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アイドルも子役もみんなわたしの下僕だからね!(五)

着々と手を打つ東宮院是清。せっかく集まってきた西軍も切り崩されつつあります。大丈夫か?美鳴ちゃん!

「ああ、そうさ。小西雪見さんは、島大介と石田美鳴にたぶらかされているのさ。君が彼女を目覚めさせてやらないと、彼女は手痛い心の傷を負う」


 魅兎蘭は、2日前に東宮院の使いと称する探偵に声をかけられ、島大介と石田美鳴の親密にしか見えない写真を見せられた。島大介は石田美鳴と恋人関係にあること、それなのに、彼は小西雪見にも手を出していると言われたのだ。


「あの男!やっぱり、最低のクズ男だったのか!」


 魅兎蘭自身、大介のことを(ちょっといいかも…)なんて思い、雪見の姉御が彼に夢中なら応援してあげようなどと思った分、裏切られた思いがした。しかも、それを彼女の石田美鳴は知っていて、ワザと雪見に夢を見させた後、手ひどく振らせ、それを嘲笑おうとしているのだと本日、東宮院是清から聞かされて、感情は怒りに変わっていた。


「私は姉さんに直接言って、説得してみる。あの男はダメだって!」


「まあ、待ちなさい。惚れちゃっている彼女には、何言っても無駄なことぐらい、君は承知でしょう」


そう是清は言った。これは小西雪見が、一目ぼれした島大介のために、レディースのリーダーを辞めて猛勉強した挙句、奇跡の合格を勝ち取ったことを知っての言葉。


「そりゃ、そうだけど…」

「島大介と石田美鳴のバカップルに正義の鉄槌を下し、君たちのリーダーを目覚めさせるのは現リーダーの君の役目だろう」


「わたしに何ができるっていうのだ!」

「なに、簡単さ。君自身が、このゲームに参加することと、君の場合、レディースの仲間を引き込むこと」


「仲間に?」

「そうさ。それで今日から、君と同盟関係にある黒田さんに、ルシアさんに、帆稀さんだ」


そう是清が紹介する。だが、ルシアはぶつぶつ独り言を続けてるだけだし、帆希はゲームの残党刈りに夢中である。黒田と紹介された少女が、やむなく手を差し出した。


「黒田メイサです。よろしく」


顔は笑ってない。


(ふん。公立の商業高校を見下した目だね、これは!)


 魅兎蘭も笑顔なく、差し出した手を握り返した。大事な姉御の目を覚まさせるとは言え、こんな理由の分からないゲームをいけ好かない金持ちお嬢様たちとやることになるとは。


 こうして、藤堂魅兎蘭は東軍に参加することになるが、是清の指示通り、魅兎蘭は配下のメンバーに声をかけ、六人が東軍に参加、そして六人を西軍に参加させることになる。


(つまり、参加した6人は頃合を見て西軍を裏切るということか…)


アギトは是清の用意周到な作戦に舌を巻く。西軍参加の6人は、あくまでも小西雪見のことが心配で参加という体裁を取っている。実際に傍に居て雪見の護衛を務める任務もあり、6人ともその任務には真剣であった。魅兎蘭自身は、東軍最前線で戦い、雪見にひどいことをした(する予定の)石田美鳴を滅ぼすつもりであった。


 ただ、現実にはレベル上げ不足で、魅兎蘭とレディースメンバーの部隊は数合わせに過ぎない。ゲーム上の戦場ではそれほど効果を表すわけではない。裏切る6人もそうなので、裏切るタイミングは難しかった。


 

 東軍参加の女子メンバーを家に帰し(帆希だけは密かに残していたが)、是清とアギトが部屋に残った。


「是清様。西軍もほぼ陣容を揃えましたが、是清様の東軍も陣容が揃ったようですね」

「あのジイさんが変な条件を付けるから、苦労はしたがな」


 是清が言うのは、このゲームで決着を付けることを決めた際に、五代のじーさんが付けた是清に対するハンディだ。東軍のうち、関ヶ原の最前線で戦う豊臣恩顧の大名は、美鳴と同じ年代の若者から選抜することという条件だ。それ以外は、金にモノを言わせて東軍の味方にしている。奥州の伊達、九州の加藤清正、江戸を守る徳川譜代の家来に、自軍の半分を預ける徳川秀忠。特に徳川秀忠は、自分の腹心を当ててある。


 その豊臣恩顧の大名も、黒田メイサ、細川ルシア珠希、福島帆稀、藤堂魅兎蘭とレディースメンバー6人で主要メンバーは埋めることができている。後は直属軍3万余を自分が、徳川家康と本多忠勝、井伊直政の3人を同時に動かすことで操る。


「アギト、早川の小娘への工作は順調か?」

「はい、後はこの証拠の書類を彼女に渡せばよいだけです」


アギトは手に1枚の書類を持っている。


「ふふふ…それは最後の最後に渡すのだぞ」

「はい。是清様」


 アギトは手にした書類に目をやった。これを小早川秀秋を演じる早川秋帆が目にしたら、おそらく…。


アギトは頭を軽く振った。是清はアギトに退出を命じる。


(ヤレヤレ…今から帆稀とお楽しみですか)


あんな蓮っ葉な小娘を抱くとは、東宮院是清という男の格を落とすとアギトは思ったが、今は石田美鳴の危機をどう救うかで頭がいっぱいになっていた。最初は、西軍がボロ負けでは依頼主の東宮院もつまらないだろうと軽い気持ちで石田美鳴に助け舟を出してやったこともあったが、今は違った。


(あの娘を助けてやりたい…)


とアギトは思い始めていた。手にした書類をギュッと握りしめる。


(これを渡さなければよいのだ…)


早川秋帆ちゃんに渡す書類というのは、なんでしょうか?とても気になります。

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