アイドルも子役もみんなわたしの下僕だからね!(弐)
西軍に加わった織田麻里さん。アイドルらしからぬ、結構な自信家のようです。今はこれくらいじゃないと生きていけないか?関ヶ原でどんな活躍をしてくれるのでしょうか。
俺の携帯が鳴る。美鳴からだ。
「大介、今、ゲーム画面見てる?」
「いや、見てないが、ネット上で話題だ」
「現役アイドルが参戦よ。これは話題になるわ」
「彼女がどれくらいの戦力になるかは、未定だが、レベルは高そうだな」
俺が確認すると、織田麻里のレベルは35。アイドルの割にはやり込んでいる。親衛隊の家来や同じ美濃の小大名でエントリーしてきたファンもレベルが結構ある。(レベル30~40台)小大名にしておくのはもったいない連中だ。すべて、織田麻里のアイドル効果。織田万里は、メンバーの中でも高貴なイメージで売っており、その言動からファンからおひい様と呼ばれている。これが13万石、兵6500あまりで岐阜城にあるとなると、東軍も結構侮れない。
俺は「戦国ばとる2」にアクセスし、ゲーム画面を開いた。石田美鳴のコミュニティにエントリーすると、すでに美鳴、舞さん、雪之ちゃん、愛ちゃんら歴研メンバーに瑠璃千代、雪見ちゃんに栄子さんまでいる。栄子さんも正式にエントリーしたようだ。
「織田麻里さんが、軍議に参加したいそうよ」
ゲーム上の美鳴が言う。ホスト役の美鳴のパソコンにそれを知らせる合図があったようだ。
画面上に蝶の柄の美しい着物姿の武将が現れた。女の子武将だから、これがセクシーな中にもカッコイイ衣装である。顔もスタイルもはテレビで見るまんまで、これは織田麻里専用コスチュームであることは明白であった。
「ふふふ。今日からよろしくう!みんなのアイドル、織田麻里です!今日から西軍に入ります!」
「よろしく、織田さん」
美鳴がそう握手を求める。織田麻里は公称18歳だから、美鳴と同じ年であるが、目上に見ているのであろう。
「美鳴ちゃんね。私が来たからには、もう大丈夫よ。私、負けたことないから!ほーっつほほ」
手の甲を口に当てて笑う麻里。後ろには織田直属の家臣、小造具正と百々綱家が控えている。織田万里は通常、織田信長で参戦しており、親衛隊の二人も柴田勝家と丹羽長秀として付き従っていたが、主君のキャラ替えで自分たちも代えたらしい。レベルは43と申し分ない。さらに、織田麻里の参戦で、同じく、美濃の小大名としてファンが参戦してくれた。これで、美濃の岐阜城、犬山城、竹ヶ鼻城、大垣城が手に入った。
(幸先はよいが、彼女の能力はどうであろうか?)
実際、彼女の武勇も親衛隊やファンのおかげだろうと思われた。
「あなたが、島左近ね。ネットで有名だから知ってるわ。女の子って噂もあるけど、どちらにしても美人ね。わたしの戦国ガールズに入団しなよ。口きいてあげる」
などと言って、ぱっちりとウインクする。俺はドギマギしてきた。
「左近!どこ見てるの!」
美鳴の奴が俺の耳を引っ張る。
「イタタタ…」
「アイドルなんて高嶺の花よ!バカね」
とプンプン怒っている美鳴。だが、確かに織田麻里は芸能人だけあって、一般人とは違うものがあるが、美鳴たち歴研メンバーもそれに劣るわけでない。実のところ、毎日、美少女を見ている俺にとっては、今をときめくアイドルがそれほど素晴らしいとは思えなかった。
「ふ~ん。あなた、どうやら女の子のようね」
そう織田麻里が俺の肩を叩いてそう断言した。
「あなたが男だったら、普通、私に声をかけられれば夢中になるはずよ」
(おいおい、どんだけ自信あるんだ、このアイドルは)
まあ、これだけ自信がないと第一線では活躍できないであろう。
この夜は小西雪見ちゃんの元手下の6人の女子も参加することになり、西軍の陣容がほぼ固まった。毛利挙兵効果と現役アイドル織田麻里の参戦のニュースが効果となった。そして、もう一人、生意気な奴が加わることになる。
生意気な奴・・・アイドルと子役なんて言ってますから、子役なんでしょうね。