アイドルも子役もみんなわたしの下僕だからね!(七)
チラリ見えるのは目に毒です。健全な男はそういうものです。
「だけどなあ…俺は20歳で大人だぜ?」
俺は美鳴の姿をじっくり見る。椅子に両足を乗せて体育座りをしながら、ちょこちょことキーを叩いている。足はスラリと長く、余分な肉がついていない。そして、パンツはシンプルな白のスポーツタイプ。流石にエロい下着はやばいと思ったのだろう。タンクトップは、黒でこっちの方はやばい。なぜなら、美鳴ぐらいのボリュームは逆に隙間が空いて、ハミ乳が見えてしまうのだ。おそらく、本人は気づいていないだろう。
「何よ、大介、大人だからって、エロい目で見ていいわけないわよ」
(まったく、意気地がないんだから…)
美鳴は、とても小さな声でそうつぶやいたが、俺には聞き取れなかった。俺はエロい目と言われて、ちょっと目を美鳴から離した。でも、やっぱり、脇や胸元から見えるモノが気になってしまう。
俺の目が自分の胸に注がれているのには気づかず、美鳴は無視して真田雪之ちゃんにメールを送っている。同じ1年生だから、細川ルシアの情報を知っていないか問い合わせをしたのだった。
先輩、細川ルシア珠希さんのこと
本当に知らないアルか?
彼女のお兄さん
先輩に告白した人アルよ
雪之ちゃんからの返事だ。
「はあ?」
美鳴の奴、振ったことすら忘れてしまったらしい。いや、コイツのことだ。名前すら記憶することをしていない。
確か
細川ジョルジュ忠人って名前アル
みんな薔薇の王子様って言ってたアル。
ちなみに、ルシア、超がつくブラコンアルよ
「ああ!思い出した!あの駅で出たバラ持ってた寒い男!」
どうやら、美鳴の奴。思い出したようだ。
俺は何だか話が見えてきた。たぶん、そのジョルジュってバラ男をひどい振り方をしたので、ブラコンの妹が怒って敵になったということだろう。そういう発想をすれば、残りの二人も美鳴に恨みがあってのことだろうと推測された。
(なら、美鳴と和解させれば…こちらの側に寝返る可能性もあるな)
俺は頭の中でそう思ったが、美鳴を見ているとそれは非常に難しいことだろうなと感じた。何しろ、コイツは無自覚で相手に恨みを売りつけているのだ。
「美鳴、そのジョルジュって奴にちょっとだけ、思わせぶりなこと言って喜ばせてやれば、その兄貴がこちら側について、妹もこちら陣営に入るんじゃないか?」
「何、馬鹿言ってるのよ」
「バカって、お前、俺を左近ちゃんに仕立てて、長谷家部の奴、たらしこんでるじゃないか!それと同じだよ」
「たらしこむって、そんな不義理なことわたしはできないわ」
「いやいや、自分はできないとか言って、人にはやらせる方はどうなんだ?」
「それは不義理じゃなわ。それに、そのバラ王子とわたしが付き合うなんて、あなたが言うことないんじゃない…バカ」
それに…から、小さな声でよく聞き取れない。バカだけはよく分かった。
おお、少しは歴史的事実と絡んできそうか?細川ガラシャ夫人の悲劇と絡んでくるストーリー。伏線はると回収が・・・。