わたしと一緒に挙兵するの!しなきゃいけないの!(四)
大手スーパーマーケットチェーンの「毛利屋」東宮院の次のターゲットが自分たちだと知り、何とか生き残りをかけて思案中。積極策を取るのが安国寺弁護士。消極策は吉川専務。どうする社長にバカ息子。
毛利屋の本社ビルの社長室で、社長の毛利元輝と社の経営を実質的にしきる吉川広志専務が激論を交わしていた。社長は今年、42歳。先代から経営を引き継いで社長歴は2年しかなかった。会長であった先代は1年前に急死しており、この2代目ボンボン社長を陰で支えているのが、先代からの叩き上げで今の会社を先代とともに大きくしたのが吉川専務であった。年は元輝社長の1つ上の43歳であった。
「わたしは反対です。これ以上、東宮院ファンドにたてついても仕方ないでしょう。今は従順に接して生き残りにかけるべきです。奴だって、会社を乗っ取っても経営ができなければ、何の価値も見いだせないのです。経営権は残ると思います」
「だがねえ、吉川専務、現に我社の株を買い占めているということだし」
「東宮院と協議したわけでもありませんし、そもそもビジネスとゲームを混同させるなんて馬鹿げた話があるわけありません」
「だが、安国寺君の提案は、我々にとっては好都合だし、今、動かねば手遅れになる」
「社長、ここは慎重にです。仮にゲームで決着をつけるにせよ、東宮院は百戦錬磨のゲーマーでもあります。石田の小娘など負けるが必至」
「だが、我々は幸い、このゲームを趣味でやってレベルは高レベル。専務もゲーム上では無敵の吉川軍団を指揮する名将ではないか」
「そりゃそうですが…」
「石田美鳴ちゃんが勝つかどうかは、我々が加担するかどうかにかかっているのだから、勝ち負けを議論していても始まらないと思う。今は会社を守るために西軍の旗頭として挙兵したいと思う」
「それが社長の決定ですか?」
そう言われるとこの2世社長は自信がなくなる。小さな八百屋を今のような大企業にした父は他界し、自分は何不自由なく父の言われるままに大学に入り、会社で出世を重ねてきたが、正直、経営の「け」の字も分からない。自分の能力ではせいぜい係長程度であることを理解する程度の賢さはあった。
それで、会社の生え抜きのエリートである吉川専務の意見に従ってきたが、最近は顧問弁護士の安国寺嬢の意見も、新しい経営のやり方として採用するようになった。こちらも売上が伸びるなど実績をどんどん積み上げていた。
「まあ、明日のパーティで美鳴ちゃんたちと会うのだから、それで決めてもいいだろう。うちの息子も楽しみにしていることだし…」
元輝社長の息子、元人は、私立大学に通う2年生。アナスタシアの女子高生と会うと聞いてわざわざ地元に帰ってくるナンパな息子だが、自分と同じ趣味でネットゲーム「戦国ばとる2」ではなかなかの手腕を発揮している。この経営の危機も息子と専務、顧問弁護士の4人で乗り切れるとこの凡庸な社長は思っていた。
さて、この物語ではこの毛利父子、どんな役割を果たすやら・・・。