをする。盛り上がれば、そのまま、このルートでホテル直行だ!
長谷家部は、もしかしたら使うかもしれないス○ンのパッケージを3個財布にすべり込ませる。準備しておくに越したことはない。
(左近ちゃん、今日はボクが君を完全に落城させるからね!)
そんなキモイ長谷家部の作戦を知らず、俺は美鳴たちにメイクと衣装コーディネートをされていた。コンセプトは「夏のお嬢さん」らしい。白を基調としたワンピースに日傘、背の高い長谷家部に合わせてそこそこ高いヒールを履く。これはふくらはぎにプレッシャーが来る。よくもまあ、女はこんな履物を履けるものだ。
よくラノベのストーリーで女になってしまった男主人公が、ドタバタを演じる展開はあるのだが、俺の場合は「見た目」だけである。押し倒されれば、即アウト!キスされた日には、たぶん石化します。精神ダメージ最大で、明日から引きこもりになってしまう確率が高い。口直しに美鳴だけでなく、吉乃ちゃんにキスしてもらわないと、俺は立ち直れないに違いない。
だが、俺には失敗は許されないのだ。俺を美少女だと信じきっている長谷家部君には悪いが、これもみんな美鳴のためであると自分に言い聞かせる…。
一応、デートの模様は舞さん、愛ちゃん、雪之ちゃんの歴研メンバーと自称俺のヨメの瑠璃千代がサポートしてくれることになっている。
(肝心の美鳴の奴は、裏工作があると言ってサポートメンバーには入っていない)
「旦那様、私は少々、思いは複雑ですが、夫の任務を励ますのが妻の務め。ご無事の生還を祈っています」
(生還て…大げさな!)
「これはトランシーバーだ。ポケットに入れておけ。耳にはイヤホンだ。小さいから目立たない。こちらから、いろいろアドバイスをしてやるからな」
そう言って、舞さんは俺の体にマイクやら、トランシーバーやらを仕込む。イヤホンは、イヤリングを模した巧妙なものだ。左近ちゃんは長い髪なので、まず目立たないだろう。
「頑張ってください、先輩!」
「頑張るアル、左近ちゃん」
俺は四人に送られて待ち合わせの場所へと向かった。
一応、主人公(俺)は美形男子なので、女装姿イメージは美しく、可憐にです。
でも、ニューハーフみたいでやっぱりキモイ?長谷家部くんは、出陣前に視力検査に行くことをオススメします。




