わたしの水着姿で士気を高めなさい!(九)
今回、とりあえずのレベル上げの戦いには勝利しそうです。ちょっと、美鳴ちゃんのチートな技がゲームバランスを崩しそうですが、キャンペーンモードでは、特殊能力はある程度、制限されるというルール設定中です。
何故か俺の攻撃力が一時的にMAXに。
でも、そんなことは何の意味もなかった。
なぜって、相手の島津豊久、美鳴のパンツをチラ見して固まっていたから。
かける相手以外が見ると石化するらしい。
「戦国ばとる2」は奥が深いというか、真のSLGファンが見れば怒り出す、おふざけ要素である。だが、萌え要素大好きプレーヤー増加を狙った極レア要素である。
俺がそろりそろりと進み出て、なんなく槍で大将の島津豊久を討ち取るとほぼ勝利が確定する。敵の増援がちらほら現れたが、ここへ来て戦場に参加した長谷家部率いる長宗我部勢と愛ちゃんの上杉勢で殲滅するだけであった。
完勝
の文字が画面に浮かぶ。
「ちょっと、ハプニングもあったけど、結果オーライね。みんなよくやったわ!」
美鳴の奴、ご満悦である。
長谷家部の奴がアフターミーティングで俺に話しかけてくる。
(この野郎、お前が遅いから、俺は見たくもない…というか、見たかったというか、ラッキーな体験というか、アンラッキーというべきか、そんな光景が脳裏に焼き付いたじゃないか!)
「左近ちゃん、遅くなってごめんね。でも、敵はボクの軍勢が蹴散らしたから」
(はいはい・・・ほぼ勝利確定で出てきて残党を掃討しただけね)
ちなみに長谷家部の野郎が出てきたので、俺は美鳴がネットで密かに手に入れた激レアアイテム変化の杖で女の子武将に変身した。いくら男武将を使っている女の子と称してもキャンペーンの場合、ゲーム上で顔を付き合わせる。それが男だとさすがに不審がられるし、第一に、顔の輪郭は同じなのだから男だとバレないとも限らない。
「もう、守人さんが遅いから、危うく負けてしまうところでしたわ」
(ぞぞぞ…なんで俺がこんな女言葉を入力せねばならぬ!)
「ご、ごめん。先輩に見つかっちゃって。それで、あの、今度、左近ちゃんのグループと合コンどう?美鳴ちゃんも愛ちゃん、この石田グループのメンバーの女子、全員、可愛いからきっと人気だと思うよ」
(ちっ、誰がお前に紹介するかよ。美鳴はともかく、他のメンバーは全部、俺のもんじゃい!)
「えええ~。アナスタシアの先輩方は素敵な男の方ばかりだから、わたし、言い寄られたら困っちゃうかも~」
思いっきり、甘えた声で長谷家部の奴に言う。奴は俺に首ったけのようだから、先輩に俺が盗られるかも?と思わせておけば、合コンの話は消極的になるだろうと思ったのだ。
「だ、大丈夫だよ。左近ちゃんはボクの、か、彼女ってことで…」
(コイツ、マジで俺を彼女っていう既成事実を作ってやがる)
「わたし、それよりも長谷家部さんと会ってお話したいわ。でも、今はちょっと忙しいので、お互いに時間があった時にどう?」
「ま、マジですか?そういうことなら、ボクはいつでも暇なんで!」
「じゃあ、わたしから連絡するわ…。それより、このキャンペーン、長谷家部さんはわたしたちの陣営で参加してくださるのよね」
「も、もちろん。左近ちゃんのためなら、ボクはゲームのアカウントをリセットする覚悟です」
(この野郎、負けること前提でものを言ってやがる)
「リセットなんてダメよ。わたしたちを勝たせてね。あなたの腕を期待しているわ」
そう言って、俺もログアウトした。
「大介、ネカマが板に付いてきたじゃない!あの勘違いマヌ吉くんをちゃんとつなぎとめてね。レベル50オーバーで5000超の兵力は捨てがたいから」
美鳴の奴、長谷家部に関しては、キャンペーン最後まで騙す方針らしい。
「ゲーム始まれば、ともかく、一度や二度は会わなくちゃ、アイツも納得しないだろう。こういう姑息な手は、最終的に良くないと思うのだが」
「一度や二度くらい、会ってあげなさいよ。あなたも鬼畜ねえ…」
「鬼畜って、バレるだろ、普通」
「いつものように女装すれば問題ないでしょ。大介の女装姿に一目惚れするくらい間抜けな奴だもの。バレないわ」
(かああああっ。この女、やっぱり、分かってない)
会うってことは、奴に何かされる可能性もあるのだ。あいつは俺よりも体がでかいから、襲われて押し倒されたら一発で男ってバレルに違いない。それだけは勘弁してくれである。
主人公に襲いかかってひんむいた時の長谷家部くんの姿。たぶん、石化の呪いで永遠に固まるでしょうね。