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わたしと一緒に挙兵するの!しなきゃいけないの!(六)

毛利屋のパーティで値踏みされる美鳴ちゃんたち。彼らが西軍に着いてくれるかで勝負の行方が・・・といいつつ、ほぼ参加決定でしょう。

「石田さん、社長はこちらです。メンバーの方はご自由に料理や飲み物を楽しんでください」


 顧問弁護士の安国寺嬢は美鳴を社長の元へと連れて行く。俺は昨晩、美鳴にこの関ヶ原キャンペーンの戦略と現戦力のレクチャーを頭に叩き込んでやった。頭のよい美鳴のことだ、それに+αして西軍の勝算を語るはずだ。正直なところ、俺の計算では勝算40%ってところだ。できれば、決戦までに50%まで引き上げたいが、実際では100%負けが決まった状態での会戦であったから、現在の状況はよいと言えた。


(今日の会談で毛利家がどれだけの覚悟で参戦するか…にかかっている)


 史実では毛利家の消極的姿勢が敗因の1つとなった。おかげで毛利家は戦わずして120万石から大幅減封となるのだが。


「左近ちゃん、待っててね。僕が料理持ってきてあげるから…」


 長谷家部の奴、いつもの如くテンションが高い。何しろ、パーティであるから、俺は美鳴の用意したひらひらドレスを着させられている。背が高いから、まるでスーパーモデルみたいで周りから注目されている。こちらは男とバレないかヒヤヒヤしているのに、長谷家部は、自分の彼女を羨ましそうに見ている視線に優越感を感じているらしい。


俺は遠くで美鳴が主催者らしき人物と話している様子を見ながら、歴研メンバーを見る。瑠璃千代はそれは見事な和服姿で、周りから注目されていたし、舞さんも愛ちゃんも雪之ちゃんも可愛い格好である。これだけ選り取りみどりの美少女軍団を近くで見ているのに、俺に首ったけとは、どんなけ目が悪いのだ長谷家部くんは…。



「石田美鳴さんですね」

「はい。毛利元輝社長様、お目にかかれて光栄ですわ」


「わあ~パパ、やっぱり、美鳴ちゃん、可愛いねえ」


 社長の傍らにいる青年が美鳴の足先から頭のてっぺんまで見て、そう言った。社長の息子の毛利元人もうりもとひとだと、美鳴は承知していた。これは安国寺弁護士からの情報と、彼がネットゲームでは有名なゲーマーであることを島大介からも聞いていたからだ。


「戦国ばとる2」では勇猛でも、リアルで父親のことを「パパ」と呼ぶ男は、ちょっと遠慮したいというのが美鳴の本心であったが、そんなことは顔にも出さずに、美鳴は話を合わせる。社長の背後に眼光鋭い中年の男が美鳴のことを見ていた。


「こちらは、毛利元人さん。社長の息子さん。こちらは、毛利屋の専務、吉川よしかわさんよ」


 安国寺恵がそう紹介する。吉川専務は美鳴の姿を見て、少ししかめっ面をしたものの、右手を差し出して握手をした。しばらく談笑したあと、美鳴はゲームの展望を語りだした。俺の立案した戦略である。


「なるほど…それなら、勝てるかもしれないなあ」

「さすがだね、美鳴たん」


社長も息子も感心して美鳴の話を聞いている。美鳴は、この二人の凡庸さに少々、がっかりしたが、息子の方は戦術においては実績があったし、なにより、3万超の軍勢は魅力的であった。機嫌を損ねないように注意深く、説明をしていく。


「というわけで、壮大な戦略の元、この戦いは我、西軍の勝利に終わるはずです。そのためには、ご当家の参加が必要なのです」


「ふむ。承知している」

「ボクが、美鳴たんを勝たせてあげるよ」


(ハイハイ…。ボクはせいぜい、戦死しないように戦ってちょうだいね)


という本音はひた隠し、美鳴は満面の笑みを浮かべている。こいつ、こんな演技ができるなら、普段からやっておけよ…と俺は遠くで彼女の様子を見ながら思っていたが、さすがの傍若無人な美鳴も、ここは勝負時だと感じているのだろう。努めて大人の対応をしていた。


「美鳴さん。戦略は分かりました。確かに勝負は五分かもしれません。だが、東宮院は優秀な男です。あなたの陣営を密かに切り崩しているかもしれませんよ。それに対して、あなたはどういう手段をお持ちかな」


 吉川広志よしかわひろしは、そう美鳴にたずねた。実際でも西軍は裏切りにあって、敗北している。


「ありません」


美鳴は完結に答えた。


「ない?」

「はい。わたしは人を信じます。正義を信じます。正しいことに人は従うのだと思いますから」


「ほう。若いのに哲学的なことを言いますね」

(青いな…所詮は小娘か)


と吉川は思った。実際、東宮院の手先がこのパーティに忍び込んできて、毛利家の動向をうかがっているのは確実だし、現に自分は東宮院とコンタクトを取っている。吉川の関心は、この毛利屋の経営を守ること。ストンデングループがどうなろうが、目の前のお嬢さんがどうなろうが関知しなかった。


 安国寺恵あんこくじめぐみは、吉川の表情が思わしくないのを見て、もしかしたらよからぬことを企んでいるのでは?と感じた。一応、助手に吉川の動向を探らせてはいるが、もし、彼が会社を守るためと称して、敵方の東宮院と通じたなら…。


(そうなったら、毛利屋は確実に乗っ取られる。あの男はチャンスを見逃すはずがない)


そのぐらいのことは、吉川も分かるはずだと恵は思っていた。


吉川広志よしかわひろし専務、ゲームでは吉川広家きっかわひろいえを演じる予定です。あの南宮山で傍観した男です。彼も間違った判断で、毛利屋を窮地に陥れるか?

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