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あなた、わたしの家来になりなさい!(五)

美少女の健気な頼みと甘いファーストキスで舞い上がったわけではないが、石田三成こと、石田美鳴に家老として、家来になった俺。だが、なってみたら、大変な状況に気がついて・・・(うおおおっ!やっぱり、後悔するのか?)

その日の夜。石田美鳴さんの石田三成に従いますか?

の問いに即答クリックした俺は、早速、美鳴と今後の作戦について協議しようと美鳴にコンタクトを取る。


「やっと使える部下を手に入れたわ。左近、今日から私のために尽くしなさい!」


(おいおい…実物と全然違うだろ…)


 今日会った、おしとやかなピュアな感じの美鳴とは、全然違うセリフだ。一応、ゲーム上仲間になったので、美鳴の陣営のコミュニティルームでキャラを操って話す。キャンペーンモードの場合、オプションである3D体感ゴーグルなるものを装着する。


これは目と耳に作用し、あたかもゲームの中に自分が入ったような気になる優れものである。シナリオモードのような短時間の時に使うことは稀だが、キャンペーンモードは違う。長い期間、共に戦うのだ。姿を見ないと感情移入が続かない。


バーチャルモードで美鳴の石田三成を見ると、これがまんまの美少女大名だ。このモードはカメラで本人を写し、そのデータでキャラを作成するから、通常、自分自身が衣装を着ている姿になる。自分自身はステータス画面でしか見えないのだが、相手は見える。今日会ったまんまの可愛い美鳴が、打掛姿のお姫様の格好をして座っている。


(この格好で石田三成かよ~)


と突っ込みを入れたがったが、衣装は本人の自由で何パターンからも選べるから、女の子がお姫様の格好を選ぶのは普通かもしれない。


「で、美鳴、現状はどうなっているか説明しろ」


俺はマイクでそう話しかける。


「美鳴だって?私は石田三成です。島左近、ゲームでは殿!と呼びなさい」


(おいおい…。契約したとたんに上から目線かよ…)


若干、後悔したが目の前に座る美鳴の姿が可愛くて、俺の心はとまどう。


「では、殿」


「あ、やっぱり、殿は変。姫の方がいいわ。姫って呼びなさい」


「はいはい」


確かにこんな可愛らしい姿のキャラに殿は違和感がある。これでは、鎧を着てもたぶん可愛いままだろう。


「で、姫、現状を教えてくれ」


「いいわよ。現状、私は豊臣グループの一員で、石高は近江水口で4万石。太閤秀吉様の秘書官って役割よ」


「まあ、史実通りだな。ゲーム上は、まだ初期レベルってことだ。シナリオモードで活躍して石高を増やさないと、関ヶ原で戦うどころじゃないぞ」


「えー、そんな暇ないよ~。左近が何とかしてよ。名軍師なんでしょ」


「おい、まさか、お前、キャンペーンモード知らないんじゃないのか?」


「知ってるわよ。失礼しちゃうわ」


「何を知ってるんだよ。だいたい、関ヶ原キャンペーンモードは、太閤秀吉が亡くなった直後から始まる。それにはお前が五奉行の筆頭で近江佐和山19万5千石の大名であることが最低条件だぞ」


「え?そうだったの?」


「そうだったのって…だいたい、4万石じゃ、動員兵力はせいぜい1500ってところだろうが…。それで東軍8万と戦おうとするお前の強気が信じられない」


「…」


「で、部下は俺の他にいるのか?」


フルフル…と首を横に振るお姫様姿の美鳴…


俺は激しく後悔した。なんで、このド素人の女の子の誘いに乗ってキャンペーンモードに参加してしまったのだろうか。このキャンペーンモードの恐ろしいルールは、ゲーム上で死ぬとキャラがロストしてしまうのだ。これまでの俺の積み上げてきた実績がすべてパーになる。


「だーっ。ありえねえ…そんな状態で戦うつもりなんて」


俺は頭を抱えたが、よく考えるとこのキャンペーンモード、相手が受けねば成り立たない。こんな状態の美鳴に戦いを申し込むなんて鬼畜以外考えられない。


「なあ、美鳴…相手の徳川家康、お前の知り合いか?」


「…そうよ」


「いくら2か月の猶予があるとはいえ、これは卑怯過ぎる。さっき、家康の基本状況を見たが、関東250万石の大大名で、動員能力は10万。五大老の筆頭で内大臣と要件を満たしている。相手はどんな奴だ?」


「とっても嫌な奴よ!」


それ以上、美鳴は言わない。ツンと上を向いて腕組みしたままだ。


「とりあえず、俺の他に部下を雇わなきゃいけない。俺が心当たりに声をかけてみる」


「そ…それはダメ!」


「なんで?」


「だって、左近の知り合いは、男の子でしょ。わたし…左近にはあげてもいいけど、他の人はイヤ…」


(おいおい、あの条件の対象を広げるなんて思っての発想か?)


