わたしの旗の下に集まらないといけないんだからね!(壱)
ネットでは味方が集まらない石田美鳴は、自分の知り合いに参加してもらうことにしました。それで一緒に彼女の学校へ・・・え?女子高に侵入?どうする主人公!
3日後の木曜日。俺は美鳴に呼び出されて、アナスタシア大学附属高等部の校門のところで待っていた。高等部は街のような広さ(東京ドーム100個分の広大な敷地)の大学キャンパス内にある。あまりに広すぎて、学内を回るバスが走っている。
高等部は、市内、県内の金持ちのお嬢様が通うところで有名で、幼稚舎から大学までの幼小中高大一貫校であった。男子禁制なので、校門から中へは入れない。仕方がないので、門にもたれかかって音楽を聴きながら待っていると、ぐいぐいと袖を引っ張られた。美鳴である。
「ま…待たせたわね…」
なんだか、顔が赤い。そういえば、リアルで会ったのはこの間の駅であった。しかもキスして別れていた。俺もファーストだったが、美鳴の奴もファーストキスだったようで、俺の顔を見て急にそのことを思い出したのであろう。
だが、初めて会って好きでもない男にキスするこの無防備さというか、世間知らずと言うか…美鳴の雰囲気からはそんな言葉しか浮かんでこない。これが茶髪のギャルだったら、アバズレか、ヤリ○ンとか、汚い言葉が浮かぶが、見た目はピュアな美鳴なのだ。
そのピュアな美鳴だったはずだが、言葉遣いは明らかに前会った時と違う。どちらかと言えば、完全にネット上の三成と同じだ。
「こ…これに着替えなさい!」
ネット上の命令口調で、美鳴は紙袋を差し出した。中を見ると、かつらに、ブラウス、パッド、ブラジャーにパンツ…そしてアナスタシア高等部の制服が…。
(おいおい、これを俺に着ろっていうのか?)
「ちょっと待て、美鳴、こんな女の格好なんてできないよ!」
「できる、できないじゃないの!やるの。あなた、私の左近でしょ」
「いや、それはゲーム上で、リアルは部下でも何でもない!」
「ひ…ひどい…。私の味方になってくれるって言ったのに…私にキスしたのに…」
「いや、あれはお前が勝手に…」
「わたし、初めてだったのに…責任取ってください!」
大きな声を出すから、守衛のおっさんがこちらを見る。何とかしないと、こっちへやってきそうだ。
「わ…分かったから、大声出すな…。着ればいいんだろう…」
俺はしぶしぶと言うか、この美少女の言うがままに木陰で着替える羽目になった。すね毛が目立つからと言って、美鳴の奴、剃刀で全部そりやがったし…屈辱的だ…。
15分後。長身美女がそこに立っていた。
「やっぱり、大介ってイケメンだけど、女顔してるから似合うと思ったわ。どう見てもアナスタシアの女学生よ」
女顔というのは俺のコンプレックスの一つだ。振られる理由に、
「大介ってよく見ると男らしくないんだよねえ」
と振る女がいたからである。だが、美鳴の奴は3日前に会った時のおしとやかなイメージはこれっぽちもない。
(これじゃあ、俺を振った女どもと同じじゃあ…)
そう思った時、美鳴が、
「でも、そういう大介も素敵」
と言って左腕に絡みついてきた。
「なあ、美鳴、お前、この間とキャラ違わないか?」
「へへん…ちょっと猫かぶってみました」
「ひ…ひでえ…。お前、やっぱり、ネットのキャラが本物か?」
「大介、今は左近ちゃんと呼ぶわ。前の私と今の私、どちらが好み?」
俺は美鳴の制服姿を見た。上から76、50、76…俺の能力カウンターが数値を出す。ちょっと貧パイだが、ウエストが細いだけにモデルっぽい体型に見える。
俺はというと、美鳴の奴が思いっきり、パッドを詰めたせいで86、64、76と結構グラマーなボディになってしまった。先ほどの守衛のおっさんも俺を疑いの目で見たが、にっこりほほ笑むと笑顔で応えてくれた。恐るべき、俺の女装…いや、美鳴の変身術か?
「おい、美鳴、お前、どうしてこんな恰好を俺に…」
「わたしでしょ、左近ちゃん。実はちょっと会ってもらいたい人たちがいるの。高等部の校舎内は男子禁制だから、この格好じゃないとまずいでしょ」
(それはそうだが、逆に…女装して女子高に潜入して捕まったら、明日の新聞で有名人にされてしまう。)
「もうすぐよ、私の部室まで」
うああああ!やっちまった!美鳴ちゃんの次に出た美少女が主人公なんて!?
キモと思われた方ごめんなさい。でも、これ伏線なんです。次回はいろいろな娘出しますんで・・・ご勘弁を。