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う、浮気なんかしたら許さないんだから!(六)

今回は「浮気~」には関係なんですけど、関ヶ原で重要な役割をする重要な人物のお話です。

「こ、是清の奴、ぜ、絶対に許さないんだから!」

「お姉さん、これ以上は飲まない方が…」


「うっせい!オヤジ、もう一杯」


 浮竹栄子うきたけえいこは、日本酒の冷酒をグイっと煽った。もう一升は飲んでいる。自分がこんなに飲めるとは思えなかったが、最近、飲むとやけになって深酒するうちに酒量が増えたことは間違いない。ほんの2、3年前は初々しいOLであったのに、今はすえた臭いのするOLに成り果ててしまった。


 彼女は元IT企業のOLで、25歳。酒に酔っていなければ、かなり美人でウエーブがかかった髪に豊かな胸、スタイル抜群で近寄りがたい雰囲気があるくらいである。だが、こんな場末の飲み屋で酒を煽っているので、高貴なイメージは台無し。時折、下心丸出しのオヤジがお尻を触ってくるが、すぐさま、平手打ちして撃退する。


「ふい~っ、まったく、あいつは、あいつは破滅させてやるから!」


コトン…と水の入ったコップが置かれる。


「なに?」


と栄子が隣を見ると若い男が座っている。どこかで見たような顔だったが、栄子は思い出せない。酔っていなくても思い出せなかっただろうが。


「浮竹栄子さんですね」

「はい~、浮竹ですけど、何か?」


「折りいって話があります」

「はあ~、あなた、ナンパしてんの?」


 自分が酔いつぶれそうな時、大抵の男は声をかけてくる。一晩の慰みモノにしようと下心丸出しだが、酔っていても栄子はそんな誘いには乗らなかった。だが、隣の若い男は、そういう感じではなさそうだ。なぜなら、自分の顔を見ようとせず、タバコをふかしているだけだから。


「東宮院是清に復讐したいんでしょ」

「復讐?」


「そうしたければ、チャンスがありますよ。彼に経済的にも精神的にも大ダメージを与える方法が…」


栄子は、一気に酔いが冷めていくことが分かる。


「そ、そんな方法があるわけないわ」


あの男は強大だ。経済力も一介のOLなど太刀打ちできないほどの力がある。


「今日は酔っているから、詳しい話は無理でしょう。明日、いかがでしょう。詳しい話をしますが」

「ナンパにしては、奥手ね。明日なんかよりも、今晩、どこかで一緒にどう?」


「酔いつぶれた女はどうもね。オヤジさん、勘定。彼女の分も払うよ。タクシーを呼んでくれ」

「あいよ」


 若いのにテキパキしている男に栄子は、最初の頃の東宮院是清とよく似ていると感じた。あの男は、自分を利用するために近づいてきたのだ。用意周到に…。


浮竹栄子さん、イメージは小池栄子さんって感じ。名前も頂いちゃいました。

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