ゲーム仲間に声をかけて、石田三成の家老、舞兵庫と蒲生郷家をやってもらうと思ったが、例え、新キャラで参加しても死んだら自分の経験値やら、稼いだ電子マネーが一瞬で飛んでしまう危ないゲームに参加する奴はいないだろう。いくら、美少女の美鳴に頼まれてもだ…。


(参加するバカはここにいたが…ああ…名軍師なんて恥ずかしい…)


俺は激しく後悔している。だが、このままでは負けは確実である。


とりあえず、打てる手はすべて打つしかない。


「美鳴、まず、お前の主君、豊臣秀吉に泣きついて、治部少輔の称号と5奉行、19万石の所領をもらえ。いくらか戦で活躍するのが条件なら、俺が加勢してやる」


「レベルが上がったら、頼んでみるわ…」


「それから、君の名で味方を募集する。西軍所属大名は、公募で集めるしかない。俺の名を連名で使ってよいから、すぐ掲示板に登録するんだ」


「はい」


「あと、君の友人にゲーム仲間に入ってもらえ。誰か君に協力してくれる友人はいないのか?」


「聞いてみるわ」


「まったく、世話の焼けるお姫様だ…」


「さっきから、聞いていれば何だか私に命令ばかり!左近、あなたは家来なんだから、もっと私を敬う言い方をしなさいよ。バカあ~」


とにかく、ここは美鳴に動いてもらうしかない。秀吉が亡くなった直後の史実と同じ条件を最低でも整えなければ、勝つ可能性は0%と言っていい。


(うお~俺はなんて女運に恵まれていないのだ…周りに集まる女は、全部、俺に迷惑かける奴ばかり…畜生)


そう思ったが、何やら書状をしたためだした美鳴を見ていると、その言動とは違う可愛さに思わず、にへら~と顔が崩れる俺。まったく、バカである。こんなんだから、女子にいいように扱われるのだ。


その夜、ネット上ではちょっとした話題で盛り上がった。


名軍師のご乱心?

美少女に目がくらんだ?

三成ちゃん。超萌え~

じゃあ、参加する?

ありえねえ~。

島氏の勇気にカンパーイ。

このキャンペーン、ずっと見たくね?

おう、観客だったら参加いいよなあ。

名軍師の島氏と三成ちゃん、戦場で○裸!

アヘアヘ

相手の家康、うらやましい…

今から内大臣に付くか?

それ賛成!

三成ちゃんを捕えて犯す~

ゲーム上でやっても意味ねえよ

じゃあ、リアルでヤラセテくれたら西軍に付く?

いや、1発じゃ、割に合わんでしょ…

じゃあ、3発?

3発でも無理~

一晩中でも無理~


もっと、書けば永遠にコメントが続く。


(しかも下品なコメントだ。美鳴が見たら、きっと激怒するに違いない)


東軍に付くという奴も結構いて、宣伝が逆効果になったかもしれないが、徳川方も下手な奴は味方にはしないだろう。特に豊臣恩顧の大名役は、立場が微妙で東軍も裏切りを恐れたぐらいだから、それなりの人物を指名してくるはずだ。


 ゲーム上のすべての数値、アイテムが初期化される恐怖は、このゲームをやり込んだ奴なら当たり前で、この美少女三成にあえてロストを覚悟で味方になった俺は、ネット上でも「バカじゃね?」「女の色香に血迷った」「童貞じゃね?」とか、バカにするコメントも多かったが、最後は「真の名軍師だ」「男の中の男」「姫を助ける騎士精神に万歳」などと好意的なコメントで埋め尽くされた。


だが、味方には誰も登録しない。島左近の名をもってしてもこれだ。そりゃそうだ。勝ち目は全くないと俺も思う。


観戦者登録数は通常の100倍という1万人達する盛り上がりだったが、この日どころか、美鳴に直接会う3日後でも、誰も名乗りを上げてこなかった。



戦国ばとる2の体感モードは超リアル設定です。なにしろ、触った感覚も再現できるんですから・・・こんなゲームがあったら、18◎ゲームは大フィーバーですね。

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